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零話(れいわ) 〜やり直しが効くこの世界に  作者: トゥルーY
零札幌〜施設入所、奮闘編
18/53

第17話 山菜採りは危険がいっぱい

 枝を一本一本切っていくか、いやそれだと時間がかかり過ぎる。

 ナイフとかであればなんとかなるのだが、石で全ての枝を切るのは大変だし、全ての枝を引っこ抜いたり、焼き払うとかなんて現実的ではない。


 しかし、驚いたものだ。昨日はあれほど暴れていたヒグマが今は大人しくしており襲ってくる様子なんてない。


 ヒグマは感じていた。

 壱達が子グマを助けようとしてくれている事を。


 その時、雅が閃いた。


 一箇所の通り道を作って子グマの通れるスペースを作ってあげようと、それなら現実的である。


 壱達は近くにあった太めの木の枝を数本掻き集め、持ち合わせているTシャツやタオルなどの生地を使って枝と枝を結び梯子の様な形を作りあげた。



 そして、1番草木が少なそうな場所を選び、そこに枝で作った梯子を敷く。

 そうする事によって草木を折れ曲がらせる事が出来る。

 しかし、これだけでは、梯子の隙間から木の枝や棘が出ているので怪我をしてしまうので3人のリュックを棘などが出ている場所が多い部分に置いて道を作った。


 その道を子グマは理解したかの様にこちらに渡ってくる。


 一時間程かけてヒグマは子グマと再会出来た。


 ヒグマはこちらを見ている。


 きっと感謝しているのだろうと思った。勝手に。

 そしてヒグマは子グマを連れて山の奥へと戻っていく。


 ヒグマを見送るともう15時を回っていた。

 3人はかなり体力を消耗しているが、そんな状況でも大量の山菜を背負って下山しなければならない。


 そんな時だった。


「俺に半分持たせて」


 立は壱と雅の分の山菜を半分持つと言った。

 立のリュックが満杯になるのと同時に壱と雅のリュックは軽やかになった。


 ここにリュック持ちのヒーローが現れた。


 ヒーロー立は重いリュックを持ってるのにも関わらず大変そうな素振りを見せず、ただ淡々と真顔で歩いている。

 そんな立の姿を見て、負けてられないと思い、壱も重い足を前へ前へと踏み出す。


 重い荷物を持って下る山道は、意外と足に負担がかかる。

 昨日降った雨が染み込んだ地面は程よくサラサラに乾き、空から降り注ぐ光が地面や額から流れる汗も照らし、輝いて見える。

 時折吹くそよ風が背中を押して、頑張れと言ってくれる様だ。


 一心不乱に歩く、夜が近づいてくる。

 ヒグマを助けたことで遅くなってしまったので、その事を謝ると、2人はなんで謝るのか?

 と不思議そうな表情を浮かべていた。


 そう、ヒグマを助ける事に誰も反対しておらず、ましてやヒグマを助けた事で清々しい気持ちにもなっていた。

 ヒグマを助けたところで世間は評価してくれない。

 だが、この姿勢こそが逆四天王を抜け出すのに必要なのではないかと思うようになってきている。



 この施設に入る前はこんな事を思うなんて思いもしなかっただろうに。

 壱は、四天王になって見返すという事よりも大切な何かに気付きそうになっていた。


 本当の意味の四天王に、、、



 重い足を運びながら歩き、ガクガク震える足は遂に下山する事が出来た。


 後は20分かけて歩いて戻るだけである。



 タクシーや自転車が通る時は羨ましさが爆発しそうになったが、見ないふり、見ないふり。


 大好きな柿の種の話をする事で気を紛らわすが、雅は不思議そうな顔でこちらを見る。

 立は歩くのに必死で聞いていない。


 2人とも疲れているのだと思った。

 ただ歩いてるのも暇なのですれ違う歩行者の服の色を見る事にした。


 思った。




 紫が流行っている!!!!!




