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猫は異世界転生したことに気づいていない!?  作者: セレンUK
外典 私のおばあちゃん
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35 外典 おばあちゃんと猫耳少年(後編)

「さあおばあちゃん、ゆっくり寝ていてね」


 フェリスに支えてもらい、何とか自室のベッドまでたどり着いて、この状態。

 婿候補を逃がしてしまったという、あまりの出来事に慌ててしまい、腰を痛めてしもうたというわけじゃ。

 年を取るとな、急なアクションはダメージが大きいのじゃよ。

 あと体は思うようには動かんし。


 そういうわけで、今はフェリスに看護してもらっとる。 

 フェリスもすぐにでも少年を探しに行きたかったじゃろうに、腰痛のわしのせいでそれも叶わぬ。


 男の子は家でじっとしてることなんてできないわ……だから仕方ないのよ、と、わしに心配をかけまいと笑顔をしておったが、笑顔の中に悲しみをしまい込んでおるような、そんな表情をしておった。


 すまぬ、フェリス……。

 せめてわしが、わしの腰が治ったら使い魔で見つけ出してやるからの。


 ・

 ・

 ・


 後日、わしの腰の痛みも一段落した故、使い魔を放って少年の捜索を行ったんじゃが、足取りは追えなんだ。

 すぐに探しておればまた違ったやもしれんが、腰痛による時間のロスが痛かった。

 この数日でどこまで行ったのか皆目見当もつかん。

 わしが同時に使役できる使い魔の数も限られておる故な。


 しかしこれであきらめるわしじゃない。

 別の方法を試すことにしたのじゃ。

 あるんじゃよ、とっておきの方法がのう。


 その方法とは『強制召喚』じゃ。

 わしの練り上げた闇魔法の一つなんじゃが、対象者の体の一部を触媒として魔界とチャンネルを開き、空間を捻じ曲げて対象をこの場に呼び出すという超弩級魔法じゃ。


 そしてわしの手の中には対象の一部、髪の毛がある。

 少年が泊った部屋で採取したものじゃ。

 フェリスの毛色は茶色じゃし、わしは白髪じゃし。

 つまりこの黒い毛は少年の物で間違いない。


 さてそれでは。

 わしは部屋の中に書き連ねた、見るものによっては複雑怪奇な模様にしか見えない魔法陣に魔力を込めていく。

 模様に魔力が染み渡るように、端から少しずつ光ってゆく。

 きておる、きておる、魔力がみなぎってきておる。


「はぁぁぁぁ、強制、召喚っっっ!」


 雷鳴が轟くような轟音と、それに伴って魔法陣から発生した煙が部屋の中に充満する。


「どうじゃ、成功か?」


 気配から、何かが召喚されたのは確実じゃ。

 じゃが、煙でなんも見えん。


 わしは煙にむせながらも、ばっさばっさと服をはためかし、煙を払う。


「こ、これは、なんじゃ?」


 少年が召喚されると思っておったので、そこにあるモノ(・・)への想像力が働かない。


 何かしらの金属でできた棚のようなものがわしの目の前に現れたのじゃ。


 魔法陣に目を落としてみる。

 ラックの召喚に成功しました、と魔法文字で表示されておる。

 この金属の棚、『ラック』と言うのか……。


 この強制召喚は空間に働きかけて対象を直接召喚するものなんじゃが、因果による紐づけが術式の途中に入ってるらしいんじゃよ。

 偉そうに言ったが見た通り、成功率は触媒の質と術者の力量による。


 パタパタパタと駆けてくる足音が聞こえた。


 おばあちゃん、大丈夫? なんかすごい音したよ?

