第5話 再燃
高校生活も残り僅かになった。
逆四天王のシステムのせいで見た目はどこにでもいる青年なのに、彼女も出来ず、楽しい思い出もなく過ごした高校3年間であった。
周りのただの人のクラスメイト達は進路が決まり、大学やら就職やらの話をしている。
ただの人達は四天王になれなくともそれなりの結果で満足しているようだ。
「いいよな〜四天王の家族で生まれた人は」
「俺なんて最初から駄目だからな」
「この社会のシステムが悪いんだ」
壱はこの世間が悪いと思い始めていた。
残り2割の逆四天王の人達はというと、実家の小さな商店で働く者やバイト生活をしていこうと決めているものなどであった。
壱は、何も決めていなかった。
もう、高校生活も終わるというのに、、
そんな時だ、1人の男が壱の隣に寄ってきた。
「猫神君はどないするか決めた?」
こいつは、関西出身の糸山圭ではないか。
コミュニュケーション能力も高く、クラスの女子からは比較的人気が高い方であった。
しかし、ただの人の称号の糸山がなぜ逆四天王の俺なんかに?と思った。
「まだ、何も決めてないよ。俺、どうせ逆四天王な人生を歩むんだし、糸山は?」
さぞかし、人気者の進路はいいところに違いない。
「俺か?なんも決まってへんで」
まさかの返答であった。なぜ、決まってないか詳しく聞いた。
すると、ただの人だとつまらない人生になりそうなので、四天王になりたいようだ。
だったら尚更、進路をしっかり決めて、コツコツ社会で実績を積んだ方がいいのではないかと思って聞いてみると。
「そんなん面倒でやってられへんし、おもろくもない。だから俺は、逆四天王更生施設に入ろうと思ってんねん。猫神君も進路決まってないならどうや?ほれ」
と言い、更生施設のパンフレットを渡された。
壱は、とりあえず受け取ったが、壱は何もかもが嫌になっており、受け取るだけで、何も考えていなかった。
そして、1ヶ月が経ち、卒業まで後3日となった日の朝、ホームルームの時間に、普段は点呼をしてすぐ職員室に帰る担任が話をし始めた。
「え〜当学校始まって以来の快挙が起きました。糸山君がこの度、来年度付けで四天王になることが決定しました。」
教室がどよめく、騒然とした。
この学校には、四天王の称号の者は入学してこないからだ。
ホームルームが、終わると周りのクラスメイトが質問責めをする。
すると、親と一緒に買った宝くじが当選し、3億円を手に入れたとの事だ。
そして、国に5000万円を寄付して四天王の称号が得られたようだ。
そして、国が直接運営する会社に入社できる事にもなっているそうだ。
国に寄付金を提出する事によって、四天王になれ、就職もする事が出来るので、バイトを詰め込んでお金を貯めて四天王を目指す人も少なくない。
しかし、壱にとってはどうでもいい事である。
授業が終わり、いつものように駅まで歩いていると偶然、糸山に会った。
一応、逆四天王更生施設の件を聞いてみる事にした。
「糸山君は逆四天王更生施設どうするの?」
すると、、
「逆四天王更生施設?誰がそんなとこ行くんや?笑わせないでくれ、俺は四天王になったんや!これから順風満帆な日々が待ってるんや!逆四天王が移るからあっちいっとれ」
人をあざ笑うかのように言い放ち、去って行く。
壱は、全く気にしない、、、
気にしない、、、
気にしない、、、
なんて出来なかった。
今まで何も考える事をしてこなかった壱の心の中で何かが沸騰し爆発した。
「決めた。逆四天王更生施設に行って、あいつを見返してやろう。」