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零話(れいわ) 〜やり直しが効くこの世界に  作者: トゥルーY
零札幌〜施設入所、奮闘編
17/53

第16話 山菜採り開始!?

 ホッと一息をつき胸をなでおろす。

 ヒグマに勝ったのであった。


 なぜ携帯ウォシュレットが入っていたのかわからなかったが、役にたった。


 その頃、康平は、、、


「ない、ない、ない、携帯ウォシュレットがない!壱に持たせたリュック俺のリュックだったのか」

 康平は潔癖でウォシュレットがないと駄目なようで自分のリュックに常に携帯ウォシュレットを入れていたのだ。

 そして、デパートのトイレで嘆いていた。

 リュックの中にはサバイバルナイフや懐中電灯などが入っていた。

 壱に渡すリュックと自分のリュックを間違ったのであった。



 そうとは知らずに壱達は山菜採りに来て、ヒグマと対峙していた。

 なぜ立があんなにもヒグマの情報に詳しかったというと山岳レースの練習で登山もしていたのでその時に学んだ知識であった。


 その知識に救われたところが大きかった。

 3人の体は疲れ果て、立っているのがやっとであった。

 すぐにでも休みたい気持ちはあったが、いつヒグマが戻ってくるかわからないので、すぐにでも崖の上に行きたかった。


 崖伝いに登れそうな場所を探して歩いた。

 すると3メートル程度の登れそう場所を発見した。

 立が1番下になり、体重の軽い雅を1番上にして立、壱で土台を作り、雅が崖の上に登る。

 崖の上から雅がタオルとTシャツで作ったロープを木の幹に巻きつけて崖下に垂らすと2人はそれを伝って登る事に成功した。


 気づけば、夕暮れ時になっている。

 今日中に帰るのは厳しそうだ。電波もないので連絡も出来ないだろう。


 夜、山道を歩くのは危険なので今夜はここで一夜過ごすしかない様だ。


 ビバークする事にして場所を探した。

 ビバークとは、山中で緊急時に野宿する事だ。


 こういう時にも立の知識が役にたった。

 ビバークするのに最適の場所を探す。

 危険な場所としては、山頂などは風が強く危険、川の近くは増水の恐れがあり危険ら崖地は落石の恐れがあり危険、草原は遮るものがないので危険、湿地は湿っているので体温が奪われやすいので危険である。

 基本的には雨風がしのげる安全な場所が狙い目で、3人は探していると木が生い茂っている場所を発見した。


 どうして草木が生い茂っている場所かというとツェルトと呼ばれる簡易テントを張るからである。

 登山家などは、大体ナイロン製の布を持ち歩いて、いざという時に簡易テントを張るのだが、そんな物は持ち合わせていない。


 そこで雅はタオルとTシャツを使って一枚の生地にする事を提案し、Tシャツを石で切り、一枚の布にすると軽食用に持ってきたおにぎりの米粒を使い、ノリがわりにしてタオルとTシャツを繋ぎ合せて一枚の大きな布にしたのだ。