 そんな事をしているとやっと零札幌に着いた。



 正面玄関に入り、廊下を歩いてグループKまで行こうとした時であった。


 見覚えのある顔が3人いた。



 山菜採りで出会った、前山田進、福地博之、古巣力男の3人であった。


 彼らも実は逆四天王更生施設に入所していたようでグループMらしい。


 問題児のMと呼ばれているらしく、荒くれ者が多く在籍しているようだ。



 あんなに偉そうにしてても逆四天王なのかと思ったが、あんな感じだからこそ逆四天王なんだとも思った。


 力男達はボロボロな壱の姿を見て笑っている。

 しかしも帰りが遅い事を馬鹿にしてくる始末。

 3人が乱雑に山菜採りをしたおかげでヒグマが大変な目にあった事を伝えたが、またもや嘘つき呼ばわれしてしまう。


 散々馬鹿にした挙句、食事の時間だからとあざ笑いながら彼らはグループMに戻っていく。


 こんな3人と同じ立場にいるのかと思ったと同時に絶対に負けられないと思った。


 ボロボロになったけどこれは、努力した証であるのには違いなかった。



 グループKに入ると、みんな心配そうに駆け寄ってくる事もなく、グータラしている。


 しかし、康平は違った。



 一目散に壱に近寄り、携帯ウォシュレットを返して欲しかったようだ。

 しかし、携帯ウォシュレットはヒグマとの壮絶な攻防により壊れてしまっていた。


 康平はうなだれる。

 康平の周りには不運なオーラが溢れている。


 重いリュックを肩から降ろすと了だけが心配してくれている。


 了はその大量の山菜に驚いている。


 壱達が山菜採りに行っている間、了はレストランの厨房のバイトを頼まれて居たようで、その他のメンバーは街のゴミ拾いをしてたそうだ。


 了はレストランで更に料理の腕を磨いていたようで、山菜をキッチンまで運ぶと料理に取り掛かる。


 今週は立の料理担当であったが、疲れているからと了が変わりにやるとの事だ。


 まずは、ワラビを手に取ると″アク抜き〟を始める。

 ワラビにには発がん性のあるプタキロサイドやビタミンB1を破壊するアノイリナーゼという酵素が含まれているので十分にアク抜きをしないといけない。

 ビタミンB1が欠乏して起きる病気もあるので注意が必要だ。


 十分にアク抜きして天ぷらを揚げた。



 次にタラの芽を調理し始める。


 タラの芽はヤマウルシと似ており、ヤマウルシは有害であるので危険である。


 タラの芽をしっかりと炒めてタラの芽の炒め物を作った。


 次にふきのとうを調理し始める。

 ふきのとうは実は根の部分にペタシテニンという毒があるのだ。

 肝毒性があるのでしっかりとアク抜きをしないと肝臓の病気を引き起こす可能性があるのだ。


 また、雄花の花粉でアレルギー反応を示す人もいるのでアレルギーが不安なら雄花は採取しない方がいいとの事だ。


 しっかりとアク抜きして味噌汁を作った。



 最後にヤマウドを調理し始める。

 ウドはアクがあるが、採れたての色の薄いウドは皮を剥いで生でも食べれるそうだ。


 ウドは成長して大きくなると食用にならないそうで、そこからウドの大木という言葉が出来たそうだ。

 そして、酢味噌和えを作った。


 山菜は毒性のあるものと間違えやすい事もあるので正しい知識を身につけないと危険である。


 そして、了は以前よりも料理の手際や知識が増していた。

 了は和食レストランでバイトしたようで、山菜の知識も豊富になっていたのだ。


 全員で山菜を囲み、夕食を食べる。

 壱は久し振りに食べる食事で数分でたいらげた。


 康平も落ち込んでいたが、山菜を食べると機嫌を取り戻した。


 こうして、3人の長い山菜採りは終えたのであった。




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