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アステリア建国記〜私が大統領になった訳〜  作者: にんにん
第二章 決闘する幼女!
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ベンジャミンとの対話

 「まずはこれを見て下さい」


 「これは!」


 私は鉄道の設計書を見せる。


 「これは鉄道というものでしてね、馬車のそうですね……十倍のスピードは出るでしょうか、それに運べる貨物の量は馬車の比ではないでしょう」


 「こんな物がか?」


 「ええ」


 あらあらかなり疑わしい目で見るわね。


 「見た所魔導の類が無いし、こんなやり方でこれほど巨大な物が動くとは思えんが?」


 「魔導? 何を言ってるのですか、これは魔力を使いません」


 「なに、魔力無しでどうやって動かすのだ」


 「蒸気の力で」


 「蒸気だと」


 そうこの世界で動力源と言えば魔力、そして機械と言えば魔導系のものばかり。単純な機械仕掛けのものは、全く発展してこなかった。だから目の前の人物も鉄道の動力がなんなのか全く理解できてない、これじゃ盗賊の方が「それで動くのかすげ〜頭!」って言ってる分柔軟な考えよね。


 「この世は魔力だけが力では無いのですよ、火も魔力以外でも燃えるでしょ、まきとか」


 「それは、しかし蒸気とはあの湯気だろ、湯気にそこまでの力があるとは」


 「知らないのなら仕方ないのですが、蒸気機関自体はヨール大陸に既にありますよ、確かスルスの蒸気ポンプは地味に活躍してますよね」


 「スルスにそのようなものが? しかしこの設計書通りならとてつもないものが出来るはずなのにエリザ帝国にこのようなものは」


 「無いですよ、彼らは頭が硬いですからね。魔導力以外の可能性の研究をしていない、例えばこの銃ですが」


 私は魔銃をテーブルの上に取り出し説明を続ける。


 「これはかなり優れた武器と言えますがあまりにも使い手の能力に依存し過ぎてる」


 「そうだろうな、だが魔導具とはそういうものだろ」


 私は一つの弾を取り出し


 「ベスターさん、これは火薬を用いた銃弾です」


 「火薬?」


 「火をつけたら爆発する薬ですね、それは誰が使っても同じ現象が起きることになります」


 「さっきからなにが言いたいんだ君は?」


 「僕がさっきから言ってるのは科学の力です。そして科学の力は全ての人々に平等に与えられる。先ほど説明した鉄道は作ってしまえば馬車のような維持費に金のかかる金持ちしか使えない物ではなく、沢山の人が利用できる移動手段になる、だって馬車と違い運べる量が桁違いですからね。