 それを木々にかけて大きなテントにし、雨風を少しでもしのげるようにしたのだ。


 残ってる軽食や水分を少しずつ摂りながら早めに寝て体力を温存した。





 朝を迎える。



 朝日が眩しく照らす。

 耳を澄ませると鳥のさえずりや川の流れの音がして、草木が風になびいて揺れる。

 壱は田舎の事を思い出していた。



 静かな朝を迎え、3人は歩き出す。

 まだ、肝心な山菜を採っていないのだが、まずは山菜を採る正規のルートに戻りたい。



 西の方から来ていたので西が分かればすぐにでも戻れそうなのだが、あいにく方位磁針は現在ほとんど使われなくなった。

 携帯電話などの機器がその役割を担ってくれるからだ。

 しかし、ここでは電波がない。

 そんな時だ、雅が原始的な方角の導き方を知っていた。

 雅は水筒を地面に立ててその水筒の影を見る。

 午前中であれば、影の向いてる方が西北西になるので、その方向に進んでいけばいいのだ。

 雅もかなりの物知りである。


 数分歩くと昨日歩いていた山菜採りのコースに出る事が出来た。


 ここからが本番のようなものである。

 何故なら山菜採りをしに来たからだ。


 山菜が多く育っている奥地の方まで行くと、もうすでに山菜を採ってる人がいた。



 今時の大学生風の3人組だ。

 小柄な男、前山田進(まえやまだすすむ)、19歳


 背丈が高く、前髪が目を隠している塩顔男子、福地博之(ふくちひろゆき)、20歳


 細身で猫系の顔立ちをしている男子、古巣力男(ふるすりきお)、22歳



 この3人の中では力男がリーダーの様でまとめ上げている。


「なんだ?君達も山菜採りに来たのかい?」


 そう言うと壱達のボロボロの姿を見てニヤニヤと笑い始める。

 ヒグマと戦った事を伝えるが、信じてもらえずに

 嘘つき呼ばわれされるが、そこは大人の対応で必死にこらえる。


 力男達のリュックには山菜が大量に入っており、もう帰るところの様だ。

 辺りを見渡すとこの辺に山菜はもう無く、力男達が採ったようだが、乱雑で周囲の草木がなぎ倒されている。

 博之がなぎ倒した様だ。


 博之からは獣の様なオーラが流れている。


 こんな雑な採り方をしては、山菜が生えにくくなってしまう。

 今がよければ全ていいと言うことか、、



 しかし、まだ昼にもなっておらず、短時間でこの場所まで辿り着いて山菜も採り終えているので何度もここに来ている山菜採りのベテランなのだと直感でわかった。


「さぁそろそろ帰りましょう。前に前に前進しましょう。」


 進は早く帰りたがっている。

 まるで壱達の事なんて気にしてないかの様だ。


 そう言うと力男達はあざ笑いながら下山する。



 壱はすごく憤りを感じたが、堪えた。

 気を取直して山菜を採る事にし、更に奥へと進んでいく。



 壱は山菜採りの本を取り出し、何を採取するかある程度決める事にした。

 タラの芽を探す事になった。



 タラの芽は日当たりの良い場所に生える様だ。

 草木が低い場所を探していると数本真っ直ぐに伸びているものを発見した。



 タラの芽だ。


 タラの芽の枝は非常に刺々しく、素手で触ると怪我をしてしまう。

 その為、タオルの両端を掴み、タラの芽をくくり、手繰り寄せた。

 そうする事で怪我をせず、タラの芽の枝を傷つける事もなく採取出来る。

 ナイフなどの切るものがないが、Tシャツを切った時に使った石を使って採取した。



 同じく日のあたりのいい場所でワラビを採取出来ると本に書いてあった。



 くまなく探して見ると育ちのいいお嬢さんの様に礼儀正しくお辞儀している様なワラビを見つけた。


 ワラビはお辞儀をしたように頭を下げて生えているのが殆どだが、15センチ以上のものであれば、真っ直ぐ伸びている。

 この時が食べ頃であるようだ。

 ワラビは天ぷらやナムルにしても美味しく食べれる。


 その後も山ウドやフキノトウなどを大量に収穫する。


 まだまだ、収穫したい。3人は楽しくなっていた。

 少し脇道を逸れて探し出した。


 ここは少し木がなぎ倒されている。

 さっきのやつらがきっと倒したのだろうと思った。

 なぜならこの辺の山菜は殆ど収穫されていたのだからだ。


 山菜が無いならと壱達は引き返そうとした。


 その時だ。


 ガサガサ


 と物音が聞こえる。




 3人はその物音の方を凝視する。

 視力検査の時よりも集中している。

 ここは、山の視力検査会場かと思うほどに。


 すると草むらから掻き分けて来たのは、、



 ヒグマだ!



 さっきのヒグマだと壱は思った。

 どうしてかと言われても根拠はなかったが、ヒグマと一戦交わっているので直感でそうわかったのだ。


 しかし、ヒグマは襲ってくる様子はない。

 よく見ると身体中に切り傷が出来ている。


 昨日の時点ではそんな傷は出来ていなかったし、つけた覚えもない。


 壱は気になってヒグマの後を追ってみた。

 すると、、



 ヒグマの視線の先に子グマがいるではないか!


 子グマはなぎ倒された草木の隙間に挟まり身動きが取れなくなっている。



 親のヒグマは子グマを助けようとして、なぎ倒された草木から助け出そうとしたようだが、なぎ倒された草木は中心で折れて鋭利になっている。

 それにプラスしてタラの芽の枝もなぎ倒されているのであちらこちらに刺々しい枝が散らばっている。

 子グマはその草木の入り口を上手に入り込んだのはいいが、出るに出れなくなった様だ。


 そこから推測してヒグマの傷の理由がわかった。


 3人はどうするか悩んだ。


 しかし、壱が即答した。


「助けよう。」



 この一言であった。

 ここで助けられない様では逆四天王のままだと思ったし、おそらくこのなぎ倒された草木はさっきの3人がやった事だ。

 人の過ちでヒグマを傷つけてしまったので、壱達がその責任を請け負う事にした。



 3人はどうするか必死に知恵を絞る。


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