第14話 同年齢スリーマンセル
意外とこの生活も悪くない。
思っていたより楽しい場所だった。
壱はもっと過酷な生活を予想していたからだ。
だが、この生活で四天王になれるのか?
疑問に感じていた。
ここでの生活しか残されていないからどんな些細な事、キツイ事でもやり遂げると決めていたが、この1週間でやった事といえば、掃除やゴミの分別、そして‥‥康平のプラモデルを作る手伝い。
だが、やるしかなかった。
そして、康平から今日のプログラムを言い渡される。
壱、雅、立の3人で山に行って山菜を取ってこいとの事だ!
この3人は同い年だが、1年先輩の立が指揮を取る事になった。
初めての外でのプログラムであったが、まさかの山菜採り!!
遠足かと思い、壱はおやつは何円までか聞いた。
すると鋭い康平の水平チョップでのツッコミが入り、壱はダメージを負った。
康平はさっさと行ってこいと言わんばかりに道具が色々入ったリュックを渡して押し付ける。
壱は本棚に山菜図鑑があったのを思い出し、それも持っていくことにした。
山までは徒歩20分かかるがバスも通ってる場所でなく、タクシーに乗るお金も無かったので歩いていく。
3人は横一列に並びながら人通りの少ない道を歩いていく。たまに通りかかるタクシーを羨ましそうに見ながらも自分は歩くのも仕事だと、働きアリだと思い込んで歩く。
そうしてるうちにも山の入り口に着き、歩み出す。
朝露が滴る草原を掻き分けて踏み出すと〝カサカサ〟と心地よいメロディーを奏でる。
壱達は事前に康平から聞いていた山菜が多く存在する奥地へと進んでいく。
40分は歩いた事だろう。
流石に立は山岳レースをやっていただけあってまだまだまだ足取りは軽い。
田舎育ちの壱は、少し疲れたが、幼少期から外で遊びまわっていた事もあり、立ほどではなかったがまだ平気である。
しかし、雅は、札幌で18年間暮らし、机やパソコンと向き合う日々で学びを得ていた。
そんな雅にとって山を歩くという事自体が初めての事だった。
疲れたまま歩くのは良くないと判断した立は、休憩する事を提案する。
切られて2年は経つであろう切り株に腰掛けて、水筒に入ってるミネラルウォーターを飲む。
一気に飲もうとしている壱に対して、少しずつ飲むように雅が指摘する。
10分ほど休憩していると青空は見えているのだが、いきなり雨が降り注いできた。
すぐ晴れるだろうと3人は思っていたが、その様子はなく、雨宿り出来そうな場所を探して走り出す。
急いで茂みを掻き分けて進んでいると緩やかな崖がそこにある。
茂みを掻き分けながら雨の中走っていた3人は目の前が崖だと気づくのが遅くなり急に立ち止まったが、足場がぬかるんでおり滑り落ちてしまう。
そのまま3人は崖下に落ちるが落ちたところが、柔らかい草木が敷いてあったので体を痛める事はなかった。
そして、すぐ近くに小さなほら穴があるのを見つけ、ギリギリ3人が雨宿り出来そうなスペースがあった。
ここで休む事にし、座り込もうとした時だ立が急に声をあげた。
焦っているようだ。
山にある小さなほら穴、、
これはヒグマの巣だった!
そう気づいた時にはもう遅かった。
目の前によだれを垂らしたヒグマが現れたのだ。
3人は足がすくんだまま動けなくなった。