 それに火薬を用いた銃であれば、威力と言う点について言えばその辺の赤子が使っても、魔の才が全く無い一般の市民も兵士となりうるのです」


 「お前まさか」


 「鉄道は大量の兵士を運べます。


 そして火薬を使った銃は、この大陸全てのものを兵士に出来る」


 もちろん女子供まで兵士にしようなんて思わないし、今まで魔導適性が低過ぎて魔銃をろくに扱えなかった人々が対象なんだけど、我ながら少し恐ろしいわね。


 「それが可能ならエリザとの戦力差は無くなるどころか」


 「上回るでしょうね」


 私の作戦は単純、相手より沢山の兵士を投入して圧倒する事。


 「だがほとんどの者は素人、いくら武器があると言っても」


 「まずは違う目的で集めるべきですね、そうですね風の踊り子なんて盗賊退治はどうですか? 彼らとの実践に近い演習は訓練にもってこいでしょね」


 「なるほどそう言うことか、西部の盗賊まで傘下に置くとは末恐ろしい子供だな」


 「いえいえ、ただ」


 「分かってる、人間だけでは戦力が足らないのだろう?」


 「現在最も奴隷を抱えてるのは南部です、その南部の地域の地主から奴隷を解放して戦力にする」


 言ってて無茶だと思うが、何とか道筋を見つけないと


 「確かに南部の奴らは大量に奴隷を持っとるが、別に他の地域とて奴隷は持っとるぞ。他の地域の奴隷はどうするんだ?」


 「北部は奴隷に執着するより税の事に敏感な商人や工場などが主流、エリザからの独立の利を説けば八割はこちらに引き込める自身はありますよ」


 「後の二割は?」


 「欲しいのは兵士です、ご協力出来ないのであれば、それなりの対応を」


 「ふぅ、本気? の様だな、本当に恐ろしい子供だな。

 だがそんな動きを見せれば流石のエリザも放っておかないぞ」


 「分かってます、だからこそ西部はエリザに取って利益のある事を見せてカモフラージュをしなくてはなりません、その概要はこちらに」


 「ふむ、西部に港を? そして鉄道を使い輸送の柱にか」


 「ベスターさんにこの鉄道計画の責任者としてエリザと交渉していただきたい」


 「これが私に会いたかった理由かね?」


 「【これも】ですね」


 「これも、か、はぁまだ本題があるんだね」


 「既に鉄道の汽車と西部の大部分に線路は敷きました。そしてそれを東まで繋がるのは来年には完成できると睨んでます」


 「ああ」


 「正直言いますとここまでは貴方がエリザ側に立っても構わないと思ってお話しさせてもらってます」


 「だろうね、と言うことはこの先は」


 「貴方の返事を聞いてからになりますね」


 「ここで断っても鉄道の整備だけは話をつけろ、そう言うことかな?」


 「ふふ、カリフォの町にとって確実に利益をもたらしますからね」


 「そうだな、本国に予算を勝ち取ってきてみるよ」


 「ありがとうございます」


 「そして独立の話をされたらされたで、君は違う動きでエリザを倒すんだね」


 「ええ、まだまだ隠し事は多いですからね」


 「そうか鉄道は来年には完成する、返事は早い方が良いんだね」


 「ええ」


 「分かった、ならば私ベンジャミン=フランクは君の元に降ろう、そう独立の為にね」


 「そう言ってくれると思いました、この部屋を見て確信しましたもの」


 この部屋、ベンジャミン=フランクの部屋は質素そのもの、贅沢なんて物は何も無く積まれた書類の山は彼の真面目さが浮き出た様な光景だった。


 「恥ずかしいね、では君を王として考えて良いのかい?」


 「いえ僕の考える、この大陸に出来る新たな国は王政ではありません」


 「ほぉ、もしかして議会制か」


 「議会は作りますが、その代表者に貴族を当てる訳ではありません」


 「まさか民主制を」


 「それが一番独立戦争を戦う上で最良の政治体制ですね、この大陸の人々は王様ってきらいですから」


 「確かにな、そちらの方が兵士志望は多くなるだろう、だが上手くいくのか?」


 「最初はゴタゴタしますよ、でも明確なビジョンがあるし、そう持っていく様に種はまいてますから」


 「もしや他の町で?」


 「三人ほど町長が変わっている町が存在しますよ」


 「そうか」


 「テキス、ロロス、ネダの町の今の町長はとても人気がありますよ」


 「そうか、あやつらはプライドばかり高い貴族だったからな」


 「僕の予定では後四年後に独立宣言をしたいと思います、それ以上伸ばすとこの大陸が戦う力が完全になくなってしまいますから」


 「だろうな、既に東部はエリザに逆らうなんて気概は無いだろうし、奴らの兵器の向上具合は近年眼を見張る」


 「それにヨール大陸自体も安定し始めていますしね」


 エリザ帝国は世界一の国だが、それでもヨール大陸にはエリザ帝国に対抗する国々は複数存在し、その国々が他の大陸に植民地を求めて争っているのだが、その争いがそろそろ一段落つきそうなのだ。


 「他の国を牽制するための兵力をこちらに向けられる前に、そう考えると最長でも6年しか無いでしょうし、こちらの準備を整える事も考えれば四年後が最大のチャンス」


 「そこまで読むか、本当に子供なのかね」


 「さぁどうでしょう? ではベスターさん、本題に入りますか」


 「今までのは本題ではなかったのかね」


 「ええ、さっきまでのは予定です、そして今から話す事は今からやる事ですよ」


 「なるほど、今からか」


 ここから一週間後、ベンジャミン=フランクは鉄道の設計図を持ち東海岸のエリザ帝国領事館に向かい、総領事であるコーンウォリスに会いに向かうのだった。



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