 と、フェリスが轟音を心配してわしの様子を見に来てくれた。

 驚かせてしまってすまんフェリス。


 フェリスがその金属のラックという棚を気に入ったようなので、ゴーレムに運ばせておいた。

 無駄にならなくてよかったわい。


 ・

 ・


 気を取り直しその後も強制召喚を行ってみたのじゃが、『らすく』なる甘いパンやら、『らくがん』なる菓子、『らっきょう』なる酸っぱい野菜が召喚されたところで触媒が尽きてしもうた。


 すまぬ、フェリス。わしの力が及ばないばかりに……


 過度な期待を持たせてもいかんので、少年を召喚することは内緒にしておいてよかったわい。

 フェリスの目には、爆音と煙を巻き上げる老婆にしか見えんかったじゃろう。

 それはそれで言ってて悲しいんじゃが。


 ちなみに召喚された異世界の食材はわしがおいしく頂きました。

 

 ・

 ・

 ・

 ・


 それからしばらくして。

 わしの情報網に一つの情報が引っかかった。


 どうやら少年が、あのお嬢様学校であるオルサリィ女学院に出没したらしい。

 盲点じゃった。まだこのマフラスにいたとは。


 じゃが学院か……。

 これはチャンスかもしれないのう。

 学び舎で対象と過ごすのは、めくるめく恋の予感!!

 あの甘酸っぱい想いにより愛情が練り上げられるというわけじゃ。

 ああ、青春!!


 それに、そろそろフェリスにも英才教育を受けさせたほうがいいと思っておった。

 いかにわしが王宮に仕えたことのある優れた術者であったとしても、一人で教えられることには限界がある。


 別に、あのババルガンバリボーの禿げジジイに言われたわけじゃないんじゃからなっ!

 あのジジイ、フェリスに王族にふさわしい教養が身に付いているのかとかぬかしよったからな。覚えとれよ。


 こうなったら善は急げじゃ。

 早速フェリスの入学手続きをせねば!


 ・

 ・

 ・

 ・


 そしてあれよあれよと日が進み、フェリスが入学する日となった。


 あの後フェリスに入学の話をしたらフェリスも是非行きたいと思っていたことを打ち明けられた。

 近くに同年代の友達もいないため憧れておったらしい。


 じゃが、金銭的なことがあり言い出せなかったと洩らしておった。

 すまぬフェリス。子供のお前にそんな思いをさせておったなんて……。


 組織の金をちょろまかすことも出来んことは無いが、そんな不正な金で入学したことがフェリスにばれたら二度と口をきいてくれなくなるじゃろう。

 そのため、若き日に使っておった魔法具を質に入れて金を工面したのじゃ。

 いつかフェリスの結婚資金にしようと思い置いておいたんじゃよ。


 フェリスだけは清らかな世界で生きて欲しいからのう。



「おばあちゃん、行ってきまーす」


 オルサリィ女学院の制服を身に着けたフェリスが大きく手を振る。

 紺色のブレザーに首元には赤いリボン。

 チェックのスカートがひらひらとはためいておる。

 さすがはフェリス。王族として相応しい神々しさじゃて。


 心配なのはあまりの神々しさに悪い虫かつかないか、なんじゃが。

 まあ、女学院じゃから大丈夫じゃろう。

 道中の害虫はわしが秘密裏に排除しよう。


「気を付けての。転ぶんじゃないよ」


 わしはそういうと、その姿が小さくなり見えなくなるまで眺め続けておった。


 大事な事なんじゃが、フェリスは自分が王位継承権者であることは知らぬのじゃ。

 時が来るまでは普通の娘として生活して欲しいという老婆心じゃ。老婆だけに。


 そんな大切な事、さらりと言うなって?

 以前言ったつもりになっておったが、言って無かったかのう……。

 

 ・

 ・

 ・

 ・


「皆さんに新しいお友達を紹介します。フェリス=シルバトリスさんです」


「初めまして、フェリス=シルバトリスです。どうぞよろしくお願いします」


 教室内で拍手が巻き起こっておる。

 ふむ、ファーストインプレッションは成功のようじゃな。


 なに?

 どうして学院の状況が分かっておるのかじゃと?

 フェリスを心配してのことに決まっておろう。


 使い魔で見るのはプライバシーの侵害じゃと?

 そんなことは分かっておる。あれは緊急用のものでフェリスを監視するためのものではない。


 じゃあどうやって状況を知ってるのかじゃと?

