NVX-02concept_S〈アガナ・べレア〉
・機体データ
機体名称:〈アガナ・べレア〉
型式番号:NVX-02concept_S
主な搭乗者:ティナ
所属:革命団
生産形態:改修型専用機
動力源:ケルビムアーク
機体全高:5.4m
乾燥重量:3.1t
全備重量:4.8t
最大作戦行動時間:36時間
ジェネレータ出力:2700kW
最大自走速度:160km/h
跳躍高:12m
固定装備:改修型240ミリ電磁投射砲『ケラウノス』×2、ウィングアームユニット『アルタイル』、サブアームユニット×2
携行装備:騎士剣、騎士散銃、長距離狙撃用改修型200ミリライフル、120ミリライフル、騎士盾
・機体解説
大破した〈アンビシャス〉を、奪取した〈ファルシオン〉のパーツや、ヴィクトール領内の工業都市で開発したパーツを用いて改修した黄金に輝く装甲を持つ機体。
メンバーの中でも、狙撃を得意とするティナの搭乗を前提として設計されており、実質的にティナの専用機である。
本機のコンセプトは、「反撃不可能な距離から、圧倒的な火力での一撃必殺」、すなわち狙撃(snipe)であり、型式番号のSはその頭文字である。
専用装備として、円卓の騎士機〈ブルーノ〉と交戦した際に奪取した『光槍』を改修したレールガンライフル『ケラウノス』を装備している。
この『ケラウノス』は、元々あった、プラズマの収束、及び加速射出機能を電力の関係からオミットし、その代わりに、カートリッジ式のバッテリーを取り付けることで、前もって、3発分まで電力をチャージしておくことで、連射を可能にしている。
なお、このカートリッジは、動力炉であるケルビムアークの技術を応用したもので、高エネルギーの電荷を固定化し、瞬時に解放する機能を持つ。ただし、技術的にはかなり簡易化されている他、チャージできる電力量が少ないなどの欠点もある。
性能は、携行弾数、18発。チャージ時間、1発300秒。カートリッジ込みで連射は砲身の加熱の問題から3発が限度、レール自体も最大出力発射でおおよそ15発で使い物にならなくなる。
このため、耐用回数を超えたレール部はその都度、取り替えられる。資材の関係上、性能は多少劣化しているが、『光槍』に比べ、一つの機能に絞ったことで、取り回しや整備性は向上している。
未使用時は、背部に折りたたまれた形で固定されており、使用時は肩越しに機体前方に展開する。また、狙撃時には、頭部のメインセンサー、すなわち目の部分の装甲がスライドし、増設された複合センサーが露出する。
このほか、ティナの戦闘スタイルを考慮して、ペイロードを大きくとっており、同時に、背面に『ケラウノス』の懸架システムを含めて、6本のアームユニット、『アルタイル』を装備している。ただし、背面中央の2本は『ケラウノス』専用。
残る4本のアームは、搭乗者であるティナが使用する銃全てに対応した兵装保持機能と、簡易な指による射撃機能を持ち、手に銃を持つことなく射撃を行える。また、この他にもサブアームとしての機能を持ち、ティナが得意とする武器を適宜切り替えながら戦う『スイッチ』を補助する役割を持つ。
また、腰部には一般的なMCと同様の騎士剣の保持機構があり、脚部には大腿部に当たる部分に、『スイッチ』を補助するサブアームが仕込まれている。
重武装機ではあるが、防御という面に関しては、一切というほど考慮されておらず、貴族側の資材から入手した黄金の特殊合金を機体表面にメッキとして塗布することで、その点を補っている。
この特殊合金は、接触と同時に弾けることで、衝撃を緩和する機能をもった、簡易的な反応装甲として機能する。とはいえ、防御機構として十分とは言い難いため、気休め程度と言える。なお、金色なのは貴族側の開発者の趣味である。
以上のように、重武装化が進んでいるため、機動力が低下しているため、全身にスラスターを追加することである程度の緩和をしているが、それも十分とは言えず、後述する電力消費の問題を悪化させている。
