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元、チート魔王が頼りない件。  作者: 雪見だいふく
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魔王様『中編』

怖すぎる……。

 ……意味が分からない。俺はいつから幻覚が見える程に頭がおかしくなってしまったのだろうか。


『何故、俺がこんなところにいるのか説明したいのは山々だがとりあえずこの乗り物から降ろしてくれ』

「乗り物じゃなくてそれは犬な」


 と、俺は蚊みたいな大きさの自称魔王様に人差し指を突き出す。

 乗れということを理解したのか人差し指にひょこんと乗っかる。


『よしっ! 話をしてやろう!』


 こいつは何故こんなにも上から目線なのだろうか。親指を人差し指に乗っけてぶっ潰してやろうか。


「……潰すぞ」

『いや、ちょっ。ま、まぁ待てよ! これを聞けばお前も気が変わるからさ』

「何だよ。言ってみろよ」

『俺はあのままだと力を失った挙句、魔界ですらない地上で死ぬところだった……。そこでだ。お前の願いを一つだけ叶えてやろう』


 願いって……こんな小さいヤツに何が出来るんだよ。しかも自分で言うのは何だが割と今の人生には困ってないんだよな。

 友達もいるし、頭だって悪くないし、運動神経も良い。顔はそこそこだがイケメンになりたいとも思わない。チヤホヤされるのは面倒くさそうだしな。


『そりゃあ。強欲の人間だ。何かあるだろ? イヒヒヒヒ』

「無いです」

『またまたー!』

「無いです」

『本当に?』

「無いです」


 俺はそう言うと人差し指に合わせていた自称魔王様をガタガタしている歩道の上に置き右手を上げそのまま去っていった。


『ちょっと待ってくださいよ! お願いしますぅ』


 しつこいやつだな。と、思いつつも自称魔王様を見るために歩道でしゃがみ目を凝らしてみる。

 すると、自称魔王様は泣きながら土下座をしていた。


「はぁ……」


 こんな泣いてるやつを置いていけないよな。そう思い俺は再び指に合わせる。


『ありがとうございますぅ』

「……だから泣くなって!」


 人差し指から手汗が異常に出ているかのように涙で溢れる。

 ……仮にこいつが本物の魔王様だって言うんなら威厳が微塵の欠片も無いな。


 その後は自称魔王様と話しながら家まで帰った。得られた情報は「詳しいことは後で」と有耶無耶にされてしまったため大したことは聞けなかった。

 分かった情報としては魔界の魔物が勇者に虐められて困っている事と日本語が喋れるのは微かに残った魔力による意思疎通か何かのようなもので話せる。と、いう事。

 そして魔界に行くためには夜中の方が良いので一時頃に起き、外に出なくてはならないという事だ。


 家に入ると引きずっていた足とここぞとばかり汚した制服を心配されたが俺は何とか言い訳をし誤魔化した。

 風呂に入り用意された夕食を食べ終わり部屋に戻る。


『お前ん家の母ちゃんの飯! 美味そうだっなー』

「そうか? いつも通りだぞ。あんなの。ところでお前は何か食べなくていいのか?」

『魔界に戻った時に食べるからいーって! 魔界の住人は胃袋がこっちの奴らとは違うから一日一食でも全然余裕なんだよ』

「そっか……」


 この後は特に話すこともなく。

 一時頃、外に出るための用意。

 はぁ……行きたくないけど、あそこまで頼まれたらなー……。

 断りにくいし一回行くだけなら……いいよな?

 俺はそう思いながら、勉強やゲームなどで時間を潰し遂に時刻は十二時五十二分を指していた。


「そろそろか……」


 と、俺は用意したリュックサックを肩に担ぐ。

 ちなみに中身は念の為の食パン。一応、武器としてナイフを持った。その他には中学三年の修学旅行時バックと同じなのでゴミやハンカチが入っているだろう。


「そろそろ行くか……」

『ぐごおぉおぉー』

「って、寝てんじゃねぇよ!」


 と、机に置いておいた自称魔王様を叩く。と、言っても本気で叩いたら余裕で潰れるので人差し指で軽くツンなのだが。


『うわ……! っと! よし行くか!』

「……お前が寝てたんだけどな」


 俺が自称魔王様に指を差し出し手の上に乗せる。自称魔王様から、とりあえず外に出ろと言われたので親にバレないよう。慎重に階段を降りる。地味に鳴るミシミシ音がまた恐怖を煽る。

 なんとかバレないように玄関まで来たが油断は出来ない。

 この扉は引き戸なのでガラガラガラという音がしてしうのだ。

 その音を最小限に抑えるようにして何とか家の外に出る。


「ふぅ……」

『よっしゃ! ナイスだぜ。ここからは俺の案内に従って動いてくれ』


 俺は言われるがまま痛い足を引きずり歩き始める。暫くすると長年過ごしている俺でも分からないような所に階段があった。


『ここを登ってくれ』


 数十段ある階段を淡々と上がる。

 階段を上った先には小さな神社があった。小さな鳥居に小さな賽銭箱。

 五歳ぐらいの子供に丁度いいような大きさだった。

 こんな所いつ出来たんだ……? ずっとこの田舎に住んでいたが全く分からない。突然出てきた。それこそ怪奇現象のような。


『その賽銭箱に五円玉を入れてくれ』

「は……!? 聞いてないぞ? 持ってこいなんて」

『しょうがねぇなぁ……』


 と、体には見合わない五円玉が自称魔王様の頭上に出てくる。意思疎通とかで話してるせいか魔法か何かのそれに対して違和感を覚えなかった。


『これを入れろ。感謝しろよな?』


 ……五円玉をドヤ顔で渡してくる方に驚きを隠せないわ。

 そう思いつつも五円玉を賽銭箱に落とすようにして入れる。


『お前はそこで手を合わせてろ』


 そう言われたので普段お参りをするように目を瞑り手を合わせる。

 すると自称魔王様が異国の言葉か何かを突然ぶつくさと唱え始める。

 俺に何か黒紫色っぽいオーラが纏っているのが分かった。

 最後の言葉なのかは分からないが突然大きな声を出す。

 すると俺はワープしたという表現が正しいのか見た事もないような薄暗い場所にいた。岩で出来た柱があったり赤い絨毯が敷かれていたり……それは魔王城という表現が正しいような場所だった。


 俺は戸惑い、キョロキョロと目線だけで辺りを見渡していると、俺の前方に一つの光が照らされる。

 光が照らされ姿を現した椅子はキラリと輝き、王様が座るような風格を感じさせられた。


『この姿は初めてかな?』


 その声が聞こえると明かりが照らされている部分に大きな影が映る。

 そこから出てくる大きい人……いや、頭に角を生やし大きな尻尾をもった化け物が出てきていた。

 髪はパーマがかかったようなボサボサ頭の黒髪。地球上にいたら中二病と迷わず言われそうなマント。に漆黒が似合いうな翼。

 ほとんどが黒! 黒! 黒! の化け物は……そう。さっきまで蚊のような大きさだった自称魔王様が俺の身長を優に超え、2メートルはある魔王様になっていた。

……でかっ!

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