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猫は異世界転生したことに気づいていない!?  作者: セレンUK
外典 私のおばあちゃん
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34 外典 おばあちゃんと猫耳少年(中編)

「ただいまー」


 玄関から声が聞こえる。どうやらフェリスが帰ってきたようじゃ。

 フェリスに使い魔が憑いているのは内緒じゃから、そ知らぬ振りで出迎えねばな。


 よっこらしょと、わしは腰を上げて玄関へと向かった。



「おかえりフェリス。どうしたんじゃ服とかどろどろでボロボロじゃないか」


 使い魔を通して見た時にはよくわからんかったが、酷く汚れておる。

 お気に入りであろうワンピースは、木の枝に引っかかったのかあちこち小さく破れており、肘の部分などには泥が着いた跡がある。


 男子の前ではお淑やかに、そして美しくあるようにと躾けてきたので、服の汚れは出来るだけ払い、髪の毛についてたであろう葉っぱや枝も綺麗に取り払ったのじゃろう。さすがはフェリスじゃ。


 じゃがしかし、年頃の娘がこんな汚なっこい格好をしててはいかん。まずは湯浴みをさせねば。


「えっへっへ、それがね・・・」


 苦笑いしながら歯切れが悪く答えるフェリス。

 安全なはずの裏山に行くから大丈夫だと自信満々に言ったためバツが悪いのじゃろう。


 ごめんなさい、と謝るフェリスから事の経緯を聞いた。


 頼んだ素材、薬草なんじゃが、そのついでにハーブを摘んで行こうとして道を間違えてしまったこと。

 見知らぬ道で魔獣の巣に行き当たり、その巣の主であった魔獣に襲われたこと。

 そこで、先ほどの少年、名をラックと言うらしいが、に助けられたこと。


 使い魔を通して見た、あの引っかき傷のあった魔獣がフェリスを襲ったやつじゃろう。

 引っかき傷はあの少年が着けたのじゃろうな。

 まあ、将来の勇者なら魔獣などわけもないということじゃよ。



「それでねおばあちゃん」


 一通りの顛末の説明が終わったところで、改まった様子のフェリス。


 ふむ。

 一度も誕生会をしたことがない少年のために、家で誕生会を開いてあげたいらしい。


 何度も言うが、心優しいええこなんじゃよ。

 わかるじゃろ? このあふれ出す優しさが。


 無論、孫娘のお願いを断ろうはずがない。

 料理を作るというフェリスに協力を約束し、まずは湯浴みさせることにしたのじゃ。


 ・

 ・

 ・


 外で待っている少年のために急いで誕生会の用意したいというフェリス。

 それ故、わしは今薪の代わりに火炎魔法でお湯を焚いておる。

 強力な火炎魔法を使うことによって、せめても湯を沸かす時間を短縮しようという訳じゃ。


 ふぁいやー、ふぁいやー!

 この年になって攻撃魔法の継続詠唱はこたえるわい。

 じゃが、可愛い孫娘のためじゃ。身を粉にして働くぞい。



「フェリスや、湯加減はどうじゃ?」


 無事にお湯が沸いたので、フェリスは今湯浴み中。

 

 風呂の中から、いい湯加減よ。無茶を聞いてくれてありがとう、という返事が聞こえた。

 ええんじゃよフェリス。その言葉だけでわしはあと10年は生きられるわい。

 フェリスの花嫁姿を見るまで死ねんからのう。


「ねえおばあちゃん」


 さてさて、後は薪でもよかろう。そう思い薪に火をつけようとしたところに、フェリスからわしへ呼びかけがあった。


「なんじゃ、熱いのかい?」


「んーん、そうじゃなくって、昔おばあちゃんが教えてくれたあの腕輪あるじゃない」


 あの腕輪?

