ベンジャミン=フランク
カリフォの町
西部に置いて最大級の町であるが、あくまで西部のロール大陸の移民達の町で最大であり、西部には彼らが蛮族、亜人と呼ぶもの達がカリフォの町に定期的に敵対的な行動を取ることもあり東側と違い困窮していた。
そこが狙い目、正直今は西部の土地から税収なんて望めないしエリザ帝国からしてみれば開拓出来ればめっけもんぐらいにしか考えてないから結構大胆に動いても問題ない、風の踊り子の討伐隊が編成されない時点でほぼほぼ西部の独立の動きは隠せるわ。
と言っても人間とエルフ、ドワーフとの仲の悪さはちょっと問題よね。なんとかエリザ帝国憎しで共闘する様に持って行きたいけど、今の所私に賛同してくれたのはゼロ、それも話し合いのハの字も出来なかったわ。折角部族のお嬢さんを何人も助けてあげたのにな!
露骨過ぎたかしら、目が疑惑の色を強めてたものね。確かエリザ帝国の移民が来た時は最初の滅茶苦茶友好的にして、向こうさんも仲良くしようとして来たのに気が付いたら虐殺、それもエルフのお姫様を攫って、脅迫して、その要求を呑んだのにお姫様をヨール大陸に何処かの貴族のお嫁さんにしたそうよね。ポカホンタスか! ってね。なんで人間て次元を超えてまで似たことしてるのかしら?
まあ確かに私なら警戒心を解かないわね、いくらこんなに可愛い子供でもね。
でも説得はしないとな、ここだけは力でいくと間違いなく失敗するのよね。はぁー、悩むわ、本当に悩むわ。
でもまずはカリフォを手に入れないとね。
「デビット様、ここが町長の家ですわ」
「ありがとうアリザさん」
「いえ、父も感謝すると思います。あのまま盗賊に捕まったら私どころか、この町も……」
悲しそうな顔をするのねアリザさんは、確かにあの馬車に積んでた物を奪われたらこの町に待ってるのは死だけだものね。だからこそ貴女が向かった、絶対信頼出来る自分の娘を送る。ここまで疑心暗鬼になってるのね西部の人々は
西部の現状はかなり厳しい、これは定期的な亜人との闘争と合わせて町の中に溢れる無法者達、この世界にある冒険者とか呼ばれるギルドに属する荒くれ物達。エリザ帝国のあるヨール大陸で冒険者ギルドの信頼はとても厚い、しかしアスタリ大陸に存在する冒険者ギルドは正直力を持った無法者でしか無く、依頼を平気で反故する者も少なくない為信頼を置いて物資の護衛等を頼めないのだ。
「良いんですよアリザさん、僕は困っている人を助けるのが趣味みたいな者ですから」
「ふふ、この時代に変わった趣味なのね」
こうして町長のいる部屋に案内される。そこに少し頭皮が薄くなっている初老の男性が居た。
「アリザ、無事だったか?」
「はいお父様」
「それで、その子供はどうしたんだい?」
「お父様この方は私を盗賊から救って頂いたデビット様ですわ、ほら最近有名になって来た空の狩人の」
「ふむ、そうなのか」
あら、完全に疑ってるわね、まあ、当たり前だけど挨拶はしないとね。
「お初にお目にかかりますカリフォの町の町長よ、我が名はデビット=エードルセン。話があって来た」
「えっ?」
アリザさんがビックリしてる、まあ子供がいきなりこんなに喋り方したらビックリするか、でも私にとってはこのチャンスを無駄に出来ない
「話かね、いきなりだね、えっとデビット君だったかな」
「ええ、私の話を聞いて頂きたい、それがカリフォの町を救う手立ての一つと思いますよ」
「なに」
ふぅ、いきなりギロリと睨んで来たわ、この町長さっきから私の事を蔑まない、子供だと思っていないような雰囲気すらあるわ。
「どういう事かなデビット君、カリフォの町を救うとは」
「そのままの意味ですよ、僕の考えに賛同するかしないかでこの町の運命は良くも悪くも変革を求められるでしょう」
「それは大きく出たものだね、しかし私がその話を聞く気があると思うかな? いきなり来た子供の戯言を」
