第8話 陥れられた逆四天王
壱達が話をしている最中に床でずっと腕立て伏せをしている男がいる。
体格は大きくはないが、体は引き締まっており、筋肉質である。
短髪で大人っぽい見た目をしている。
「じゃ次は彼を紹介するよ」
彼の名は竹井立、壱と同い年の19歳で、18歳の時に入所した。
彼は、中学生まで群馬で過ごす。彼は昔から体を動かすのが好きであり、幼少期から運動神経が良かった。
そんな彼は勉強も比較的出来、小学生の頃から文武両道に長けていた。
そんな彼の称号はただの人であった。
中学生の時、家族で山岳レースに参加し、野山を走っている時の爽快感に惹かれ立は山岳レースの選手になり、オリンピックの選手を目指した。
そして、中学3年間で山岳レース、学業共にそこそこの成績を残した立は更に上のステージに上がりたくなった。
その為、山岳レースで有名な高校に入学しようと北海道の高校に進学する事にした。
入学する事が出来た立は、早速山岳レース部に入り、活躍してオリンピック選手まで登り詰めようと思った。
しかし、群馬では敵なしだった立も強豪校の3年生はもちろんの事、同学年の1年生にすら敵わない者もいた。
しかし、練習を怠る事なく続ける毎日、誰よりも走り、誰よりも鍛えた。
少しずつ差は縮まってきた。
ある日、山道を走ってる時、隣には1年の同期が走っていた。
するとその同期が急に立ちくらみを起こしたかの様に立の方に寄りかかってきたのだ。
立も限界ギリギリで走っていたので、支える事が出来ず、立だけ山道の崖に落ちていったのだ。
一命はとり遂げたが、全治半年の怪我を負った。
後々聞くと同期はそのまま走り続けたという。
それを聞き、あれは最近力をつけてきた立を恐れて、わざと陥れたという事を知った。
怪我を負ったがそれでも諦めきれない立は、治して復帰しようと思った。
ある日、山岳レース部から選手の枠として除外されたのだ。層が厚い強豪校にとって力をつけてきた段階の半端な選手で更に負傷してるとなると他の選手に力を入れた方がいいと判断されたのだ。
立はひどく落ち込んだ。
そして、次第に学業にも力が入らなくなり、高校2年生の時に初の逆四天王の称号が与えられてしまう。
元々スポーツ推薦で入学した立は、山岳レース部の選手として活動出来ないとなれば、高校にいる事が出来なくなった。
学校側から系列の逆四天王が多くいる学校への編入案内が来たのだ。
スポーツ推薦で入学した人の中にこういったケースが結構いるのは聞いていたが、自分がなるとは思わなかったが受け入れるしかなかった。
編入してからも山岳レースを諦めきれなかったが、設備の整った環境での練習が出来なかったり、学業もおろそかにできなくなった事から練習時間も確保出来ず、怪我が治っても前の状態より上にいけなかった。
今の立には、少ない時間の中で効率のいい練習方法を考えるという事もできなかったから尚更である。
高校3年になり、逆四天王の状態は続いたままだった。
しかし、立は山岳レースを諦めきれなかった。
四天王になれば、また好きな山岳レースを出来る日が来ると思い入所したのだ。
だから、ずっと筋トレしてるのかと納得出来た。
「俺は、山岳レースでオリンピックに出る。」
そう、強く話す立であった。