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ポーツマ茶会事件

 「領主を殺せ!」


 「俺たちの怒りを示すんだ。そうすればこの大陸の人間は立ち上がる」


 「不当な皇帝からこの地を解放するのだ!」


 この時叫んでいたのは元はエリザ帝国民もしくはヨール大陸の国々の人間であり、彼らの叫ぶ人間とはアスタリ大陸の民では無く自分達と同じヨール大陸から流れた移民であり、彼らの目的はアスタリ大陸の全ての利権であった。


 「お嬢さま、この館に暴徒達が領主軍が来るまで持ちません。お逃げください」


 ふむ、ケイン君の焦りようを見るに、確かに逃げなきゃダメだろうけど


 「パパンとママンは」


 「旦那様達は既に安全な所に」


 うーん嘘ね、恐らくパパンもママンも暴徒を抑えるために出てると見るべきね、そしてその結果は……

 くそ! 完全に見誤ったわ。アメリカの独立前っぽいと思ったのならこうなる事を予想しとくべきだった。そうすればパパンを上手く誘導して暴動を起こす前に市民を説得もしくはパパンの味方に引き込めたかもしれないのに。


 レイラは焦っていた。このままでは確実に両親は死んでしまう、しかし現状自分に出来る事は何も無かったからだ。


 どうする、正直パパン達を助けるなんて事も出来なきゃ自分自身を守るのも難しいかもしれない。ケイン君の焦りようを見れば暴徒は既に領主館を囲ってると見るべき、そして逃げ道なんて


 「お嬢さま速く!」


 ケイン君はそれでも逃げれると見てるわね、もしかして隠し路なんてあるのかしら、でも無駄ね、逃げる準備を何もしてないこの状態で隠し路を使っても厳しいわよね。仕方ない


 「ケイン、隠し路でもあるの?」


 「はい、この様な時のために準備しております」


 「そう、ならあなたはその道を使いなさい、私はやる事があります」


 そうここでただ逃げるだけではろくな人生が待ってない、それに両親だって死なせないわ。

 パパンの部屋に、領主の部屋に


 「お嬢さま!」


 私は走ってパパンの部屋に、私には必要なのよ。何故この暴動が起きたのかを、何故みんなが領主を狙うのかを


 レイラが欲したのは情報である。領主の部屋にある資料を確実に確保しそれを暴徒達には渡せないし渡したくない、これは領主一族として私がしなければならない事


 レイラは屋敷を走る、窓からは無数の人々が武器を持って迫る。そして屋敷の門に待ち構える両親の姿が見える。


 「パパン! ママン!」


 やばいやばい、くそ! 暴徒の理由が分かれば私なら説得も不可能ではないはず、上手くいけば、上手くいけば!


 バン!


 さあどこにあるのかしら、暴動が起きた理由は!


 レイラは部屋をひっくり返し調べる。そして様々な資料を見てそして愕然とする。


 「無理よ、こんなの私には彼らを抑え込む言葉は見つからないわ」


 レイラが領主の部屋で見たものは絶望であった。そこにはアスタリ大陸の住人に突きつける悪魔の様な税率、これはアスタリ大陸の住人に死ねと言ってる様なものだった。


 「なんて愚かな事を、税は生かさず殺さずじゃない、こんな税率で今は良くても後々何も残らなくなるのよ」


 レイラはエリザ帝国政府の無能を嘆く、なんて政治センスのない奴らと


 「仕方ない、こうなったらパパンとママンを無理矢理にでもこの場から逃がさないと」


 そして彼女の視界にあるものが映る。


 あら? 銃か、確か前にパパンに営業に来ていたコンド社の拳銃とウィスター社の小銃よね


 それは二つの会社が持てる技術の全てをつぎ込んだと言っても過言ではない最新式の魔銃であった。


 丁度いいわ、これで暴徒達を牽制できる。


 レイラは急ぎ館の玄関に向かう、だが彼女の目の前に惨劇は既に終着を迎えようとしていた。


 うそ、なんでよ、まだ暴徒達が館に着くのは早い……


 レイラが見た光景、それは既に銃弾に倒れた両親の姿だった。


 「よし、領主の館を壊すだけだ。これで俺たちの声は大陸に響くぞ!」


 「「「「おおー!!」」」」


 暴徒達の手にある銃と言う武器、これは対話を求めた領主の言葉の届かない位置から放たれて、そして領主の命をあっさりと奪っていった。


 「おい、あそこに子供がいるぞ!」


 「領主の娘だ、殺せ!」


 この時ショックで動けなかったレイラに銃口が向けられ、そして


 パン!


 軽い破裂音が響き渡り、その凶弾がレイラへと向かう


 あっ! 私はまたこの武器に殺されるのね。


 レイラは自らの失策を嘆く暇もなく、その凶弾をただ見つめ死を待つだけだった。

 そこに


 「ぴー!」


 レイラは急に浮遊感に襲われる、そして気がつくと遥か天空にいた。


 「えっ? なに」


 「ぴー」


 「イース君、助けてくれたの?」


 「ぴー」


 そうだと言わんばかりに鳴くイース、この鷲はレイラを掴み天空へと誘う、そして


 「こっちだ、お嬢さまを速く!」


 ケイン君じゃない、馬を用意してくれたの


 「よし乗せたな、行くぞ!」


 ケイン君は馬の手綱を引き全力でポーツマの街から離脱する。

 私は助かったのか


 その日起こった暴動で東ドワーフ会社は今年おろすはずだった茶葉の殆どを失う、そして最大の被害を受けたジョーイ公爵によって暴徒達は例外なく無残に虐殺された。しかし公爵の怒りはそれで収まらず責任者であるエードルセン男爵の死体を埋葬する事を許さず、海の魔物の餌にしたと言う。これがレイラの怒りを買ったのは言うまでもなく、それがレイラとジョーイ公爵の因縁になる事になった。

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