KR-X08〈マーハウス〉
機体名:〈マーハウス〉
型式番号:KR-X08
搭乗者:アンヴェール・バージェ・ル・ヴィペール・ド・ユシュタース
所属:セレーネ公派
席次:第11席
二つ名:『静寂』
生産形態:ワンオフ機
種別:円卓の騎士機
動力:ケルビムアーク
機体全高:4.1m (偽装装備時:5.2m)
乾燥重量:2.3t
全備重量:4.1t (偽装装備時:4.6t)
最大作戦行動時間:12時間
ジェネレーター出力:4200kW
最大自走速度:120km/h
跳躍高:12m
固定装備:借り受けた鎧
専用装備:騎士毒剣『アラドヴァル』、騎士外套『ラ・コート・マル・タイユ』
・機体解説
8番目に設計が行われた円卓の騎士機。〈ガウェイン〉同様に、技術的問題から機体が開発されたのはごく最近。
他の円卓の騎士機から、様々な技術、データをフィードバックしており、基本性能は同時期に開発が進められた〈ガウェイン〉のそれを凌駕する。
このため、また、後述する専用装備の特徴もあり、作戦行動時間が極めて短くなっているのが欠点。
専用装備は、騎士毒剣『アラドヴァル』。これは、装備しているトンファー状の剣と、腰の鞘、背部に背負うクローバーの形状をしたユニットを合わせてそう呼称する。
毒剣の名の通り、この装備の本質は毒のような性質を持つ、簡易なナノマシンである。
鞘に入っているものは、剣に塗布して使用し、斬撃で付けた傷跡から装甲内部に侵入。装甲を徐々に削りながら、フレームへと浸透し、自ら信号を発することで、機体の操作信号を、阻害、遅延させる性質を持つ。
一方、背部ユニットのものは、広範囲に散布され、高エネルギー体を不活性化させる性質を持つ。これは、各種スラスター等、動力炉から直結してエネルギー供給を受けている部位から機体内部に侵入し、最終的には動力炉であるケルビムアークを停止させることが可能である。
なお、どちらのナノマシンにも言えることだが、浸透に時間がかかるため、即座に効果を発揮しないという欠点がある。また、ナノマシン自体にも電力の限度があり、およそ24時間程度で充電が切れ、効果を失ってしまう。
先述したように、多量のナノマシンを充電するため、エネルギーの消費も激しい。
前者に関して言えば、剣によって付けた傷を起点としているため、手数が不足する他、傷の深さによって毒の浸透速度が変わってくるという問題がある。
後者に関して、〈マーハウス〉本体は、スラスター等の推力機関をあえてオミットすることで、背部ユニットのナノマシンの影響を防いでいるが、他の機体は影響を受けるため、僚機がいる場合は使用できない。
他にも、異なる性質を持つナノマシンを散布、または塗布して使用可能であるが、搭乗者の趣味と、味方を含め、広範囲に影響することから、使用が控えられている場合が多い。
また、副次効果的なものではあるが、刀身をナノマシンで覆うことで、刀身の強度を向上させることに成功している。
これは、設計者も想定外の機能ではあったが、〈ガウェイン〉との交戦の際には、これを用いて、ガラティーンを防ぐことに成功している。
ただし、長時間の接触や、ナノマシンの補給なしに連続して接触した場合は、強度は低下し、破壊される危険性もあるため、絶対的なものでは決してない。
また、もう一つの装備として、〈ブルーノ〉から奪取した、騎士外套『ラ・コート・マル・タイユ』を回収して装備しており、背部ユニットを隠すように装着することで、背部ユニットを防御している他、複数のサブアームを利用することで、毒のプラットホームを増やし、弱点であった手数を克服している。
このサブアームのプラットホームであると思わせることで、背部ユニットの本来の姿である、ナノマシンの散布ユニットであるという事実を偽装するという心理的な盾の役割を持つ。
また、先述したようにブースター等の推進機関が全くないため、脚部にはホイールを装備してはいるものの、瞬間的な加速能力に関しては、他のMCに劣ると言わざるを得ない。
とはいえ、ブーストと異なり、速度を一定に保つことが可能であるため、移動能力自体は通常のMCに勝る。
