第12話 プログラム始動
朝日が窓の隙間から差し込み、壱は目を覚ました。
零札幌に入所して始めての朝を迎える。
今日から四天王目指して頑張ろうと気合を入れて、皆んなが集まっているダイニングに向かう。
みんな起きるのが早いものだな。
もう朝ごはんが準備されている。
調理は担当制で1週間毎に変わっていくようだ。
それにしても朝ごはんが美味い。
こんな美味いもの誰が作ったんだろうと思った。
「あ、俺だよ」
そう言ったのは、たくましい肉体に可愛いらしいいちご柄のエプロンを合わせている了であった。
壱は衝撃を受けた。
どこかの朝定食の様な朝食だ。
程よく半熟にされた目玉焼き、合わせ味噌を使った味噌汁、白米は粒が立ち、ベーコンなんて光輝いている。
料理の腕前は逆四天王ではなかった。
聞くところ最近料理にはまっており、料理本を月に一回購入するとの事だ。
朝食を食べ終えると康平から今日のスケジュールを言い渡された。
それは、部屋の掃除であった。
グループKの部屋掃除を全員でやっておいてほしいのと事だ。
そう言うと康平は外出していった。
今年に入ってから康平の外出する頻度が増えた様だ。
「さ、早くと掃除終わらせるぞ!」と怒鳴りながら指揮を取るのは夏菜であった。
夏菜の怒鳴りに中が怯えていると何怯えてんだと更に怒鳴り散らす。
雅がなだめようとすると、こっちの方が先輩だそと理不尽な言い訳をし始める。
見兼ねた了が、仲裁に入り、なんとか収拾がついた。
それにしても周はソファーで寝転び、香恵は携帯をいじり、立は筋トレをしている。
このグループは大丈夫か?とも思ったが、だからこそこの施設にいるのだと思い出した。
そうだ自分も逆四天王なのは一緒である。
早く始めた方が終わるから始めようと了が諭す。
「まぁそうっすね」
了の言葉をすんなりと聞き入れて夏菜は落ち着いた。
やっと掃除が始まる。
壱はどこを掃除したららいいか聞いてみると本棚を掃除してほしいと夏菜が言う。
壱は逆らう事は出来ずに、軍隊の様な返事をする。
本棚の前に行くと100冊くらいの本が置いてあった。
料理の本やメイクの本、主婦力の本などの生活本が置いてあった。
最近、康平が良く買ってきて置いてる様だ。
掃除を始めようと思ったが、本棚は木製で出来ており、どうやって掃除したらいいか悩んでいた。
すると〝家具のお掃除〟という限局された本を発見し、見てみると木製家具の掃除方法が載っていた。
見てみると木製の家具は基本的にはカラ拭きがメインの様で水で拭いてしまうと水分が入り込んでシミやムラの原因になる様だ。
また、洗剤で拭いてしまうと汚れが落ちる部分と落ちきらない部分のムラが生じてしまったり、変色したりする可能性があるみたいだ。
素材によって掃除方法が色々とある様ですべて載っていた。
全く関係のないページを見ていると後ろから寒気がした。
夏菜からのさっさと掃除を始めろという視線であった。
その視線にビクビクしながら掃除を始める。
まずは本棚から本を全部出して本棚全体をカラ拭きする。
その後に本自体を拭いていき、ジャンル毎に整頓した。
1時間半くらいかけて本棚の掃除を終えた。
他の皆んなも終えており、最後に各自の部屋の掃除をする事になった。
壱の部屋は物が少なく、掃除と言っても簡単な拭き掃除と掃除機をかけるだけで30分もかからずに終えた。
昼前に終え、了が作った美味しい昼食を食べ終えるとダイニングにある電話が鳴る。
了が受話器を取り、出ると康平からの電話であった。
康平から5Km程離れたスーパーにいるらしいのだが、立に来て欲しいとの事だ。
それだけ伝えると電話を切る。
立は嫌な顔をしたが、しょうがなく走ってスーパーまで行った。
30分もすると康平と立が戻ってきた。
立は汗だくで両手にスーパーの袋を持っている。
立は荷物持ちにされたようだ。
康平は涼しい顔をしながら綺麗になったダイニングを見て感動している。
今日のプログラムは終わりのようだ。
そして、最後に
「これで、四天王に一歩近づいたね」
と笑顔で言う。
今日やった事は掃除と立は荷物持ちだけで、こんな事で四天王になれる訳ないと思った。
そう、この康平の言葉の真意には誰も気づいていなかった。
まだ、この時は