「ええ、何故なら僕の話にロロスの町、ネダの町、アルゾの町、そしてテキスの町が賛同してますから」
「なんだと!」
レイラが語った町の数々は西部に置いてかなりの力を持った町である。いや西部の人間の領域は既に彼女の手に落ちたとみても良いほどに、だがその町の全てを合わせてもカリフォの町に勝てない、それほどにカリフォの町は大きかった。
「まあ今言った町は町と言っていいのかと言えるほど小さい町ですから大した事ではないかも知れませんが、この町は違う!」
「うむ」
「僕の目的の為には貴女の協力が必要なんですよ、ベンジャミン=フランクさん」
「貴様わしの名を知っておるのか」
この町の町長の名を知ってる、それのなにがおかしいのか、それは
「おっと今はベスターさんでしたか」
「おぬし何者だ?」
ベンジャミン=フランク、その名はエリザ帝国では少しだけ有名であった。いわゆる落ちた貴族、その昔社交界でジョーイ公爵夫人に恥をかかせた、まあイチャモンに近いレベルだが、その為に西部開拓を命じられた可哀想な子爵
「言ったでしょ、デビット=【エードルセン】だと」
「貴様エードルセンの縁者か!」
さて私の正体を少しばかり明かしたのは賭けよね、ベンジャミン=フランク、彼はジョーイ公爵を強く憎んでる。だって愛する女性をその権力で奪われて、しかも理不尽にこの大陸に左遷された男ですもの。
独立よりジョーイ公爵を追い落とす為と言う方が良いか、予定通り独立で押すか悩むわね。
「さてどうですかな、まあジョーイ公爵は嫌いですよ、貴方と一緒ですかね」
私は少し暗い雰囲気を出しながらベンジャミンの前に座る。彼を一気に叩き込まなきゃ
「アリザ、お客様にお茶をお出ししなさい」
「えっ? えっと」
「早くしなさい」
「は、はい」
あらあら娘さんを追い出したのね、しかしこれで私と完全に話し合う気ではいるようね。
「さて君は女性と認識していたがな、レイラ君」
あら、バレてるの、なんだ家の事結構知ってるのね。
「今はデビットですよベンジャミンさん」
「私もベスターだ、レイラ君」
「「はは」」
お互いが乾いた声で笑う。
「ベスターさん、貴方はこの大陸の現状をどう思いますか?」
「どうとは?」
「単純な事ですよ、この大陸で戦争が起きるって事ですよ」
「ふん、ありえんな。誰と戦うんだ」
「ふふ、分かってるでしょエリザとですよ」
ベンジャミンは動じる事なく私の目を見つめる。
「夢想としか思えんな、この大陸の者がエリザと戦えば死人の束しか出来ん、誰がそんな事を」
「したでしょ、ポーツマでは」
「!」
「分かってるでしょベスターさん、ポーツマで起きたのは抗議の意味が大きい物だったが、それでも領主は殺された」
「それは、しかし直接エリザを攻撃した訳では」
「現状のこの大陸はかなりヤバイ状況ですよ、エリザ帝国からのありえない税の取り立て、そして逆らう者を見せしめに行われたポーツマの事件」
「…」
「ほっといても独立革命を起こそうとする者は間違いなくいます、そして待ってるのは」
「エリザの一方的な虐殺だろな」
「ええ、現状の戦力でエリザに太刀打ち出来るわけが無い、ですが」
「ですが、か貴様には勝つ方法があるとでも」
ベンジャミンはそんな事あるはずないと思っていた、しかし目の前の少女は
「ありますよ、僕がエリザ帝国ごときに勝てないとでも」
ベンジャミンは驚いていた、目の前の子供の戯言、そう戯言なんだろうが何故だろう、その目は確信に満ちたものだった。
「お茶をお持ちしました」
そんな中でアリザがお茶を持って来たのだ。二人の話はまだ終わらない。
ストックが切れました。ここから毎日更新は出来なくなります。出来るだけ更新頻度は多くしていきたいですがどうなるかちょっと分かりません。申し訳ありません。
今後もアステリア建国をよろしくお願いいたします。