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28 外典 アニダ ~とある女冒険者の昔話~

外典は本編のサイドストーリーとなります。


本編では語られなかった設定や、各キャラクター達のお話となります。


本外典は第3話のヒロイン、アニダ視点の話となります。過去そして第3章終了後の内容となります。

 私の名前はアニダ。女だてらに冒険者をやっている。だけどそこそこ名の売れた冒険者なんだよ?

 なんで女なのに冒険者をやってるのかだって?

 そりゃあ生きていくためさ。生きていくには金が必要だ。そういう意味で冒険者は大金を稼げる職業だったって訳さ。

 なんで大金が必要かって?

 そうだな。一つ昔話をしよう。

 昔々……。



 私は食べ物を求めて当ても無く彷徨う孤児だった。両親共に流行り病で死んでしまったのだ。突然に保護者を失った幼い私が生きていくには世の中は厳しすぎた。養ってくれる親族も、救いの手を差し伸べてくれる人もいない。街全体が病という目に見えない恐怖に疲弊していたのだ。

 そんな中で私は食べれるものを探してうろつき回り、少しでも喉を通りそうな物があれば口に入れる悲惨な生活をしていた。

 その様な生活は長く続く訳も無く、とうとう私は飢えと、そこから来る衰弱により地面に倒れこんだ。


 そのまま死ぬのかと思ったけど、ふと目が覚めたんだ。


 そこは教会のベッドの上だった。

 倒れていた私を教会のシスターが助けてくれたらしい。

 その教会は私のような孤児を引き取っては育てている様で、10人くらいの子供たちが一緒に生活していた。

 私もその中の一員となった。


 しかしながら、私を含めてどの子供たちの姿を見ても痩せ細っている。

 教会は肉屋や魚屋のように金儲けが目的ではないため、潤沢にお金があるわけではない。

 いやいや信者からお布施を巻き上げてるんだろ、とお思いかもしれないが、どうやらここは正規の教会組織に所属していないようだった。後から知ったことだけどね。

 そういうわけで子供たちはかろうじて飢えをしのげるというレベルの食事を取る日々だった。



 それから数年。

 教会はさらに多くの子供を抱えていた。そのため同じ釜の飯を食っていた年上の兄弟たちは働ける年齢になると教会を出て行った。

 今では兄弟の中でも私が一番年上になってしまった。

 私も年上の兄弟たちのように丁稚奉公に行くべきだろうか。

 いや、それじゃあだめだ。それじゃあ今と同じくただ生きているだけだ。

 自分が生きるのに必死で他人に目を向けることが出来ないまま死んでいく。そんな人生になるだろう。

 自分より幼い弟妹たちはどうなるのか。出来ることなら弟妹たちを幸せにしてあげたい。そういわずともせめてお腹いっぱいに食べさせてあげたい。

 そのためにはお金がいる。結局はそこにたどりつく。身寄りも何もない孤児が大金を手に出来ることなどできない。

 私も女だ。体を売る事も考えたが、絶対にだめだとシスターにきつく言われている。

 じゃあどうしたらいいのか。無知で学のない孤児の私に何ができるというのか。


 ある日、教会の物置で金属でできた下着を見つけた。その下着は赤色にきらめいていて、貧乏なこの教会にあるには場違いなものに見えた。

 それだけ綺麗な物なら売れそうなものを。

 現に教会からは、金目のものはほとんど売り払われていた。一文にもなりそうにもないガラクタまでもだ。


 私はシスターに尋ねてみた。

 「あれは下着じゃなくて、鎧よ」

 シスターはそう教えてくれた。

 鎧っていうと騎士様が着ているやつだよね。全然違うよ?

