バレたよな
……ぎゃぁぁぁぁ!
……これ、ヤバくないか。
見つかったんだぞ?
恐怖で足が震え、前が向けない。
どうしよう。どうしよう。何かの間違いで巨大スライムが空から降ってきていた。みたいにならないのかな……。
『お、おい! 固まってても、しょうがないぞ。前の男。不安そうに、こっちを見てるし』
男なのか……。
……って、今思ったけど、全然大丈夫じゃないか?!
別に知らない人なら、痛い格好をしている、弟で通せばいいじゃないか。
『魔王様は、俺の弟だ。いいな?』
『け、あ、おぉ!』
後ろを向いていたのは適当な言い訳をすればいいもんな!
作戦を軽く、頭でまとめた俺は後ろを一気に振り返る。
「すみま……って、ええっ!?!?」
「お、おい。急に叫び始めて、どうしたんだ??」
俺はもう一度、振り返っていた首を元に戻し、顔を合わせないようにする。
『お、おい! お前、どうしたんだよ。めちゃくちゃ汗出てるし! この『おっさん』は誰なんだよ』
『……ごめん。俺ら、終わりかもしれない』
「……おいおい。大丈夫か? 具合でも悪いのか?」
「そ、そんなことはねぇよ」
「じゃあ、どうした。それより、その隣の子は……」
「うわあぁああ!! そいつはぁ……その! そうそう! 友達の親戚で! しばらく預かってて欲しいって言われてなー、ははっ!! よし! 草取りに行くぞー!」
「草取り……? 虫取りじゃないのか?」
「そうそう! それや!」
口調まで狂ったぁ!! うわぁ!!
俺は一気に振り向き、魔王様の手を掴み、走り出す。
やらかしたー! やらかしたー! 普通に説明した方が、まだ、マシだったぞ。
「はぁはぁ……」
家から、少し距離があるところまで来た。
俺は、そこで立ち止まる。
「お、おい。あいつは誰だったんだよ」
「あれは……俺の父だ」
何で、帰ってきてんだよっ! 出張で当分いないんじゃないのかよ!
月一くらいで帰ってくるのだが……って、あれ?? 毎月、これくらいの日に帰ってきていたような……。
母親よ! 帰ってくるなら、そうと言ってくれ!
「お、おい……。それって……」
「かなりヤバいな。今日の探索は辞めて、説明をするための作戦を考えよう」
「よし。じゃあ、家に帰ってゲームをしながら……」
「事の重大さに気づけ! 家には帰れない。作戦をしっかり考えてからだ」
「しょうがねぇなぁ……」
「お前はバレたのが俺のせいだって言いたいのか!?」
「お前の不注意もあるだろ……?」
む、ムカつくが事実だから何も言えない!
「と、とりあえずだ! 作戦を俺なりに考えてみた」
無かった事にするかのよう、話を切り替える。
「お前の……」
「もういいわ!」
「許してやるが、俺の作戦から聞け!」
「お、おう?」
珍しく、やる気だな。
作戦が終わったら、のんびりゲームが出来るからか?
「まず、俺が魔法を使って、記憶を操……」
「却下。だって、最近めちゃくちゃ不調じゃないか」
魔王様は落ち込むように、その場に崩れ落ちていた。
まぁ、俺の作戦を伝えやすくなるし、好都合か。
「そのままでいいから作戦を聞いてくれ。まず、お前は今から俺の友達の親戚だ。
何故か、知らないけど、手違いで一週間。俺の家で暮らすことになったことにする」
「そ、そんな作戦、成功するのか……」
と、地面を這いながら死にそうな声で聞いてくる。
「でも、、その……俺が意味の分からない言い訳をしたせいでだな……。あと、クローゼットの中以外で過ごせるチャンスかもしれない……ぞ?」
「うおおぉ!! その作戦乗った!」
魔王様は這っていた体を一気に起こす。
……正直、遊びに来てただけだと、信ぴょう性が薄いと思ったからな。俺の態度のせいで怪しいし。
だったら、親になんて話そう……。って、悩んでた。で済むからな。
その代わり、この作戦にはデメリットも多いのだが、まぁいいだろう。
「よしっ! じゃあ、早速、家に帰るぞ!!」
魔王様。『脱クローゼットの中』になった途端、テンション高いな。
俺達は家の前まで、歩いて戻ってきた。
ゴクリ。と、息をのみ引き戸を開ける。
「た、ただいまー」
「おい。さっきはどうしたんだ?」
「実はな……この子」
と、話を進める。
「そうか。そうか。なら、この家に一週間くらい暮らしても大丈夫だぜ!」
「ありがとうございますぅ!」
「や、やけに声の低い子供だな」
「気にするな。傷つくだろ」
父よ。失礼だから、耳元でも、そんな事を言うなよ。本当の子供だったら、どうするんだ。
「おーい。この子も暮らすってよ」
「急ねぇ。まぁ、いいわよぉ」
この母親も母親で、緩っ、緩っだな!
俺、こんなに穏やかじゃねぇし。家系違うんじゃないか!?
と、いうわけで友達の親戚として一週間、魔王様はこの家で普通に暮らすことになりました。
……魔王様へ対する、食事のためのお金と労働力が減る!
……やったぜ!