第6話 終わりは始まり
1年後〜
出発の時だ。
19歳になった。
申し込むのが遅くなってしまい、次の年の募集として参加する事になったのだ。
19年間過ごした田舎に別れを告げた。特にこれといっていい事はなかったが。
思い出は一応ある。
見返したい人が出来た。
絶対に四天王になってみせる。
そんな思いで電車に揺られながら向かった。
着いた。
「ここが、逆四天王更生施設、北海道校か。」
北海道校は札幌にあるのだが、南区にあり、都心部からは少し離れている。
中に入り、係の者に案内され、講堂の様な場所に着いた。
「意外と人がいるな〜とりあえず空いてる席に座わるか。」
座って待っていると
「隣いいですか?」
マッシュベースの茶髪で細身の男性が話しかけてきた。
彼の名は衛藤雅、同い年の19歳で札幌出身である。
話を聞くと雅は、札幌の逆四天王集落と呼ばれる生まれながらの逆四天王の一族達が住む住宅街に住んでいたとの事だ。
その住宅の出身の者は産まれながら逆四天王であり、同じ住宅街の者同士結婚する事が当たり前になっており、逆四天王の連鎖が途絶える事がないのだ。
しかし、雅には夢があった。
それは、自身から世間に情報発信を出来るほど有名になりたいというものであった。
現代はネット社会になりつつあり、雅は情報発信の方法の1つとして、SNSなどのサービスや新たなネット事業なのではないかと中学生にして考えていた。
そして、努力をした。
学校の授業はもちろんだが、ネットビジネスの事やパソコンなどにも強くなった。
そして、高校でも逆四天王から脱する程の成績は残せなかったが、高校卒業後、下の中のIT企業の会社に入社する事が決まった。
逆四天王の称号が与えられているので、大手の会社には就職出来ないのだが、それでも逆四天王から就職出来た事は、逆四天王集落始まって以来の快挙であった。
そして、社会人生活が始まったのだが、順風満帆とはいかなかった。
まずは、実績を積みたいと思い、最初はなんでもこなそうと必死になっていた。
しかし、半年経てどと掃除やお茶汲、買い出しなどの雑用ばかりで、ITとは無縁の仕事内容であった。
しかし、それでも努力して掴み取った就職である。最初はみんなそうなんだと思っていたが、同期入社した四天王は違った。
3ヶ月もしたら、重要な仕事を任されたりと可愛がられていた。
その同期の親は中小企業の社長である事も知り、大事にされていたようだ。
ある日、地下倉庫で物品の整理をしていた時だ。
四天王上司が話をしているのが聞こえた。
「今年は逆四天王の雑用1人しか入社してないから俺らまで雑用めいた事しなくちゃいけないのかよ。」
耳を疑った。
その後も聞いてると要するに逆四天王で入社試験を受けた者は、ほぼ採用し雑用として扱っていたようだ。
その時、雅は唖然としたが、不思議と絶望はしなかった。
長年、逆四天王という称号の差を受け入れていたからである。
それに、四天王な人はお洒落で教養もあり、こういう人が社会に影響を与えるのだと思ったからだ。
そんな時だ、家に帰ってる途中に逆四天王更生施設のチラシを道端で拾った。
雅は直感的にこれだと思った。
一か八か試してみようと思いここに来たようだ。
生まれつき逆四天王なのは、壱と同じで共感出来る部分が多かった。
そんな話をしているとアナウンスが流れる。
「今年度、入所の諸君。これから様々な事に挑戦して是非、逆四天王から脱却してほしい。ここ逆四天王更生施設は全国に32箇所あり、毎年逆四天王から脱却した人の多い順からランキング付けされる。ここ零札幌は3年連続の32位だ。つまり、更生施設としても、ぶっちぎりと逆四天王だ。だから一緒に逆四天王を脱却しよう。」
ここ零札幌の支配人からのアナウンスで女性の支配人であった。
そして、資料が配られた。
資料には、入室する部屋が記載されていた。
零札幌では、数名から数十名のグループに分かれて同じ部屋で共同に生活をする事になっている。
壱の部屋はグループKであった。
そして、雅もKであった。
そして、今日より普通の生活が終わり逆四天王から脱却する為の新たな生活が始まる。
2人はグループKの部屋に向かうのであった。
画像、猫神壱