 「あれはね、女の子用の鎧なの」

 釈然としなかった。どうして売らないのかは教えてくれなかったからだ。

 大切な物なんだろうか。

 鎧に興味を持った私はシスターの目を盗んでは鎧の元に行き、その綺麗な赤色を眺めていた。


 綺麗な鎧の話を自分の中だけで留めておくことが出来なかった私は、街でその話をしてしまった。今思えば危ないことをしたと思うよ。金目のものがあるとなると借金を理由に毟り取りに来る輩がいるからね。

 幸い話をしたのはその1回だけで、シスターも懇意にしている人だったので事なきを得たけどね。


 話は逸れたけど、鎧の話をしたんだ。どこでかって?

 それは酒場だ。ちょうどそのころ酒場の存在を知って私のお気に入りの場所になっていた。そしてそこで冒険者という職業について知ったのだ。

 「私冒険者になりたい!」

 さっそくシスターにそう言ってみた。

 もちろん反対されたさ。

 でも私は食い下がった。

 「シスターも昔冒険者だったって聞いた。ずるい。私もやる」

 と。そのころの私はまだ冒険者についての考え方が甘かった。

 自分のために言っているわけではない。すべてはお金を手に入れて教会のみんなと幸せになるためだ。そう思って駄々をこね続けた。

 だけどシスターは首を縦には振らなかった。


 冒険者という職業を知ってしまった。知らなければそのまま丁稚奉公にでも行っただろう。だが知ってしまった。

 シスターが止めるのは私の身を案じての事だというのはよくわかっている。だけど、もともと死ぬはずだった命だ。兄弟たちの役に立てるなら死ぬことなんて怖くはない。


 私はこっそり街の外に出た。もちろん魔物を倒してシスターに認めてもらうためだ。

 手には木の棒。これで魔物を倒すのだ。

 酒場の大人に聞いたが、街の近くの魔物達はそんなに強くないらしい。私が魔物を倒したらシスターも冒険者になっていいと言ってくれるに違いない。


 だが弱いと言っても魔物は魔物。私はボロ雑巾のようになっているところを通りがかった冒険者に助けてもらった。

 シスターにこっぴどく叱られた。それはもう。


 私にはいろいろ足りない。技も力も足りない。

 私はシスターの目を盗んでは木の棒で素振りをするようになった。教会のお手伝いも率先して力仕事をするようになった。それは年長者だから疑われることは無かったけどね。


 それからさらに数年。

 私は積年の恨みを果たしたのだ。ボロボロの姿でそのことをシスターに伝える。

 シスターはため息を付きながら

「はぁ、アニダには何を言っても無駄のようね。根負けしたわ」

 そう言って、改めて鎧の目の前に座った。

 下着のように細く綺麗な赤色をしたその鎧は、やはり若いころのシスターが使っていたもののようだ。

「この鎧を身に着けるという事はもう堅気には戻れないのよ」

 望むところだ。冒険者になるために何年も鍛えてきたのだ。いまさらその言葉で引き返すわけはない。

 シスターが首を振った。どうやら意味が違うようだった。

 この鎧の名前はリリーヴォルト。

 ただの鎧ではなく、強力な魔力を帯びた魔法具であり、男性に比べて非力な女性でもその力で必殺の一撃を放つことが出来るらしい。

 しかし、強力だがデメリットもあるという。その一つが鎧を一度身に着けると外れなくなるということだった。


 そこで私は話の矛盾に気づいた。若いころのシスターが使っていた一度身に着けると外れなくなる鎧。それが目の前にある。

 「脚に大怪我をしたの。冒険者生命にかかわるね」

 シスターが言うには、それまでどうしても外すことのできなかった鎧が、大怪我をした後突然に外れるようになったとか。

 その事がきっかけでシスターは冒険者を廃業したと言っていた。


 確かに今までシスターが走った所を見たことが無い。それはそういう過去があったからだったんだ。 

 鎧の事をしっかりと話してくれたシスター。それは彼女の優しさ、そして最後通告なのだろう。 

 だが先ほども言ったとおり、それで引き下がるつもりはない。私はそれを知ったうえでその鎧、リリーヴォルトを受け継ぐことを希望した。

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