総計8本のアームの操作、狙撃のためにより高度化された情報処理、照準機能を持つことから、高い判断力と演算処理能力を要求される。さらに、背部の6本のアームに重量が集中しているため、重量バランスが悪いという問題点もある。このため、操縦性は極めて劣悪であり、ティナ以外の騎士ではまともに動作試験をすることすら困難であった。
円卓の騎士機用のジェネレータを使っていないにもかかわらず、レールガンの装備、スラスターの増設、複数のアーム、高度化したセンサーなどを搭載したために、電力消費が非常に大きく、レールガンを使用した場合の稼働時間が極めて短いという弱点がある。
ただし、レールガンを取り外して運用することもでき、この場合は、機動力と稼働時間の低下というディスアドバンテージを改善することが可能である。
様々な機能が追加されているため、システム周りも一新されており、基本システムは〈ガウェイン〉のものを参考に開発された。ただし、照準システムやアームの操作に関しては、完全新規開発したものであり、実戦投入時には未調整の部分を多く残していた。ティナの搭乗以後、幾度か再調整を行い、操縦面の改善、照準精度の向上、重量制御の向上などが図られた。とはいえ、多少と言える程度のものであり、ピーキーな操縦特性はあまり改善されていない。
なお、背部のアームユニットが翼に見えたことから、貴族側からは『6枚羽』の呼称で呼ばれる。
・作中での活躍
『第8章 双剣 -faith in sword-』
ティナの乗機として登場。革命団とヴァンテール伯爵家の戦いに中途参戦し、遠方からの狙撃を行なっていた〈トリスタン〉を、狙撃戦で奇襲し、勝利した。その後、ジェラルド機を撤退させるが、調整不足が祟り、機能を停止している。
・元ネタ
機体名称となっているアガナ・べレア、とは、ギリシア神話において、弓の名手とされたアポロン、アルテミスの放つ矢のこと。
古代ギリシャ語で、優しい弓を意味し、放つと苦痛を感じさせず射殺す弓、の意を持つ。
また、黄金の弓を持つアルテミス、と修辞されるように、アルテミスの弓のイメージは、黄金であったが、同じくギリシア神話の月神であるセレネと同一視されるようになった後は、銀色のイメージが強くなった。
アルテミスはギリシア神話における、狩猟、貞潔の女神であり、後に月の神にもなった。
古くは熊と関わりが強かったとされ、熊の格好をアルテミスを祀る祭りがあったとされる。
また、出産に関わる女神としても知られ、地母神としての側面も持つと言われる。先述したように、狩猟の女神ではあるが、その弓は人間にも向けられ、疫病や死をもたらすものとされた。
神話の神としては幾つか物語があり、いずれの物語においても、弓の名手であるとされる。また、純潔の女神であるからか、裸身を見られた際は、激怒してその猟師を鹿に変え、50の犬に襲わせて殺したという話もある。
ケラウノスとは、ギリシア神話の主神、ゼウスの武器であり、漢字では雷霆と綴る。
天の神であるゼウスの別名の一つで、雷光を意味することから、雷の神格化であり、同時に、天の神であるゼウスの武器として扱われたと考えられる。
キュクロプスが作成したと伝わり、これを使えば、世界を融かし尽くし宇宙を焼き尽くすとされる。
形状としては、密教における三鈷杵のように両端が3つに割れた炎の槍であるとされ、投槍として扱われたと言われる。
アルタイルとは、わし座α星の名称。アラビア語で飛翔する鷲の意を表す。日本での呼び名は彦星が一般的。七夕の伝説は有名。
なお、夏の大三角は、アルタイル、デネブ、ベガと多くの人が習ったと思うし、「あれはデネブ、アルタイル、ベガ〜」などと歌われていたりもするが、この名称が国際天文学連合によって承認されたのは、2016年6月30日であり、実はかなり最近のことである。
