第10話 女子だって逆四天王
「3人の紹介はこんなところかな」
教育係の男が部屋にいた3人の紹介をし終えた時。
「ただいま〜」
バンっ!!
勢いよく扉を開けて2人の女の子が入ってきた。
「え、部屋間違ってません?グループKですよ?」
壱はそう言った。
「あん?」
めっちゃキレてる!!
物凄い形相で壱の胸ぐらを掴む。
「待って待って、今日から入る新メンバーだよ」
と教育係の男が仲裁に入るとやっと胸ぐらを離してくれた。
社会に出た時には、女性とも接していかなければいけないので女性メンバーも一緒に生活しているとの事だ。
そして、この2人も紹介してくれた。
まず、紹介されたのは、壱の胸ぐらを掴んだ彼女だ。見た目は綺麗系で髪の毛は肩甲骨に届くくらいまである長さで、見た目からは胸ぐらを掴む様には見えない。
名前は嵐山夏菜、22歳であり、入所したのは、18歳の時だ。
つまり、了よりも年下であるが、このグループKで一番長くここにいる人物である。
夏菜の両親は温厚であり、夏菜を優しく大事に育てた。
家族揃ってただの人の称号であったが、それでもそれなりに幸せな生活を送っていた。
しかし、小学生になると反抗期が徐々に始まり、親に反抗するようになった。
そして、少しずつ荒れていった。
両親は夏菜を甘やかして育てすぎたのかもしれない、毎日夏菜に怯えながら過ごしていた。
夏菜はなぜ両親が怯えているのか理解できなかった。
夏菜は誰とも自分の意思を共有出来ない。
「なぜ自分の考えが通用しない」
そう思うようになってきた。
高校生の時、夏菜は遂に家を飛び出した。
だが、夏菜を探す者はいなかった。
家を飛び出した事をきっかけに逆四天王の称号となる。
夏菜は友達の家を転々としていたが、そのうち行ける家が無くなってきた。
高校は変わらず通っており、昼食は学校で出ていたので昼だけ食べる生活を続けた。
しかし、そんな生活もいつまでも続ける訳にはいかないと思っていた時、更生施設のチラシを目にして、入所した。
壮絶な人生だと壱は思うのと同時にこの人と同じ屋根の下で暮らしていけるか不安にもなった。
「私が一番先輩だからな、言うこと聞けよ!」
新人だとわかってからも態度が変わる様子はなく、威圧感が凄く、壱は圧倒された。
「とりあえず、このキツめの子が夏菜ね!次は隣の子の紹介をするよ」
夏菜と一緒に部屋に入ってきた女の子である。
名前は田池香恵、夏菜と同じ22歳で入所したのも18歳の頃である。
香恵は生まれながら児童施設で育つ。
里親を待つ者はまだ、称号が与えられず、引き取られる里親によって称号が与えられるのだ。
香恵は10歳の時、北海道で優秀なカリスマ美容師の父親と化粧品会社の社長秘書の母親に引き取られ、四天王の称号を与えられる。
それからというもの幸せな毎日を送っていた。
しかし、香恵が15歳になった時、不慮の事故で両親を亡くしたのだ。
両親がいなくなった香恵は、再び児童施設に引き取られる。
もちろん四天王の称号は剥奪である。
そして、18歳まで児童施設で生活するが里親は見つからなかった。
18歳になれば、逆四天王更生施設に入所するシステムになっていたのでそのまま、入所となった。
香恵は里親の事を本当の親の様に慕っていたようで、カリスマ美容師の亡き父親の姿を追いかけており、美容師になりたいと思っていると夢も語ってくれた。
2人と握手を交わしたが、夏菜には払いのけられた。