搭乗者の、秘密主義的な性格や、心理戦を好む性質から、比較的小型な機体全体を覆う、偽装用のユニットが存在し、これを装備している際は、背部ユニットが取り外され、通常のMCと同程度のサイズになる。
なお、この外装のデザインは、とある円卓の騎士のデータを参考に作られている。
特徴的な装備を多数装備しているため、搭乗者には特異な技能が求められるという、〈ガウェイン〉の『双剣』以上に、致命的とも言える欠点を持っていたが、その性能を十全に引き出すことができる騎士が搭乗すれば、まさに戦場の支配者たるポテンシャルを秘めた機体と言える。
・作中での活躍
『第6章 悪意 -stare from abyss-』
革命団の拠点の一つ、ヴィクトール伯爵領を襲撃した円卓の騎士の1機。
1度目の交戦の際には、前線には姿を見せず、〈ファルシオン〉の改修機を思わせる外装を装備し、〈ブルーノ〉の窮地に介入し、速やかに撤退した。
2度目の交戦の際には、〈マーハウス〉本体を露出させ、〈ブルーノ〉のコックピットを貫いて撃墜した後、性能を如何なく発揮して、〈ガウェイン〉と激戦を繰り広げ、最終的には相討ちとなって大破した。
・元ネタ
『アーサー王伝説』、及び、ケルト説話『トリスタンとイゾルデ』に登場する騎士、マーハウス卿。
『トリスタンとイゾルデ』と『アーサー王伝説』では大きくことなる扱いを受けている騎士であり、『トリスタンとイゾルデ』では、剣に毒を塗る卑劣な騎士として描かれ、決闘したトリスタン卿に重傷を負わせるものの、この時の傷が原因で落命するやられ役として描かれている。
ついでに、ヒロインであるイゾルデの血縁であったことから、この死がトリスタン卿の恋路を邪魔することになる。
一方で、『アーサー王伝説』においては、ガウェイン卿に伯仲する騎士として描かれており、正午で3倍の能力を発揮していたガウェイン卿と互角に渡り合ったとされる。(なお、ガウェイン卿の扱いが悪いマロリー版では明確に強いと書かれている)
円卓の騎士に任命されて以後も、槍試合で準優勝したり、村を襲う巨人を倒したりと、活躍が描かれているが、最終的には『トリスタンとイゾルデ』と同様にトリスタン卿との決闘に敗れ、その傷が原因で、死亡する。
この時、毒を塗っていた設定はあるようだが、『トリスタンとイゾルデ』のように、卑劣な騎士としては描かれていない?
アラドヴァルとは、ケルト神話の主神ルーが所持していた槍であり、18世紀頃の、『トゥレンの息子たちの最期』という物語に登場した代償の槍。
屠殺者、殺戮者などの異名を持つ槍で、穂先を水に浸けておかなければ、都市を炎で溶かしつくしてしまうとも言われる。
また、この穂先を何かに漬け込んでおくという逸話は、ルーが所持する槍、ルイン(森一番のイチイと同一視する向きもある)にも見られ、これは、毒に浸けておく必要があるとされる。
・作者の小話
〈パロミデス〉の解説でも口にしたことですが、〈マーハウス〉も大概、情報が少なくて困った円卓の騎士です。
ただ、毒を塗った剣を使うという逸話がケルト神話と相性が良かったので、マーハウスを題材にすると決めてからは比較的トントン拍子だったと記憶しています。
すでに元ネタで語ったように、本作品における〈マーハウス〉の元ネタとなっているのは、2種の物語に出てくるマーハウス卿とルーの槍です。
ルーの槍に関して言えば、複数の槍を所持し、複数の逸話があったり、混同されたりしているようで、調べてる途中で頭がこんがらがったりもしたんですが……笑
作中では、アンヴェールに視点がなかったこともあり(どちらかというと、戦闘は神の視点に寄ってた気がします)、なにをしているのか分かりづらかったかもしれませんが、実はナノマシンばら撒いてた、というオチです。
ナノマシンといえば、月光蝶が頭に思い浮かびますが、本作品に登場するのはそこまで高度なものではなく、あくまで、ある程度の効果しか発揮しません。
基本的には、専用装備は、SFの域を出ないように意識しているつもりですが、今回はちょっとチートじみていた気もします。(´・ω・`)
3/17(金) 二つ名を追加