レイラとアステリア
黒羽瑞稀の男の趣味は少しだけ特殊だった、それは
「やっぱり年下、しかも生意気な子供みたいな男がいいわ、そんな男が私だけに甘える、うふふ」
みたいな事を考えていたのだが、彼女に言い寄ってくるのは禿げたおっさんか、禿げてないおっさんしかいなかった。
はぁ、私の前世は最悪だったわ。だって私の周りにはおっさんしかいなかったんだもん、最低でも大学生よね。
レイラは前世の男運のなさを思い出しながら今世の男運の良さに感動していた、何故なら
「領主様のお子様ですか？ 可愛いですね」
「きゃい！ きゃ、きゃ」
「あらレイラは人見知りをしないのね」
「本当だな、将来大物になるかもな」
両親の呑気な反応とは裏腹にレイラは両親、いやこの場合は父親にだろうが、父親に会いに来た男達に釘付けだった何故なら
はぅ、なんなの、なんなのよこの世界、イケメンしかいないの、今日来た子なんてハリウッドスターも顔負けのイケメンでしかも十代の少年、あー神様ありがとう、私この世界で幸せになります。
神の本当の意図を知ればそんな言葉絶対言わないのだが、今のレイラにはこの世界が天国にしか思えなかった。レイラがこの世界に生まれてから少し経つとこの世界の情勢と言うものが朧げながら見えてくる、彼女の見立てでは
まるで独立する前のアメリカみたいね、奴隷とかも居るけどそれよりも商人と言うよりかはこの地で成り上がりたい的な人々が多い気がするわね。お父様で良いのかしら、私の父親も本国とやらから派遣された役人らしいし、話を聞く限りは出世競争に負けたみたいだしね。
まあそれでも勝ち組に入れるくらいには家格があるみたいだし、正直お見合い結婚だとしてもお父様の部下はみんなイケメン、年上でも渋めの大人の男なら我儘は言わないわ。でも出来たら年下が良いけどね。
生まれたばかりのレイラの希望は未だ影も形もない男らしい、ちなみに今の彼女のお気に入りは屋敷で働く丁稚のケイン君１２歳の男の子らしい
見た限り独立のどの字も無いみたいだし、このまま街の領主の娘として生きて行くのが一番幸せね。だんだん前世の記憶がはっきりしてきたから、その記憶を使って商売しても良いかも、奴隷が居るなら無理に結婚しなくても、うふふ逆ハーなんてのも可能なのよね。はぁ夢が広がるわ
彼女は現在のアステリアの現場を知らない、彼女が生を受けた港町であるポーツマは奴隷と言ってもエリザ帝国産の奴隷であり、人権みたいな物もある程度は保障され、賃金も支給されるしその賃金を貯めて主に申し立てを行えば自分を買い戻す事も可能な、まあ唯の雇用主と労働者の関係をより労働者に不利になる様になった程度である。
しかしアステリアで最も主要な奴隷はアステリア産の、そう現地の人を無理矢理隷属させ、そこには人権も、いや人としても扱わない見るに耐えないほどの扱いを受けているのだ。
早い話が彼女が見ている独立が起こり得ないとの判断した状況は全くの見当違いであり、ポーツマから一番近い街ですら現地人との絶え間無い争いが続き、エリザ帝国側の人達ですら高い税により奴隷落ちしていた者が多数おりエリザ帝国への憎しみを増加させていた。
独立の気配はすぐにでも大陸を呑み込み、時代のうねりとして世界へと広がるだろう、だが独立までにいかない決定的な理由があった。それは道しるべである。
アステリア全土の人口は１億二千万人程度（奴隷含む）で対してエリザ帝国は二千万で単純に戦争を行えばアステリアの勝利が間違いない様に思われるが、それは数字上の事だけで物事は終わらない。アステリアがエリザ帝国に勝てないのは何故かと言うと、まずエリザ帝国の二千万の人口の質である。エリザ帝国二千万人は農業を行わない、工業を行わない、するのは支配である。
エリザ帝国での労働者とは奴隷落ちした者ですら無く、各世界に派遣した軍隊によって手に入れた領土に住む現地人、まあ奴隷であり奴隷落ちしたエリザ帝国民は比較的楽な仕事をするだけのなんちゃって奴隷でしか無い。つまり奴隷に労働を押し付けた二千万の人達は殆どが支配階級の仕事、公務員、軍人、経営者などをする。そして軍人だけでも五百万人が常時勤めており、最大で投入できるのは予備兵などを投じて一千万であり、アステリアの人口がエリザ帝国をいかに圧倒してようがアステリアが用意出来る兵士は良くて五百万、それも訓練も何もしてないそれどころか栄養状態も不満足なガリガリの奴隷である。
更に言えばアステリアは一つの国では無くエリザ帝国の様にちゃんとした政府も存在しない、現地人も数百人規模の集落ばかりで仲も良いとは言えず、それがエリザ帝国に支配されている理由でもある。
そんなアステリアをまとめる存在がいなければ永遠に独立する事はないだろう。
ケイン君は整った顔してるしポイント高いんだけど、私の適齢期になったらもうおっさんよね。はぁ、どうして人は年を取るのかしら男なんてみんなショタでいいのに
彼女が立ち上がらなければアステリアの未来は無いのかも知れない
おっ！ ケイン君が転けたわ、しかも泣くの我慢してる！ 可愛いわ〜、うふふ
立ち上がらなければ、このアステリアは
あっ、お尻が破けて桃色の様なお尻が、きゃー！
まあともかくレイラが成長しない事には始まらない、とりあえずレイラちゃんの成長を願う事にしよう。
