第7話 努力を捨てた逆四天王
これから、過ごす事になる部屋に向かう壱と雅であった。部屋の前に行くと1人の男が立っていた。
「お、待っていたぞ!後もう1人新人いるんだけどとりあえず入ろ入ろ」
と部屋に入れようとしてくる男は、ここグループKの室長のようだ。つまり、世話係的な存在であり、ここで働いている人物という事になる。
勢いよく部屋に入れられる。
ここの部屋は共同スペースのダイニングと個人の六畳の部屋が付いている。
部屋に入るとすぐダイニングにつながっており、そこには、3人の男がいた。
「よし、彼らを順番に紹介しよう」
まず、最初に紹介されたのは、ソファーに座っている小柄で童顔な男性であった。
彼の名は蛯原周、20歳
周は、青森出身であるが、幼い頃に札幌引っ越して来ている。その為、青森訛りは残っていない。
周が入所したのは18歳の時である。
元々ただの人の称号で中学生まで過ごす。
平凡な生活の日々であり、これといって才はなかったが、勉強は人より出来たという事もあり、ただの人でありながら四天王が6割程度通う高校にも入学出来た。
成績も上位を目指し、可愛い彼女も作り人生勝ち組のレールに乗れると思っていた。
しかし、そんなに甘くはなかった。
可愛い子は四天王の読者モデルやタレントの卵と付き合い、成績の上位者は学歴だけで高校の推薦入学が決まった様な猛者ばっかりで中学時代は上位にいた周もここでは、30位より上には行けなかった。
それでも、自分のやってきた事は間違いではないと信じて勉強もしたし、恋愛についても学んだ。
しかし、高校2年生になっても全く変わらない現状で成績の順位は上がっても1つか2つで遊ぶ女の子も自分が本当に一緒にいたい子とは遊ぶ事が出来なかった。
そんな時、努力する事が面倒臭くなっている周がそこにいた。
努力しても変わらないと思ってしまった。
それからは、自分が口説ける女の子だけを口説き、勉強も授業の時以外はしなくなった。
そんな生活を繰り返し、高校3年生になった時、成績の順位はというと10位程度下がったくらいだが、勉強を教えてほしいという友達もいたし、女の子と遊ぶのもそれなりに出来た。
努力してた時とそんなに変わりないと思った。
だからこそ楽な方へとどんどん逃げた。
そのうちなんでも面倒臭くなり、空き缶をゴミ箱に捨てる事や所定の場所に自転車を停める事すらも面倒臭くなっていたのだ。
そんな事がどんどんエスカレートしていき、 女の子と遊んで遅くなった時だ、家に帰るのも面倒臭くなり、公園で寝ていると、近くを通った警察官に補導された。
それをきっかけに逆四天王の称号が与えられてしまった。
その事はすぐ学校中に広まった。
なぜなら高校始まって以来の逆四天王の誕生だからである。
それからは、女の子も遊んでくれなくなり、勉強を教えてくれと頼んできた友達も頼んで来なくなった。
積み上げてきた事も逆四天王の称号1つで変わったのだ。
これは、積み上げてきた力ではなく、ただの人だけど少し優れていたという事だけでしかなかった。
そんな薄っぺらいものは逆四天王になった瞬間に途切れてしまうのは当然である。
遂には学校にも行かなくなってしまい、出席日数が足りず、高校を辞める事になった。
留年というシステム自体が国から排除されていたからだ。
高校を辞め、今後どうするか考えていた時だテレビでやっていた逆四天王更生施設のニュースを見て入所したとの事だ。
「壱、雅よろしく。お互い逆四天王から抜けだそう」
周は壱と雅に挨拶した。
そして、四天王になって楽しく過ごせる学校を作りたいと夢を話してくれた。
そして、2人は周と固い握手をした。