KR-X06〈ベティヴィア〉
・機体データ
機体名称:〈ベティヴィア〉
型式番号:KR-X06
主な搭乗者:ビスマルク・フェルディナント・ル・ブルート・ド・アガートラム
所属:フェブルウス家(セレーネ公派)
席次:第6席
二つ名:『最鋼』
生産形態:ワンオフ機
動力源:ケルビムアーク
機体全高:7.2m
乾燥重量:3.7t
全備重量:7.2t
最大作戦行動時間:38時間
ジェネレータ出力:5200kW
最大自走速度:240km/h
跳躍高:13m
固定装備:なし
基本装備:騎士鎧体『ベドウィル・ベドリバンド』
・機体解説
円卓の騎士機の一機。設計番号は6番だが、配備順は、比較的早く、十年ほど前から稼働している。
MCのなかでも、かなり大型な機体であり、その分、搭載しているケルビムアークは大高出力化しており、機体出力は高い。
また、剛性の高いフレームで機体を構築しており、専用装備も相まって、肉弾戦を得意とする機体に仕上がっている。
専用装備は、騎士鎧体『ベドウィル・ベドリバンド』。一見すると漆黒の装甲に見えるが、その本質は、ある電気の周波数に応じて、集合、拡散を行う、簡易なナノマシンの集合体である。
これを利用することで、集合したナノマシンを硬化させ防御、または、硬化した部分を衝突させることで攻撃に転用する他、拡散を行うことで、接触したものを受け流す、などといった使い方ができる。
しかし、全身を覆う強固な装甲を得られる反面、関節などの可動部や、カメラなどの情報機器を完全に覆うことはできない、接触物との接地圧、接触時間を起点に、自動的に拡散過程と、集合過程を判断するようにシステムが組まれているため、小回りが利かない、この拡散過程、集合過程の変化に最低2秒かかり、また、集合過程の最中にはその部位を動かすことができない、などといった弱点がある。
なお、任意操作も可能だが、この場合は、部位ごとに設定した区間で拡散過程と集合過程を操作する。また、ナノマシンをいくつかの層に分けて、この操作を行うことも可能。
また、一見、漆黒に見えるのは、ナノマシンが集合した結果、屈折を繰り返した光が遮断されているためであり、実際には黒色ではない。
このナノマシンを用いて、他の物と接続することも可能であり、本体以外に武装を用意することで、戦闘能力の拡充することもできる。ただし、その場合必要なナノマシンの量は増え、増えれば増えるほどに、ナノマシンから鋭敏な反応速度は失われていく。
本体には、頭部以外にもセンサーやカメラを多数装備しており、頭部が破壊された場合は、ナノマシンの展開位置を変更することで、露出部の脆さを補っている。
本機のこの『ベドウィル・ベドリバンド』の実戦データを元に、〈マーハウス〉の騎士毒剣『アラドヴァル』は開発されており、本体は全く異なるものの、専用装備としては、〈マーハウス〉の雛形とも言える。
剣や銃といった分かりやすい装備を持たない肉弾戦特化型の機体であるが、大型で小回りの効かない機体であるため、搭乗者には近接格闘戦に優れた技量を要求される。
その一方で、一撃の重さ及び防御性能は、円卓の騎士でも最高クラスである。
・作中での活躍
『第7章 強襲 -running encounter-』
革命団が奪取した輸送列車を止めるために、襲撃する。
鉄骨を投擲し、MCを吹き飛ばすなどパワフルな戦いぶりを見せるが、ジンとレナード、ティナの3人の連携でバランスを崩され横転し、輸送列車の動力部と可燃ガスの入った車両をぶつけられ爆発に巻き込まれる。
戦闘の最中損傷していたが、爆発は無傷で耐え、戦場を確認しに来たシェリンドンの〈ガラハッド〉と対峙、シェリンドンの警告を受けて撤退した。
この際に、再戦を匂わせる発言を残した。
・元ネタ
『アーサー王伝説』、及び、ウェールズ神話のマビノギオンに記された『キルッフとオルウェン』の登場する騎士、ベティヴィア卿。ベティヴィエールとも。
ウェールズの伝承においては、隻腕の屈強なる戦士として描かれ、恐るべき膂力のベティヴィア、の意で、ベドウィル・ベドリバンドの異名を持っていたとされる。ちなみに、娘と息子がいたとか。
『キルッフとオルウェン』では、キルッフの冒険に同伴した騎士の一人。槍一突きは他の者の九突きに匹敵し、隻腕にもかかわらず、同じ戦場でほかの三人の騎士より早く敵に血を流させた、などといった逸話が残っている。
また、『聖カドック伝』においては、グウィンスグ王国の王グウィンスィウがブリケイニオグ王国の王女聖グラディスを誘拐した事件をアーサーやケイと共に解決している。最初期の『アーサー王伝説』に名前が登場していることから、実在の人物であった、という説も存在する。
『ブリタニア列王史』では、モン・サン・ミッシェルの巨人との戦いに、アーサーと共に参加し、最後はローマ皇帝ルキウス・ティベリウスとの戦いに斃れたとされる。
『アーサー王伝説』においては、アーサー王に最後まで付き従った騎士として知られ、カムランの戦いを生き残り、致命傷を負ったアーサー王から、かの有名な聖剣エクスカリバーを受け取り、湖の貴婦人に返還する役割を負った。(なお、フランス語系の作品では、この役をグリフレットが担うことが多い)
この後、修道院に入り、隠者として余生を送ったとされる。
・作者の小話
円卓の騎士機の中でも、かなり初期の段階で構想を思い付いた機体の一つです。
ベドウィル・ベドリバンドという異名から、肉弾戦特化型というイメージはすぐに思い付き、肉体強化の能力かつ、〈ガウェイン〉のガラティーンに対抗できる能力、という理由で、ナノマシン集合装甲という発想は生まれました。
この発想は後に、友人から〈マーハウス〉の案が出た時に、それをSFっぽい範囲にまとめ直す時に使ったりもしたんですが、〈マーハウス〉に遅れて登場する形になりました。
円卓の騎士機は、機体解説でも少し触れている通り、設計した順番に番号がつけられ、開発、配備された順番は関係ないことになっています。
このため、〈マーハウス〉と〈ベティヴィア〉、〈ガウェイン〉と〈パロミデス〉のように、技術的プロトタイプと完成系、という関係にある機体が少なくない、という設定になっています。(なんか燃えません? そういうの)
作中では、いいとこなしな〈ベティヴィア〉でしたが、相性の関係から、〈マーハウス〉にはほぼ完勝できる機体だったりします。(ナノマシン集合装甲なので、毒のナノマシンを取り込んで無効化できる上に、〈マーハウス〉の武器では装甲を抜けないため)
スペック上は防御力最強の機体ですが、そのぶん、抜け道が多く用意されている、といった形でしょうか。(絶対無敵な機体とか面白味がないですよね?)
この機体に関しては、ネーミングを含め、あまり影響を受けた、と言えるようなものはないような気がします。
本来は忠節の騎士にして、重要な役割を果たす円卓の騎士なのですが、ウェールズ神話の方ばかりに気を取られていた気がする……。笑