日常2
あー……眠い。
キーンコーンカーンコーン
六時間目の終了を伝えるチャイムが鳴り響く。
眠そうに机の上でぐったりとするもの。部活が始まる! と、気合を入れるもの。帰りの支度をそうそうに進めてしまうもの。
人それぞれだった。
俺は、これから魔王様の飯を買いに行かないといけないので、どちらかと言うと早く準備を進めていた。
準備を済ませ、窓の方を見て外の景色をぼーっと眺めていると終学活が始まる。
聞く意味もない話なので、ただただ前を見ていると「起立」と、いう声が教室に響く。
俺もその合図で立つ。
「「「「さようなら」」」」
よし……。早く今日室から出るか。
忍の如く、誰にも気付かれないくらい慎重に教室から出ると、今日は胡桃も早く家に帰るのか、廊下を全力で走っていた。
それを追って走ると何か不自然かなー……。とも思ったので学校から出るまでは歩くことにした。
まぁ、それが普通なのだけど。
何事もなく学校から出る。
すると、既に胡桃の姿は無かった。
……早いな。
どこに行ったのかは、少しだけ気になってしまうが、魔王様の飯を買いに行くため、すぐにチャリをまたぐ。
そして、チャリをこぎ始める。
最初の下り坂が凄く気持ちいい。
風と一体になる感じがたまらない。
そして、その下り坂で付けたスピードを生かし、猛スピードでスーパーまで向かう。
ちなみに駅などがあるのは右側の通路だ。左側に行けば、すぐにバス停がある。
こぎ続けると、案の定、スピードは段々と落ち、だるくなってきたが、この一本道をまず、抜けなくてはならない。
そして、数十分すると、一面田んぼからトンネルの暗い景色へと変わる。
その、トンネルを抜けて坂を下り、もう一つのトンネルを抜けると、少しは増しな街並みが見える。
車は多く走り、人も多い。
施設はスーパーや病院だけでなく、多少ながらに飲食店もある。
ゲーセンやカラオケなどの遊戯が出来るところもあるのだ。
……自分の住んでいるところが如何に田舎かを感じさせられるな。
まぁ、そんな戯言を言っていても仕方ないので一番近くに見える大きいスーパーに向かう。
人が多いだけあり、チャリをこいで……と、言うわけにはいかないので手で押して進む。
こういう所は田舎でよかったと痛感させられる。
そして、人混みを抜けて、少し広い場所に出た、すぐそこがスーパーだ。
車も多く止まっており、一階建てではあるが、かなり大きく、食品なんかも充実していた。
一年前から来ていないので、今はどうか知らないが。
スーパーに入り、俺が真っ先に向かったのは惣菜コーナーだ。
炭水化物から揚げ物まで幅広く置いてある。
まずは主食からだ。
魔王様はおにぎりが好きかパンが好きかを考えた時に洋好きっぽい感じがするのでパンを選びに行く。
そして、パンを手に取ろうとした時、俺はある言葉を思い出した。
『初日から贅沢をさせるな。段々と上手くしていけ』
どこかのペットか家畜か何かの、あれだったと思うが、その通りだ。
最初から、普通のパンを買っていってどうする。
財政が厳しくなってから、安いものにすると、これは嫌だ。と、駄々をこね始めるかもしれないだろ。
そう思い、手に取りかけていたパンを掴むのをやめて店内にあるパン屋さんへ向かい、パンの耳を貰うことにする。
「あのー……パンの耳って貰えますか?」
「すみません……ここはそういうのしてなくって」
うわあああ!!
恥ずかしい!
「そ、そ、そ、そうですか。ですよねー……はは」
俺は、そのパン屋さんから、すぐに撤退し普通のパンを選ぶ。
『ザキヤマパン』
と、書かれた六枚切りのパンを手に取り、おかずも一つ買ってやろうと何かしら選ぶ。
んー……コロッケでいいよな。コロッケパンにもなるし。
その中でも一番安い、一つ三十円のコロッケを袋に入れてレジまで持っていく。
人は並んでいたが、すぐに自分の番になる。
「……が一点、税を合わせて合計、154円になります」
安っ!
俺は少しだけ重い財布からお金を取り出し渡す。
……この分なら、バイトをしなくても良さそうだな。
上機嫌な俺は、買った商品をカゴに入れて、家まで帰ろうと、自転車を手で押し人混みに入った、その時……。
町中を歩く、胡桃の姿が見える。
こんな所に来て何してんだ……?
呼んで、何をしてるのか聞こうと思ったが人が多いこの場で声を出す勇気なんてものは俺になかった。
段々と胡桃は離れていき見えなくなる。
……帰るか。
俺はぼちぼちと家に帰った。
ガラガラガラ
「ただいまー」
家に入り、向かうは部屋だ。
部屋を開けると、俺のベットで漫画を読む魔王様がいた。
「この漫画、面白いなー!」
「親がいる時はクローゼットに入ってろと……」
「まぁまぁいいじゃねぇか!」
「はぁ……。まぁいいか。飯、買ってきたぞ」
「おおっ! 何だ何だ?」
「えーっと……」と、手で袋からザキヤマパンとコロッケを取り出す。
「ちょっと……待ってろよ」
コロッケパンならソースと皿、それに箸を持ってきた方がいいからな。
「今から作るからな」
「おおっ!? 何をだ! 何をだ!」
俺は皿にザキヤマパンを乗せ、その上にコロッケを箸で半分に切り二個とも載せる。
「で、このソースってやつかけるか?」
「かけてみたいな!」
「おけ」
俺はソースを開け、コロッケに適量かける。
「おまたせ」
「?」
魔王様はポカーンとしていた。
何でだろう。
「ほら、食えよ」
「お前があれだけ得意気に言ってたからさ。もっと……その手順のある何かを……」
「わがまま言わずに食え!」
この魔王様は初日でもわがままを言うみたいだ。
魔王様。美味しそうに食ってんじゃねぇか。