08.エピローグ
だるい、重い、体が痛い。
体が言うことをきかない。
ダメだ。動かない。神の時間はこんなにダメージが溜まるのか、そんな事ユスティーナさんは言ってなかったのに。
体が動かないけど、体の感覚はある。
後頭部には柔らかく温かい感触が、前頭部には、誰かに撫でられている感触がある。
ティアだろうな。いつからしてくれてるんだろう。足痺れないのか。このまま膝枕していて欲しいが、さすがにずっとしてもらうのは、申し訳ないので、起きる事にした。
俺は重い瞼を開けた。そこには、心配そうな顔をしたティアがいた。
「おはよう、ティア。」と俺は挨拶をした。
でも、ティアからは返事がない。
「もしかして、怒ってる?」と俺は恐る恐る聞くと、
「どうして、私を助けるの?私は奴隷で、しかも世界を滅ぼせる兵器なんだよ。そんな私をどうして助けるの?」とティアは言った。俺にはどう返していいかわからなかった。でも、考えるよりも先、「ただ、助けたくて助けただけ。俺たちは仲間なんだから。それに、ティアの母さんに言われたからな。娘を助けてって。それだけの事だ。」
「私を助けるってことは、魔王達と敵対するってことなんだよ。私を助けてもユヅルには、何一ついい事がないじゃない。」
「いい事はある。ティアとこれからも一緒に居られる。これだけで俺は魔王達と敵対する事が出来る。」
「ありがとう、ユヅル。私を助けてくれて。私こんなに嬉しいこと、産まれて初めて。」
「いいってことよ。さぁ、ギルドに帰ろうぜ。ルーラさんが待ってる。」
俺は重い体で立ち、ティアに手を差し出した。
ティアは何もいわず俺の手を掴み立ち上がり、俺の後ろをずっとついてきた。
ギルドに着き、ギルドに入った俺たちは、冒険者の皆に歓声をあげられていた。
冒険者の人達は、「ヒュー、ヒュー、ギルドに手を繋いだまま入ってくるなんて。羨ましいじゃねぇか。」
俺とティアはずっと手を繋いでいたことを、言われて気づき慌てて、手を離した。
そんな、俺たちの前にルーラさんが歩いてきた。
「 ユヅルさん、ティアさんを連れ帰ってきてありがとうございます。」と感謝された俺は、気分が良くなっていたところに、俺はある人に呼び出された。その人は、領主を除き、この街の住民の1番偉い人の、エルヴァンという人だ。
「あなたには、この街の領主になって頂きたいのです。この街には、あなた以外に領主になれそうな人がいないのです。」とこう言ってきた。
こんな事を言われている俺の後ろで、ティアとルーラさんは泣きあっていた。
こんな事普通あり得るのかよ。
俺はただ普通に冒険したいだけなのに。と言って、神になるとか、魔王達と敵対するって言っていたことを、すっかり忘れていた俺だった。