嘘か誠か
……!
俺の胸から白い光が放たれ、電気の壊れた暗い廊下を明るく照らす。
「……! 少しビビっちゃった」
そして、俺の心臓の前で剣が構成されていく。
テレビの映像が安定していくよう、徐々に剣が出来ていく。
「面白くなってきたねー。待っててあげよう」
そこから数秒もしないうちに剣は完成した。
柄の部分は青く、赤色や金色の装飾品が付いている。
鎬は銀色に輝き滑らかなカーブを描いている。刃紋には金が使われていて、光り輝いている。
そんないかにも勇者が使いそうな長剣が俺の目の前に現れ、使えと言わんばかりに宙へ浮いているのだ。
バシッ
俺はその剣を掴み、夏奈へ刃先を向ける。重さは見た目の割にあまり無い。
気絶だから……柄の部分でぶっ叩くか。この剣には申し訳ないが夏奈の血をやるわけにはいかない。
「ふふっ。面白くなってきたねー」
そう言うと、上空に飛び上がり、天井スレスレの位置から斬りかかってきた。
俺の体は自然に反応し、それを受け流す。
すると、夏奈は後ろに倒れる。
その隙に……。俺は持っていた柄の部分をそのまま夏奈の後頭部を目掛けて振りかぶった。
「遅い」
夏奈は転がるようにして後ろへ逃げる。柄の部分は字面を叩き、激しい音を鳴らす。
「……!?」
何故か、その反動が自分に返ってくることは無く、地面を揺らし、前方の床に亀裂が入る。
ありらこちらに下半身がすっぽり入りそうな穴が出来る。
「おっと……危ないなぁ。そうこなくっちゃ!」
何だよ、この剣……。強過ぎないか? いや、もちろん嬉しいのだが、何かの間違いで夏奈を殺してしまったり、致命傷を負わせてしまわないか心配になる。
夏奈は、屈することなく剣を振るう。
俺はそれを全て振り払い、後ろに引き続きける。
すると、夏奈は一度後ろに下がり、飛びかかってくる。その攻撃が当たらないスレスレの場所まで下がり、俺も牽制で一度、剣を振るう。
すると……。
ビュン!
空をも切り裂くような鋭い音がする。いや……空を切り裂く斬撃が夏奈の持っている剣を右手ごと吹き飛ばす。
その勢いで夏奈は後ろへ飛んでいく。
確かに、これなら足止めは出来る。だが、夏奈を傷つけるのは嫌だ。
俺は回復スキルを唱える。すると、夏奈の右手は何事も無かったように再生する。
効力や範囲が上がっているのか、周りの床も驚きの早さで治っていた。
「……計画は成功したようですね。ここは、分が悪いので撤退します。さようなら」
「待っ……」
夏奈の姿は空間と同化するように消えてしまった。
「あっちゃー、逃がしちゃったか。君なら、余裕でぶっ殺せるかなー? って、見てたのにー」
階段の角から姿を現したのは、血塗れのリミルだった。
「殺すわけないだろ」
「つまんないのー! 君が魔王様の眷属でも無かったら、とっくにぶっ殺してるよー」
『こたつの仮もないしね』ふふ。と悪戯な笑みを浮かべる。
俺はブルッと震える。魔王が特別なだけで、やっぱり魔王軍だよなぁ……。
「で、そっちは大丈夫だったのか……?」
「うん! あんな雑魚、話にならないね! 君はあんなやつに手こずってたのかー。弱っ!」
と、鼻で笑う。
「でも、君は『覚醒』したみたいだからね! まぁ、私の方が強いけどー」
続けて、そう話す。
「で、やよいはどうしたんだ?」
「ん? あいつー? つまんないから殺した」
……何故だか、怒りがこみ上げて急に体が震え始める。
いや、確かにあいつは敵だ。しかも、勇者……? なんだろ? でも、俺と接点も合ったし、最後はムカついて終わったけど。他の勇者と同じなんだけど……生きてるし。いや、他の勇者も生きてんだけど! と頭が混乱し始める。
俺は、今まで何をしてきたんだ……?
確かに、魔王側から見れば勇者は悪いヤツだったかもしれない。だけど、勇者と願いを交わしたものは? 全て悪かった。なんて、言い切れるのか?
冷静に考えてみろ。
一番最初の人。
あの人は自分をしっかり見つめ直し、『自首』をして罪を償うことが出来たんじゃないか?
このように、他の人も自分と向き合い、自分の力にしてきたんじゃないのか?
一途に悪いと決めつけて良かったのか? 確かに、今ここを守っているのは魔王側だ。だが、全てが全て。勇者が悪いとも言い切れない。
……俺のしてたことは本当に正しいのか?
「お前には情ってもんがないのか……?」
震える声で言葉を絞り出す。
「情? 何それ。結局は自分が大事でしょ。もし、私が今お前を本気でぶっ殺そうとしたら、お前も自分自身を守るために私を殺す。それと同じ」
『結局は自分がやりたいことをやるよねぇ?』
ニヤと馬鹿にするよう、当然のように笑ってくる。
「……」
ここでキレちゃ駄目だ。やよいには悪いがキレる場面じゃない。確かに、俺を殺そうとしたやよいはムカつくが楽しいことだって色々あったはずだ。
あいつにも事情があったんだ。
お人好しなのは分かってる。けど! ……あいつを今、憎んだり、助けたいと思ったところで過ぎたことはどうにもならないんだ……。
気がつけば、目から涙が零れていた。
「……!」
俺は、それを手で拭う。
「泣いちゃってんのー? ははっ! ウケるー」
俺は拳を思いっきり握りしめる。
「早く外に行くぞ……」
今は止まってられない。色んな奴らを守らなくちゃいけないから。
――いや、守りたいから。
……ムカつくけど、止まってらんねぇ。




