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その方法を知るものは…

 どうしてとか…訊かなければ、貴方は言ってくれないんですね。


 ただ待ってるだけじゃ駄目だと、貴方はそう仰るのですね。


 なら、僕は…――。










 「皆がこうして集まるのって、約七百年ぶりだよね」


 光が嬉しそうに笑った。


 そして、表情をきりっと引き締めた。


 八津、奈津、玖珂魅、菊乃、明継、夏目、樹、あやめも同じく表情を引き締めて、我が主を見つめた。


 光はすぅと、息を吸うと瞳を一旦閉じて、すぐに開いた。


 その瞳には過去の痛みが色濃く出ていた。


 何に苦しんでいるのだろうか、この人は。


 何を隠して笑っているのだろうか、この人は。


 八津は光を寂しそうに見つめていた。


 そして、その八津を奈津は辛そうに見ていた。


 だが、見られている側は全くその視線に――その想いに気づかない。


 だから、全てを見通せる後ろで樹は、一方通行でなかなか交わらない双子を表面上何の感情も映しださずに見守っていた。


 「あのね、皆にはまた鬼狩りをしてもらいたいんだ」


 光は何のよどみのない口調ではっきりとした声で言い放った。


 光が発した言葉に八津は『別の方法で鬼を吸収する』といったのは嘘だったのかと、僅かに目許を険しくする。


 だが、それを見越していた光に一笑されて、鬼を殺すわけではないと理解すれば一瞬にして八津の険しさは消えていき、その優しい顔には安堵の表情が広がっていく。


 「八津、僕はもう誰も傷付けたくはないんだ。出来れば穏便に事を済ませたい…と、言いたいところだけど、それはやっぱり無理、みたいだ」


 「何故ですか?」


 夏目が目を丸くして、光に問うた。


 光はクスリと笑うと、奈津にその二人にしか解らない含みのある一瞥を投げかけた。


 桃宮を纏める主の視線を受けた瞬間、びくりと奈津の体が跳ねた。


 「どうしたの?」


 八津は実弟の僅かな異変に気づいて、そっと気遣わしげに声をかける。


 「…なんでもないよ」


 無理に作り笑いを浮かべて、奈津は言った。


 八津はその返事に納得していない様子だったが、まぁ奈津が何でもないというのなら、自分には関係のないことなのだろう…そう思うことにして、深く追求はしなかった。


 自分の様子に興味をなくしてくれた兄にほぅと、安堵の息をつく。


 自分の些細な異変に気づいてくれた兄を嬉しく思うと、奈津の表情は果てしなく緩んでいた。


 「もう、いいかな?奈津君。その顔のニヤケはまぁ、許してあげるけど。大事な話の最中なんだから、気持ちはしっかり締めて切り替えておいてね」


 兄に心配されたと嬉しそうに笑っている奈津に光が微笑ましげなからかいを入れた。


 それを受けて奈津は、まだ少しニヤケは残るが、極力表情を引き締めるよう試みて、話を聞く態勢に入った。


 それを確認して、光はようやく本題を持ち出した。


 「で、話は戻るけれど、皆が知ってるのは八人の鬼を吸収…取り込むことで僕の中の怨嗟は多少和らぐということだよね。だけど、それ以外の方法で和らげることが出来るって、知ってたかな?」


 「僕は中に取り込むという方法しか…」


 吸収以外の方法がなければ、八人の鬼を殺すことになるという苛めがあるというのに、たった一つの最悪の方法しか知らず言葉に詰まる八津とは裏腹に、


 「…いいえ。私は吸収という方法しか存じていません」


 菊乃がきっぱりと言った。


 それに続き、記憶の糸を辿っていた玖珂魅たちも、


 「俺も聞いてはいませんね」


 「私も知らないですよ、君。樹は?」


 「俺も…知らないです」


 「我も他の方法は存じていません」


 「俺も皆と同じです、光」


 と、ニコニコ笑う光の前で首をひねる。


 唯一『知らない』と口にしなかったのは奈津だけだった。


 皆の視線が自然、奈津に注目する中、奈津はやや考えるような素振りを見せる。


 光が皆を代表して、


 「奈津は、何か知ってるのかな?」


 と、柔らかい口調で問うのを合図に奈津は自分の考えを戸惑いがちに外に吐き出した。


 「ええ。まぁ…一応知ってるといえば、知ってますね。知識の一部として」


 その奈津の言葉に光を除く七人が皆同じく目を真ん丸くして、あからさまな驚きの反応を見せた。


 驚かしてしまった奈津はどこかバツが悪そうにしていた。

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