ポーツマと銃
今日はパパンにお客さんが来ていた、コンド社の営業さんとウェスター社の営業さんが同時に、ライバル社らしく玄関で鉢合わせしてしまってすごい睨み合いながら客間でお待たせしている。
「ちっ! ヘナチョココンドが領主様に何様だよ」
「はん! ヘタレウェスターこそ何か用なのか? まさか領主様にお前のとこのヘタレリボルバーを売りにか?」
「そっちこそ領主様にヘナチョコライフル売りに来たんじゃないだろうな!」
さっきからこんな感じで罵しりあっている。ちなみにコンド社とウェスター社はこの大陸で生まれた魔導銃の製造会社で只今シェアを争ってるライバル社同士である。私としてはリボルバーと呼ばれる拳銃の方が使いやすいのよね、ライフルと呼ばれる小銃は今の私にはまだまだ扱いづらいのよね。そうなるとリボルバーを売りに来たコンド社に心動かされるのだけど、そうそう魔導銃ってのはね
魔導銃
アストランデは既に剣の時代は終わりを告げ、時代は銃の時代に突入していた。地球の銃は火薬等を使用して弾頭を発射するが、アストランデの銃は火薬等の部分を魔力が占める。
魔導銃は地球で使用する銃火器等と違い使用者の魔力に応じてその威力が変動する。弾薬に相当する部分に魔力を込めるのだが、この魔力を込める時に必要なのが強い魔力とそれを制御する力で、魔力をただ込めると暴発する可能性があり暴発させない様に的確に制御出来る量しか魔力を込められないために威力の大小は込める単純な魔力とそれを制御する事が術師の力に大きく依存するのだ。
しかし最近の先端技術で作られたリボルバーは制御の部分を大きく補助できる様になり扱いが楽になり、素人にも扱いやすく、ライフルは威力の部分で補助があり、そのおかげで未熟な使い手でも一定の威力を出せる様になる。
こうして拳銃であるリボルバーと呼ばれる商品と、小銃であるライフルと呼ばれる商品は全く使用する環境が違うので今回営業に来ているコンド社とウェスター社は競合することは無いのだが
「うちの商品に勝てるわけないだろうが!」
「あん! 勝負するかこのボケが!」
とこの様な不毛な争いはする必要が全くないのよね。でもウェスター社がライフルをうちの領軍に採用して欲しくて来るのは分かるけど、コンド社のリボルバーなんて別にうちにまで営業に来るものなのかしら?
私も護身用に拳銃の扱いを覚えたいけど、流石に五歳児の私に使わせてくれるわけないしな
「お嬢さま、そちらにいては旦那様のお仕事の邪魔になりますから、こちらに来て下さい」
「そうね、わかったわケイン」
うーん、コンド社の狙いが知りたかったけどここは大人しくしておくか、しかし既に銃が広まってる世界なのね。怖いわね、でもだからこそ使える様にしとかないとね。
レイラは銃の恐怖を知っていたが、それ以上にその力を知っていた。今の幼い自分でも大の大人を倒す事が出来る銃と言う力、その力はこの世界で生きていくために必要な力でもあった。
「おおすまんね、わざわざ来てもらって、ちょうど君たち二社のどちらかに頼みたい事があってね」
おや? どうやら営業に来た会社はパパンが呼び出したのか、ならコンド社が来てもおかしくないわね、 ああパパンの部屋に入っていってしまったわ。まあいいわ早く行かないとケインもイライラしてるし
「それではお嬢さま、今日は歴史の授業を始めますね」
「あい!」
私は元気よく片手を上げて返事をする、私の可愛さに教師もメロメロに違いない
「はい、いつも元気があって良いですねお嬢さま、それでは今日はポーツマのお話でも」
今日は私が住む街の歴史を教えてくれるらしい、確かにポーツマの出来た経緯は気になるからちゃんと聞くか
「それでは、ポーツマの始まりは」
ポーツマ
ポーツマはアスタリ大陸の東海岸の沿岸部、その中でもかなり北側のエリザ帝国に直線距離で一番近い港町となり、アスタリ大陸での産物をエリザ帝国に運ぶ為の重要な都市となっている。
アスタリ大陸はエリザ帝国が存在するヨール大陸では取ることのできない作物や鉱物を輸出していてエリザ帝国民で一旗上げてやろうと思う帝国民が多数移住しており、その移住者の多くがポーツマに居住、もしくは別荘等を置いており現在アスタリ大陸最大の街となっている。
ポーツマはエリザ帝国、そしてヨール大陸に存在するその他の国々と膨大な取引をする事によりその存在感を増していき、エリザ帝国にとって重要な場所になっており、エードルセン家がそこの領主として管理を任されている。
うーん、アスタリ大陸ってヨール大陸の各国が植民地にしてるのかと思ってたけど、全ての権限をエリザ帝国が持っているのね。ヨール大陸の情報があまり無いから軽々に判断できないけどエリザ帝国とヨール大陸の各国とは隔絶し難い程に国力に差があるのかしら? 家庭教師に質問してもエリザ帝国民の教師だから客観性に欠けるのよね。
まあアスタリ大陸の主要産業が鉄鉱石や銀などの鉱物資源と、茶葉や麦などの大規模農作物なのよね。パパンがもっと効率的にそれも大規模に物資を運ぶ方法を模索してたけど、鉄道的な物はまだ発明されてないのね。私が作れば大儲けできるわね、よし作ろう私の鉄道会社を! エリザ帝国との関係が気になるけどイギリスだと思えばやりようはあるはずよね、多分アスタリ大陸全土を支配したと言ってもまだまだ未開拓池は大量にあるはずよね、そこを上手く使えば……いける、イケるわ! 私の覇業は始まるのよ、前世で政治なんかに手を出したのが間違いよね、今世では商売よ、この時代の求める需要は大体分かるわ、そうよ、私にはこの世界には無い知識があるの、うふふふ
教師はいきなり変な笑い方をするレイラにドン引きしていた、一生懸命ポーツマの歴史を教えているのだが後半部分なんて全く聞いてない様に見えた、だけど領主の娘に強く言える程に彼は強い教師では無かった、なので
「それではレイラお嬢さま、今日のお勉強はここまでとしておきますね」
「あい!」
あら終わったのね、今日はまあまあ有意義だったわ。さて鉄道を作るのは決定としてもそれを作る為にパパンに出資させるか、どうだまくらかそうかしら?
レイラの目的は金儲けであるが、この時決心した鉄道開発が彼女にとって大きな助けになるとはこの時は思いもしなかったのだった。