ジョンの事情
ジョンポール、彼が西部に流れたのはレイラが生まれるずっと前になる。
「我が艦隊がエリザに負ける、あり得ないな」
彼はその時代に最強と呼ばれたスパルと言う国の艦隊司令官の任を若くして任される英傑であった。
「しかし妙です、エリザ艦隊の動きは、まるで我々の行き先を知っているかのような」
「うむ、どこからか情報が漏れているのか? 仕方ない、一応船員を調べるか」
ジョンも確かに感じる違和感にすぐに行動を移すのだが、既にチェックメイトはなされていた。
「いえ司令官、その必要はありませんよ」
「どう言うことだ、ゴズ!」
すぐに船員の調査を指示しようとした所にゴズと呼ばれる男が入ってくる。
「いえね、こう言うことです」
ゴズは銃を構え躊躇することなく撃つ
パン! パン!
鳴り響く乾いた炸裂音、その場にいた参謀が撃たれて倒れ、そして腹から血を流すジョン
「な、何を」
「司令官、あなたは優秀です、そして若い」
ゴズは倒れてるジョンに近づきジョンの顔を踏みつける。
「あなたさえいなければ私が司令官を務めていました。お前さえいなければな!」
「ぐお!」
ゴズは怒りに満ちた顔でジョンの腹を蹴飛ばす
「エリザは私になかなかの椅子を用意してくれました。流石に艦隊司令官までは無理でしょうがこれからのエリザ一強の時代を考えれば満足出来るものです」
「ゴズ、きさま!」
「ふふ、今日、無敵と言われたスパルの艦隊は無残に敗れます。そしてその責任は今から死ぬあなたになることでしょう」
ゴズは銃を再度ジョンに向ける、そこに
「司令官!」
「なに!」
撃たれて倒れていた参謀がゴズに体当たりをして押し倒す。
「お逃げ下さい、この場は」
パン!パン!パン!
「ぐふ!」
「邪魔をするな、クソが!」
「司令官、お逃げく、だ、さ」
パタリとゴズに覆いかぶさりながら倒れる参謀
「すまない」
ジョンはその場から逃げる。
「くそ! お前達ジョンを捕まえろ、いや殺せ!」
ゴズが叫ぶ、その叫びを聞いてジョンは悟のだ。
『くそ、この船の船員はあいつの手下か』
ゴズはこの日の為にジョンが乗る指揮艦の乗員全てを息のかかったエリザへ寝返るものばかりにしていた。
「くそ!」
ボチャン!
「海に逃げたぞ!」
「撃て! 生かすな!」
ジョンが落ちたであろう場所に何発もの銃弾が浴びせられる。
そしてジョンがいた場所が赤く染まって行く
「やったか」
ゴズが合流してくる。
「はっ! この通りです」
「ふむ、これでは生きていまい、よしよくやった」
この日、無敵艦隊と呼ばれたスパルの艦隊がエリザに負ける。既に陸上戦力で最強の名を轟かせていたエリザが名実共に最強の国に躍り出た瞬間であった。
そして戦死者の中に若き英雄ジョンポールの名があった事にスパルの栄華が終焉した事を市民達に認識させるのだった。
そしてジョンは
「おい、おい大丈夫かあんちゃん!」
落ちた海が陸に、いやアスタリ大陸に近かったのが幸いしたのか、それとも皮肉なのか彼は
「おい来てくれ、怪我人だ」
「なんだ、大丈夫か」
アスタリ大陸へ向かうエリザ帝国商人の船に助けられアスタリ大陸に上陸するのだった。
『ここは? 俺はあの時』
ボーっとする頭でジョンは考える、知らない部屋で包帯をぐるぐる巻きにされて生きてる事を認識するまでに数秒の時間がかかる。
『そうか、俺はエリザに負けたのか』
彼は戦いに負けた事を実感する、エリザ帝国艦隊のトップ、ジョージ公爵はありとあらゆる謀略を使い敵を搦めとる事を得意とする男、有名であった筈なのに注意を怠ったのは間違いない失策
『ゴズが俺を少なからず憎んでいたのは分かっていたのにな、まさか祖国を裏切ることまでするとは』
完全なる敗北、ジョージ公爵を憎いのは憎いがそれよりも
『見事な手だジョージ公爵、完全に俺の負けだ』
そこで初めてジョンは悔しさから涙を流す、自分は艦隊戦すら行う前に負けてしまったのだ。
「これからどうするか」
そしてひとしきり泣いた後、彼は今後を考える。しかし彼は自分の状況がどうなっているのか理解出来ていなかった。そこに
「あっ? 起きました」
一人の女性が入ってくる
「ああ、君が助けてくれたのかい?」
「いえ、あなたを助けたのはこの町の商人さんですよ、いきなり血だらけのあなたを連れて来て助けてやってくれって」
ジョンがいるのはアスタリ大陸にある貿易都市の診療所、その一室
「そうか、その商人達に礼を言わねば」
「それはそうですが、まだ寝てて下さい、もう3日も寝ていたのです。まだ回復しきってませんからね」
「ああ、すまない」
ジョンは大人しく眠る、これからの事はまだ考えられなかった。




