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元、チート魔王が頼りない件。  作者: 雪見だいふく
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砦探索『前編』

魔王様……不調やな。

 魔王様は、とりあえず現実世界に戻るために詠唱を始める。

 そして、変な感覚と共に現実世界に戻ってくる。


「「うわぁぁ!」」


 安定していないためか、激しく戻ってきてしまい、思いっきり壁から投げ飛ばされるようにし地面に叩きつけられてしまう。

 痛かったのも、あるが驚きで声を上げてしまう。


『……おい。会長にバレたかもしんねーじゃねぇか!』

『ごめんな……』


 短い付き合いではあるが初めてだな。こんなに暗い魔王様。

 魔王様なだけあって、腕には自信があったからか……?


『まぁ、元気出せって。もう一回してみれば良いだろ。な?』

『恩に着るぜ……!』


 これで……少しは元気が出たかな。

 再び、魔王様は小さな声で詠唱を始める。

 そして、今回はいつもと同じ不思議な感覚と共に魔界にやってくる。

 映像がだんだんと安定する。



『……?』


 俺達がワープしてきた先は学校の教室だったのだ。

 それも、俺達の教室と形状が全く同じだ。

 前後に大きな黒板があり、鞄などを入れるロッカーが後ろにある。

 教壇に戸棚。どれも一緒だ。

 ただ、一つ違うことは教室の主役ともいえる、椅子と机が中央に一つずつしかないのだ。

 そして……机の上には一輪の花。

 窓から見える景色は何も無い。ただの暗闇。


 でも、それ以外は現実にそっくり。魔王様、また中途半端な所にワープしたんじゃないか?


『し、失敗か……?』


 少し気まずそうに、俺は呟く。


『いや……それは無いな。今は力が無いとはいえ、魔界とあっちの世界の区別はつく』

『そ、そうか。なら、いいんだけどな』


 つまり、学校の人間って事じゃないか……?

 教室が砦の中の形状として現れるなんて……。


『おい……魔王様。今回の砦、学校の人間の可能性が高くないか?』

『俺もワープした時、そう思った。お前、大丈夫か……? 知り合いだったら辛くなったり……』

『安心しろ。覚悟は出来てる。知り合いだったら話をして済ませようぜ。な?』


 と、笑顔を飛ばした。


『おう。お前を選んで正解だったぜ!』


 魔王様も俺に笑顔を返してくれた。

 その笑顔だ。魔王様らしく頑張って貰わなきゃなんだからな!


『で、何も無いし、とりあえず教室から出るか……?』

『そうだな』


 俺達は扉に手をかけ、横に開く。


『ここは無事に開いたな』


 そして、廊下に出る。

 が……何かが違う。廊下は、ただ細長い道になっていて、他には教室も何も無い。あるのは見える景色が真っ暗な窓だけ。

 殺風景な廊下だ。


『な、何も無いな』

『とりあえず歩いてみないか』


 と、言い始める魔王様。

 俺的には、前回の教訓を生かして考えてから動きたいけど、魔王様が言うなら仕方ないよな。


『そうだな』


 俺達は何も無い道を黙々と歩き始める。

 歩き始めて数分が経つ。

 前回の砦も同じだったよな……また本人が迷ったりしているのか?

 俺はそう思い、魔王様に話そうとした、その時。

 光が見えてきた。その光はトンネルから抜け出すような光だった。


『あそこに何か進展があるんじゃないか?』

『だな! 早く行くぞ!』


 魔王様は走り出す。俺もそれに付いていくように走る。


 ……!?


 そして、光の先にあったものは『図書室』だった。

 図書室と、いってもこれまた全然違う。

 何列もある本棚に入っている本は全て金色に光り輝き、椅子。机。窓枠。全てのものがゴージャスだった。

 先程までの殺風景な景色とは正反対に風雅な所だった。

 そこに全財産を賭けているとも思えた。


『お、おい……。お前らの学校の図書館はこんなにバカ広いのか?』

『そんな訳ないだろ……。俺だって驚いてんだぜ』


 さっき何列もと話した通り、おかしいくらいに広いのだ。

 何列もなんてもんじゃない。何十列も……だ。


『マジで狂ってんだろ……。俺は本が大嫌いなんだよ!』

『ま、まぁ、どんな理由があるのかは知らないが、落ち着けって』

『う、うぅ。おぇ。。何か気持ち悪くなってきたぞ……目も痛いし……』


 そうなのだ。どこにも日が入っていなかったのに、この部屋の窓からは天使が降りてくるかのように光が入ってきている。

 それに、この本を筆頭とした物の輝きだ。

 眩しくないわけがないだろう。


『と、とりあえず本を見ないか? 何か手がかりがあるかもしれないし……』

『嫌だ……本は嫌いだ!』

『わがまま言うな!』


 と、俺は魔王様を引っ張って連れていく。


『う、うぅ。怖いよぉ……』


 図太い声のまま魔王様はそう言ってポロポロと泣き始める。

 声のせいで、全く可愛くないから辞めてほしい。

 だが、俺も魔王様と契約を交わしたが鬼ではない。


『分かった。分かった。敵が来ないか、そこで見張っててくれ』

『あ、ありがとぅ……』


 苦手なことがあると、魔王様はここまで弱くなるのか。

 勇者達は盾じゃなくて、本を装備すればいいんじゃないだろうか。

 俺が正義の味方だったら、そう教えてあげたい。

 ……変な事を考えてないで、しっかりと本を探すか。


 そう思った、俺は手前から二番目にある本棚に足を運ぶ。

 そして本棚の目の前に立ち、更に驚きが隠せなくなった。


 ……高さも異常な程にある本棚だ。


 つまり、本も異常な程にあるのだ。

 この中から、手がかりを探すって……無理だろ!

 そう思いつつも歩いて回るような形で、この列の本を見て回る。

 ミステリー小説や恋愛小説、ライトノベルなど様々な種類があった。俺の知っている作家なんかもいた。


 本好きにとっては天国なんだろうなぁ……。


 回りながら、そう思っていると一際目立つ本があった。

 それは……闇のオーラというか勇者とは似ても似つかないような黒いオーラを纏っていたのだ。

 それこそ、俺と魔王が契約した時の様な……。


 俺は気になり、その本の目の前に立つ。

 背表紙には切り刻まれのか何も書かれておらず、周りに置いてある綺麗な本と違って何度も何度も読まれてあるのが、手に取らなくても分かる。


 ……手に取ってみるか。

 そう思った、俺は本に手を触れた。

手に触れさせて大丈夫だよな……?

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