至福
うわぁあぁあ。
受け入れて、部屋に入ってから数十分。暇だ。ただ暇だ。
魔王様が一週間、ここで暮らすことになったのはいいのだが……こんなにダラダラしてていいのかなぁ!?
確かに、俺は「行かない」と、言ったぞ?
だが、要件は解決したじゃないか。日曜の休日に部屋で寝てていのか?!
俺は漫画。魔王様はゲーム。
これじゃあ、ただの兄弟だぞ!? 今回の砦は一週間以内に片付けたいのに!
それ以降だと、魔王様がバレた時に『誘拐』として疑われるから!
「な、なぁ。俺は確かに行かないと言ったぞ? だけどな……それは」
「分かってるって! 一日くらい休んだって大丈夫だ」
「……お前が言うなら、それで良いんだけどさ……」
だ、ダメ魔王だ!
国とゲームを優先しろって言われたら、こいつ『ゲーム』を優先しかねないぞ……?!
そんな魔王様が楽しくゲームをしている中、俺は勉強を始めようと道具を出す。
こういう時にやることをやっておけばいいんだよな……。
そうだ。そうだ。と、一人で納得する。
確か、漢字の小テストがあったよな。少し練習しておくか……。
と、テストに出される漢字を見て、ノートに書こうとした時。
ドンドン
扉を誰かが勢いよく叩く。かなり強い。壊れるから、やめろ。
「うるさいから、勝手に入れー」
「お前ってやつは……小さい子を暇にして勉強を……」
俺は散々、外に出ようって言ったぞ!!
「よし。そろそろ昼飯だ! 外で遊ぶぞ!」
「何故そうなるし!? めちゃくちゃ寒いんでパス」
「これで、どうだ!」
と、ポケットからトランプを取り出す。
ピコピコピコピコ。テレレレン!
「やっと……ボスクリア! ……って、ボスが何で立っているんだ!?!?」
「俺の父だ!」
おい。父……。何で黙って俯いてんだよ。
子供……まぁ、中身は大人なんだろうけど、そんなのにキレたりしないよな!?
『な、なぁ……もしかしてヤバいか?』
「あのー……お父様っ?」
魔王様が慎重に上目遣いで話しかける。
「ぐおおおおおおお!!」
「うわぁ!!」
魔王様はビクビク震わせ、俺の後ろに隠れる。
いやいやいや! 俺も生まれて初めてだよ! こんなに父がキレるのは!
「はっはっは! ボスの演技だ。似てたか?」
「「……」」
『魔王様……何処のボスだ?』
『神社……』
「二人とも、黙り込んでどうしたんだ? 似てたかー? ははっ!」
と、一人で笑い始める。
俺達の沈黙は続く。
「だから、似てたかって! 二人揃って、黙り込んみやがってー」
俺と魔王様は念話で息を合わせる。
「「今、倒したボス。女キャラです」」
「うわぁぁぁぁあ!!」
父は顔を真っ赤にした後に部屋を勢いよく出ていった。
何と言うか……。人騒がせな父でごめんなさい!!
それからは特に何もなく、昼飯を食べ、ダラダラし、あっという間に夕飯の時間になっていた。
こんな自堕落な生活を……。何か、勿体無い!
「そろそろ夕飯だぞー!」
父の声で下に降りる。
「俺は一日一食でも……」
「そういう訳にはいかないだろ! それくらいの子が一日一食とか、ありえないからな!? ゲーム、してないでいいから早く行くぞ!」
俺は抵抗する、魔王様を引っ張り、俺達はリビングに入る。
すると……。
「うおおおぉぉおお!! 凄い!!」
諦めて、大人しく付いてきたローテンションの魔王様が隣で叫び出す。
声が太いので、パチンコとか競馬で勝った、おっさんの声にしか聞こえない。
今頃、空高く新聞が舞っていそうだ。
「どうだ。凄いだろ」
俺は高校生だ。食べ物ごときで喜ぶほどお子ちゃまじゃない。
ごめん。前言撤回。
「うおおおぉぉおお!! 早く食べようぜ!」
俺の前に並んでいたのは豪華な皿に乗った大量のお寿司。
別に、ただの寿司。
そう思い、対して気にしていなかったのだが……俺の目はしっかりと捉えていた。
……そう。
いつも見る、寿司ではなかったのだ。
『赤みのマグロ』
が、いつも通りポカーンと置かれている中、隣には豪華二点。
『中トロ』と『大トロ』が控えていたのだ。
その少し遠くには、普段、あまり目にしない『ウニ』が置いてある。
そして、俺の目は更なる刺客を捉えていた。
それは『いくら』だ。
何だよ。普通の安いパックにも入ってるじゃないか。
いや……そんなものとは桁違いだ。
粒の大きさが桁違い。
一つ、一つが輝く宝石のようだ。
どれもこれも……食べたら、どんな味がするんだろう。
俺の口は満たされ、爆発して、死んでしまうのだろうか。
めちゃくちゃ食いたくなってきたぜ……!
「それじゃあ、早く食おうぜ!」
「おい。お前が子供より盛り上がって、どうする」
父に突っ込まれてしまったが、そんな事は関係ない!!
――天にも登れる気がするっ!
食いたい!




