2章 01.悪魔の力の代償
エルヴァンさんに領主になってと頼まれて、3日がたった今、俺はとある少女と勝負していた。
どうして、勝負なんかしているのかというと、今から昨日あったある出来事のせいである。
俺とティアは赤銅から、貰った領主の屋敷の掃除をしていた。そんな時、屋敷の扉を叩く音がし、俺は扉を開けた。そこに立っていたのは、茶髪ショートの美少女だった。俺はどうしたんだろうと思い、話しかけようとしたら、美少女の方から話しかけてきた。
「あなたが、この街最弱だけどレベル7の日本人と戦い勝利した、セイドウ ユヅルさんですね。私の名前は、リリアーナ。あなたは、エルヴァンさんに領主になってと頼まれていますよね。」
「それが、何?後なんで日本人の事を知っている。」
「私があなたに勝ったら領主の座を私に譲ってください。後私が何故日本人の事を知っているのか。その事を知りたいなら、私に勝ってください。勝てたら教えてあげましょう。」
めんどくさ、こいつ。どうしよう。
「日本人の事は教えなくていいし、領主の座も譲るから帰ってください。ごめんなさい。」
俺は面倒なことは嫌なので、帰らそうとした。
「そういうわけにはいかないのです。約束してしまったのです。エルヴァンさんにユヅルさんに勝てたら領主の座は譲ってもらいますって、だから明日の夕方この街の闘技場に来てください。絶対来てください。」
そう言って、俺の返事も聞かずに帰っていった。
俺、絶対に負けるんですけど。俺武器持ってないし、俺冒険者のレベル1だし、何故かスキル欄から
【神の時間】がなくなってるし、もうこれ絶対負けるだろ。
「ユヅルどうしたの。そんな顔をして。私が出来ることなら何でもするから。ほら、何があったか話してみて。」
「勝負を挑まれてしまった。どうしよう、ティア。」
「がんばって、私を助けた時みたいに相手に勝ってね!」
そんな、可愛い顔されてもなぁ。
もし、俺が負けたら、ティアはがっかりするんだろうなぁ。 ったくしょーがねーなぁ。
で現在に至る。俺は鍛治スキルを習得し、屋敷にある、工房で俺に合うように短刀二本と短剣を作り武器二本装備しながら戦うためスキル【二刀流】を習得した。これで勝てん勝ったら知らん。
あの時は【神の時間】を使っていたから、勝てたけど、リリアーナの実力はわかってない。
悩んでても仕方ない。赤銅と同じ作戦で行くか。
リリアーナは俺が仕掛ける前には、もう俺の懐に潜り込んでいた。俺はそれになす術なく俺はリリアーナに刺された。痛い、痛い痛い痛い。
でも、ここで倒れるわけにはいかないのだ。
ここで倒れたら、ティアはがっかりする。
だから、俺はある一つのスキルを使った。
【悪魔の力】というスキルだ。
【悪魔の力】とは一定時間悪魔の力を自分のものにするという、単純なスキルだ。でも今はこれにすがるしかない。
【悪魔の力】を使った俺は、暗闇にいた。誰もいない。否、いないのではない、見えないのだ。見えない何かが、俺に話しかける。力が欲しいか?と俺は、欲しいと応えた。その瞬間俺は現実に戻り、暴走した。否、暴走したのではない、それを俺が望んだのだ。めんどうなことばかり、俺に降りかかる。その事が嫌だった。だから、望んだのだ。
それで、 俺はリリアーナを一瞬で倒した。なのに、スキルの効果が切れない。俺を止めようとした人たちを次々になぎ払った。俺は、守りたいと思っていた少女、ティアさえもなぎ払った。
俺はその瞬間、動きを止めた。俺が何をしたのか、理解したのだ。少女は泣いていた。
俺は、自ら自分で少女を泣かしたのだ。俺が止まっているその隙にティアは立ち上がり、俺を抱きしめ、「戻って来て、ユヅル。」と言った。
スキルは解け、俺は意識が現実から引き離された。