 ふふふ、じきにわかるじゃろ。

 わしは今、この場・・・に居る。


「今日から皆さんに新しい分野を教えてくれる先生を紹介しますね。キンバリー先生どうぞ」


 キンバリーとはわしのことじゃ。もちろんフェリスにばれないように偽名じゃ。


 わしは扉を開けて教室の中へと入る。

 カツカツカツとヒールと床が擦れ合う音がする。


「わあ、美人。それにスタイルも抜群だわ」


 女学生達から羨望の声が聞こえる。

 そうじゃろうそうじゃろう。自慢じゃないが、昔は王宮でモテモテじゃったからのう。


「キンバリーです。他国で教鞭をとっていましたが、本日よりここオルサリィ女学院で闇魔法の講義を行う事になりました。闇魔法だけでなく、魔法については一通り精通していますので、気軽に質問しでください」


 わしも挨拶を行う。


 そう、フェリスの様子が心配になったわしは教員として学院に潜り込むことにしたのじゃ。

 それもフェリスにばれないように、闇魔法でわしの体を20代のころまで若返らせておる。


「素敵……私も先生のようになれるかな」


 フェリスがそう呟いておる。

 どうやら、これがわしだとバレてはおらんようじゃ。


 大丈夫じゃよフェリス。わしの血を引いておる故、おおきゅうなったらわしよりも美人になるわい。


 余談じゃが、どうして教員として潜り込もうとしたのかと言うとじゃな……。


 最初はクラスメイトとして潜り込もうと思ったんじゃよ。

 なので今日に先だって、10代のころまで若返らせて学生として入学したんじゃ。手違いでこのクラスでは無かったのじゃが。


 したら、どういったことか、「お姉様お姉様」と言われて、女学生達に懐かれてしまってな。


 どうやら、わしの年齢にそぐわない大人な性格や物腰が同年代の女学生にはクールに映るようで、人形のようなわしの容姿(自分で言うなじゃと?)と相まって、恋愛対象として見られてしまったらしいのじゃ。


 学院について何も知らんわしを寮の部屋に案内し服を脱がし始める手口は見事じゃったが、最近の女学生はそんなことばかり覚えておるのか?

 そのまま相手をしてもよかったんじゃが、いかんせん若返りの術は膨大な魔力を使用するので、10代となると数時間もたんのじゃよ。


 話は逸れてしまったんじゃが。

 クラスの皆から祭り上げられるこの状況は、フェリスを特別な一番として女学生達に受け入れさせようとしているわしの思惑とは外れてしまう。


 フェリスもわしに勝るとも劣らない美人なので、一人の場合は確実にそうなるじゃろうが、わしがいるとなると人気が割れてしまう。

 先ほども言ったように、それはわしの望みではない。


 そこでプランを変更して教員として潜り込むことにしたのじゃ。


 幸い魔法の知識には事欠かんからのう。面接即日採用じゃったわ。

 真ん中に座っておった面接官の男、じろじろとわしの体を見ておって、わしの話を聞いてたのかは定かではないんじゃがな。

 もちろん女性の面接官もおったので、色気で採用されたわけじゃない。ちょいと披露した闇魔法に度肝を抜かれておったようじゃしな。


 そういう経緯があって、わしは今この場に立っておる。

 これで裏からフェリスを守ってやることができるわい。

 それに少年の調査も行うことができよう。

 あとはイベントにかこつけて少年とフェリスをくっつけるだけじゃ!


 わしプロデュースのフェリスハッピープランはまだ始まったばかりじゃ!


ここまでお読みいただきありがとうございました。

長らく続いた外典もここで一区切り。

次からは本編に戻ります。

本編、第4話はこのお話の真のヒロインが登場します。ご期待ください。


2019/05/03追記

「次からは本編に戻ります」とお伝えしておきながら、本編を更新する前に一周年が来ましたので次は一周年記念のお話となります。

本編の再開はもう少しお待ちください。

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