気にして損した
……疲れた。
俺達は無事、家に帰った。……のはいいんだが……これからどうしよう。
日の上がり方を見るに、まだ、午前だ。
それなのに、俺の服はこんなにもボロボロ。
服は汚れ、傷付き。
履いてきた、ジーンズに関しては、この前の砦と同じように切れている。
何て言い訳をしよう。
ダメージジーンズ作ってきたんだぜ!
それは怒られるだろ。この前の砦の時も一つ、切ってきたばかりだし。
一人で考えても、なかなか、いい案が浮かばない。
とりあえず魔王様を置いてきてから考えるか……。
俺は慎重に扉開ける。リビングの方からテレビの音が聞こえてくるので、母はリビングにいると予想できる。
なら、今がチャンスだ。
『魔王様。行くぞ!』
俺と魔王様は急いで家に入り、階段を上る。
そして、部屋に入る。
「「……ふぅ」」
「よし。バレずに帰ってこれたな! 俺はとりあえずシャワーを浴びてくるから、バレないように部屋で待っててくれ」
「俺もシャワーを浴びてーよ!」
「その気持ちは分かるけどさ……親がいなくなったら入っていいから。な?」
「……はいよ。お前には、今日、迷惑をかけたからな……」
「ま、まぁ。その辺は気にすんなよ」
俺は他にかける言葉が見当たらず逃げるように部屋から出ていった。
……しょうがないよな。疲れてるんだし。気にすることは無いのに。
少し、落ち込む魔王様に対して不安を抱きながらシャワーを浴び、部屋の前に立つ。
ちなみにジーンズ以外の衣類は洗濯に出した。
でも、ジーンズはどうすればいいのか分からないので、そのまま持ってきてしまった。
持ってきても、どうにもならないのになー……。と、後々後悔したが、洗濯機まで、また、出しに行くのは面倒なので、もう捨てる方向でいいだろう。
……ふぅ。入るか。
こんなに自分の部屋が入りづらいなんてな……。
俺が部屋に入ると魔王様の姿は無かった。
おいおい……。気にして、いなくなったとか言わないよな?
ずっと、魔王様という立場でエリートだった。
だからこそ悔しいのは分かるが、いなくなるのだけは辞めてくれ。
念話してみれば近くにいるか、いないかだけは分かるよな……。
『おーい。魔王様ー! どこにいるんだー?』
『あー、クローゼットの中だよ』
あれ……気にしすぎただけか?
思ったより、楽そうにしてるじゃないか。
俺はクローゼットを開ける。
ピコピコピコ
「この、ゲームってやつは楽しいな!」
……気にしていた俺が馬鹿だったみたいだ。
魔王様は黙ってゲームをしていたので、そのまま放置することにした。
そして、違う私服に着替えた俺はリビングに降りて、昼食を取り、魔王様の飯を買いに行こう。と、バス停前のベンチに座って待機していた。
いつもと違い、自転車じゃ無いのは、ただ単に疲れていただけだ。
魔王様の元気が無いから美味いものを買っていこうと思っていたが、その必要性も無くなったからな。
俺は、そろそろかな。と思いスマホで時間を確認する。
すると、残り五分ということが分かった。
「暇だなー……」
俺は基本、スマホのソシャゲはしない。
だから、こういう時は本当にすることがないのだ。
ぼーっとし、目を瞑る。
寒くなければ、このまま眠ってしまいそうだ。
「……」
「うわっ!? 何で、お前がいるのっ?!」
隣から、良く聞く声。
いや、胡桃の声がした。
「お前こそ何故ここに!?」
少し暇だったから『嬉しかった』なんて言えるわけがない。
「インドアのお前が外に出るなんて……」
「いや、俺だって外に出るぞ!? 失礼な!」
「ぼっちってことは……何かしらの店に行かなきゃいけないって感じかな? やっぱり遊ぶ約束とかではないんだね」
「っせぇ! そういうことを言うな! ていうか、お前だって一人だろ……」
「え? ……そんな事ないよー! お前とは違いますー! 私は『あっちの子』と遊ぶの」
「あ、え、あはは。そうだよなー」
さすが人気者と言うべきだろうか。
LIMEの友達が一桁台の俺とは違うな。補足だが、別に好きで追加していないだけだ。
本当ならLIMEの友達なんて100は余裕で超えててもおかしくないんだからな!
「ふふーん! 私とお前の違い! 分かったでしょ」
自慢気な顔でそんなことを言われてもなー……。
「はいはい。胡桃は凄いですよー……っと」
胡桃はムスッとした顔でこちらを見つめてくる。
「ごめんごめん」
「ふふっ。別にいいよー」
俺が謝ると笑顔になる。
単純なやつだ。まぁ、そこが良いところなんだけどな。
それからも歓談を楽しみ、暇だなー。と、思っていた五分後きっちりにバスは来る。
さすが、田舎のバスだ。時間には絶対遅れないな。
「じゃあ乗るか」
「うん!」
俺達はバスに足を運んだ。
二人でバスとか、いつ以来だ?