 はて、何のことじゃったか。


 よくよく話を聞くと、我が家に伝わる婚約の腕輪のことじゃった。

 フェリスが小さいころよく話して聞かせた記憶がある。


 あれには強い呪術がかかっており、腕輪をはめた二人を知らぬ間に婚姻させるあれじゃ。


 どうやらその腕輪を少年にプレゼントしたいようじゃ。

 もちろんフェリスは強力な呪術がかかっていることは知らぬ。そんなドロドロした事情を幼子に伝える大人はおらんじゃろ。

 だから、結婚の約束をするための誓いの腕輪、くらいの認識なんじゃ。 


 まだ少年に直接KANTEIをしたわけじゃないので不安材料は残るが、まあ、将来有望なら特に邪魔することもなかろう。


 腕輪は後で探しておくとしよう。


 ・

 ・

 ・

 ・


 それから誕生会の準備は順調に進んだ。順調に。

 ご馳走の材料など普段から常備してるわけでは無いので、わしとフェリスが料理している間に、自動人形ゴーレムに買い物に行かせた。

 今回はツケで頼む、というメモを持たせての。

 普段から友好を深めておくといざという時は助かるのう。などと意味深な事を言いながら、準備は進んだのじゃ。


 そして、即席じゃが立派なご馳走が完成し、フェリスは少年を家に招き入れた。


 そんなわけで、わしの目の前には少年が座っておる。

 黒い髪の毛に柔らかそうな猫耳、尻から伸びた黒い毛並みの尻尾は左右に忙しなく動いておる。


 体毛がもっさもっさで、一見すると動物と見紛うような獣人族もおるのじゃが、この少年はわしらと姿が近い獣人族じゃな。

 あまり姿形が違うと、さすがに勇者候補でも応援は出来んのじゃが、この少年はOKじゃ。


 少年に直接会ってみると、そうじゃの。思ったより小柄で幼い感じじゃのう。

 まあ、フェリスと同い年か少し下であればそれもやむなしか。

 フェリスがしっかりしすぎているという面もあるのじゃが。

 年齢故に幼い顔をしておるが、おうきゅうなったら野性味あふれる男前になりそうじゃ。


 おうおう、テーブルに並べられた料理の数々に目をキラキラさせておるわ。

 そうじゃろうそうじゃろう、腕によりをかけたからのう。うまそうじゃろ?

 

「ふふふ、ケーキは最後よ」


「わかった!」


 フェリスから食べて良しの合図が出た瞬間、ふかし芋の皿に顔をつっこみおったぞ……。

 最初は頭から料理に突っ込むという獣人の作法なんじゃろうか。

 獣人と一括りで言っても、様々な種族と様々な文化に分かれておるからのう。

 わしが昔知り合った獣人は、わりかしわしらに近い文化をしておったが、この少年はどこの出身なんじゃろうか……。


 あ、そうじゃった。異世界じゃな。異世界転生者じゃから。

 異世界の文化ならわしらとまったく違っておってもおかしくはない。

 まあフェリスの為にも、これから勇者として恥ずかしくないように教育していかねば。


「ああ、ラック、スプーン使いなさい」


 フェリスが少年にスプーンを渡した。

 うむうむ、もう婿候補としての教育が始まっておるのじゃな。


 フェリスにはわしの持てる作法をすべて教え込んである。

 わしが無理に間に入って少年を躾けることもなかろう。 


「ラック、さっき話した私のおばあちゃん」


 などと考えておるうちに、フェリスからわしの紹介があった。


「おばあちゃんこんにちは」


 ふむ。きちんと挨拶は出来るようじゃな。

 それほど不作法というわけでもあるまい。


 おっと、忘れておった。少年を直接KANTEIするんじゃった。

 

「ふむ。元気のいい少年じゃて」


 などと適当なセリフを言いながら、わしは魔力を集中してKANTEIを発動する。


 詠唱はいらんのかって?

 ふふふ、心配いらん。元々KANTEIは無詠唱なんじゃよ。

 先程は使い魔越しに簡易KANTEIを行う必要があったから詠唱しておっただけじゃて。


==============

個菴名:ラッ繧ッ

遞ョ族名:ブ繝ゥックワー繧ュャット

LV??

HP??6

MP:8

謾サ撃:39

防蠕。??3

知力:8

謨捷:46

アク繝?ぅブスキル: 爪撃Lv3 霍ウ霄Lv4 遠投Lv-3

繝代ャシブスキル: 平衡諢溯ヲLv3 暗視Lv3 空中蝗櫁サ「Lv3 察知Lv3

称号:異世界転生者(猫)

==============


「ラックと言ったか。

 おぬし、数奇な運命を持っておるな……。

 ふむ。孫娘に悪い虫が付いたかと思ったが、そうではないようじゃな。

 あらためて礼を言おう。フェリスを救ってくれてありがとう」


 相変わらずノイズがかかっておったが、まあ重要な点は確認できたから良しとしよう。

 それにしても、異世界転生者の後ろに付いている(猫)ってどういう意味じゃろうか。守護する神の体系とかじゃろうか?


 先程も言ったが、KANTEIの使い手が少ないため文献が少なく、ステータスの意味も神の規則で表示されるため我々には理解できんことも多いからのう。


 とにかく、異世界転生者であることは間違いない。

 あとはしっかりとフェリスを幸せにしてもらうだけじゃ。

 その一歩としてフェリスとくっ付けることが必要じゃが、それも腕輪がやってくれるので心配無い。


 早くひ孫の顔が見たいものじゃ。


 ・

 ・

 ・

 ・


「なんじゃとー!?」


 朝っぱらから叫んでおるのはわしじゃ。

 なんで叫んでおるかと言うとな、夜のうちに少年が失踪したというではないか。


 これは一大事じゃよ。

 フェリスを幸せにするまたとない人物じゃったのに、わしがいながら逃がしてしまうだなんて、とんだ大失態じゃ。


 昨日のうちに腕輪はプレゼントして腕にはめたらしいが、強力な呪術とはいえ急には効果は出んのじゃ。

 効果の出る前に間違って他の女になびいてしまったら、呪術を受け付けなくなってしまう可能性もある。


 なんでそんなに腕輪に詳しいのかって?

 当り前じゃ。わしも若いころ使ったことがあるからのう。

 あの時は嫉妬に狂ったものじゃ……って、そんなことは今はどうでもよい。


 今ならそう遠くへは行っておらんはずじゃ、速やかに見つけて身柄を確保せねば。


 ――ぐきっ


「はうっ……」


 今危険な音がした。わしの腰からじゃ……

 痛みから、わしはその場に崩れ落ちた……

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