一
※《建康実録》の『東興戦後、諸葛恪が丞相に昇進した』という説から派生して、
『張悌を抜擢したのは諸葛恪』
という説を前提としています。
※三国時代、特に孫呉関係は私にとって中国史ジャンキー化の入り口だったので、全体的に妄想が酷い。
※正史やその他史料:演義や小説系統:My設定や妄想=3:2:5ぐらい(自分でもよく解ってない)
※筆者が三国志関係者で一番好きなのは諸葛恪です(最重要)
※表題のBaldrは『バルドル』と読み、北欧神話の神の名です。
三国志(特に孔明死後に詳しい孫呉ファン)なら『バルドル 北欧神話』で検索すれば
この先の展開(『バルドル』が誰なのか)があっさり読めると思います。
むかし、遠い北の地を治める一つ目の神に、愛してやまぬ長男がいた。
彼は光を司る神であり、最も賢明で、最も美しかった。
弁が立ちながら、慈悲の心を持ち合わせ、
正義と真実、そして平和を愛した彼の調停には有能な部下が補佐をしたため、
誰もが頷き、不平を言うものはいなかった。
彼は、誰からも愛され、また、戦を愛する父神との調和をも期待されていた。
***
「――― 先程、滕承嗣殿に『年が明けたら魏を攻める』と仰いましたか」
張悌は、先程自らの上司が発した言葉を聞き間違いで或る事を祈りながら、問うた。
「ああ、相違ない。最も、賛同は得られなかったがな」
上司―――この度東興での大勝によって新たに丞相を加官された諸葛恪は、子飼いの部下に応えた。
「恐れながら、承嗣殿の意見も最もです。先帝陛下の喪は明けてもおらず、臣民共に戦の疲れが抜けていません」
「疲れが取れるのを待っていたら、向こうも回復して、またやって来るだけだ。今行くしか、我等の途は開けぬ」
これ以上の説明が必要か?といった面持ちで彼を見据えると、張悌は、頷いた様に首を下げた。
――― 口上でこの人に勝てる人は、この国にはいない。
舌先で何人もの同僚や使者をやり込めてきたのをこの目で見ているし、
他の上司からの話では自らの主君達さえもその舌鋒で丸め込んだ事は一度や二度ではなかったらしい。
そしてこの人は決して舌先三寸だけの人間ではない。
若い頃には、殆ど戦わずして四万の山越を得、魏との戦績もかなり良い方である。
だからこそ先帝陛下はこの人にこの国の行く末を託したのだろう。
しかしながら、である。
この人は余りに他人を省みなさすぎる人だ。
自らに才が有り過ぎて、対等以上の者が一人もいない。
常に上方から他者を見ている。
誰よりも有能でありながら、誰よりも危うい人なのだ。
***
張悌がその場を去った後、諸葛恪は俄かに激しく咳き込み、それはしばらく続いた。
「……急がねばな…」
諸葛恪、実は三国志関係者で一番好きな人物だったりします。
前半の頓智系策士から一転、悲劇の独裁者ですよ?え、その解釈はおかしい??
ワタクシ、コーエーSLG三國志10の
253年シナリオ表題《遺志継ぎて孤将独り力戦す》を、
素で諸葛恪の事だと信じてやまなかった人種ですよ??
(『孤将=姜維』と気付くまで3分ほどかかりました、ええ)