ちなみに、承認したのは、国際天文学連合の12の分科会の、その下の37の委員会のさらにその下部の90あるワーキンググループの一つ、『恒星の命名に関するワーキンググループ』である。
・作者小話
専用機の中で、1番はじめに思いつき、なぜか、名前が決定したのが最後になった機体です。最初考えていた設定は、書いてる内にわりと変更されたりも。
発案の元になったのは、友人(夏桜羅)案を基礎とする〈ブルーノ〉で、〈ブルーノ〉が射撃装備を使う、というところから、それを奪って使った機体を、ティナの専用機にしよう、と思い至ったのが、この機体の根源とも言えます。
ちなみに、すでにお察しの方もいるかもしれませんが、作者(雪羅)はレールガンがめっちゃ好きです。電磁気学を学んで白目むくくらいには好きです。(私事)
なお、劇中で度々、上下に展開したレールが出て来ますが、本来は、レールガンは弾体またはプラズマに電流が通っている状態を維持しないとローレンツ力が働かないので、レール部は、完全に閉じられ、プラズマ等が漏れ出ないようにしないといけません。SFなので、そういったリアルの事情は無視して格好良さを追求しました。ご了承ください。
銃をいっぱい持つなら、アームだろう、という勝手なイメージで、アームを採用。ちなみに、頭の中でのイメージは、某ハイスピードロボットアクションに登場する羽レーザーです。奇しくも機体名は、本作品名と被っています。
イメージからも分かるように、かなりヒロイックな素敵性能を意識した機体になっています。
初期案ではそこまで羽羽しいアームユニットではなかったんですが、戦闘シーンを考えている内に、羽になり、貴族側のコードネームを『6枚羽』とした時点で、現在の設定にまとまりました。
『n枚羽』というコードネームは、機体が羽根つきのなった時点でパッと思い浮かんだのですが、たぶん、某国民的ロボットアニメの96年くらいに出てきた、袖を飾り付けてそうな連中の、ファンネル機の影響だと思います。
ちなみに、現実世界においては、敵対国の兵器にコードネームを付けるのはよくある話で、特に冷戦時代は東西の交流がなかったせいで、NATOがワルシャワ条約機構側に付けたコードネームが多くあります。
現在では、正式名称が明らかになっているので、混用が一般的だそう。有名どころでは、フランカー(Su-27他)、などか? なお、わりと酷い意味が多い。
ちなみに、ソ連崩壊の影響なのか、秘密主義の影響なのか、西側が秘密にしていなかったのか、東側のスパイが有能だったのかは知らないが、ワルシャワ条約機構側が、西側の兵器にコードネームを付けて呼んでたかについては、調べた限りでてきませんでした。(´・ω・`)
名前に関しては、最終的にギリシャ神話からとって、〈アガナ・べレア〉となりましたが、いいのが思いつかなくて迷走した記憶があります。
なにせ、銃のない時代に作られたのが神話や、全編を通して機体設定に大きく関わる『アーサー王物語』なので、狙撃に関わる名前を考えるとうまくいかなくて……
ちなみに、操縦が困難と書いてありますが、操縦の難易度では、〈ブルーノ〉や〈ベティヴィア〉も中々高度だったりします。
ティナは、騎士としての技量ではジンや他のメンバーに劣る部分が少なからずありますが、こういった情報処理はとても得意だったりします。(作中でもちょくちょく賢い、という描写はしたつもりですが)
ちなみに、すごく今更なんですが、重量や出力はあくまで、イメージ値です。装甲の素材等で重量は変わるし、人型兵器なんてない世の中でどれくらい出力があれば動くのかなんて正直、想像がつかないレベルで現代技術からかけ離れているので、あくまで、イメージです。科学的、軍事的観点(さすがに密度がどうこうと考えたくはないし、兵器としての概念が違うから単純比較できない)から見て、どの程度の精度かは一切保証できませんのでご了承ください。(笑)