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異世界で黒い悪魔と呼ばれています  作者: 空地 大乃
第一部 ゴッキー先生との出会い編
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第一四話 必殺技?

 二匹のマガモノに襲われた一行。そのうちの一匹キラーファングとはサルーサが相手をしている。


 そして残りの一匹であるボンボコとはフォキュアが対峙していた。

 しかしこのマガモノの一つ目から打ち出してきた光線は威力が高く、かなり厄介そうなのは間違いなさそうであり。


 ただ、このマガモノの事はフォキュアもよく知っていそうであった。

 故にその動きは軽快。特に相手の攻撃に驚いている様子もみせず、寧ろ敢えて攻撃させ、タイミングを測ってる感じさえする。


 その彼女だが、今は一度相手の頭上を飛び越え、反対側の地面に降り立って更にマガモノの幅ほどの間を左右に連続でステップし相手を翻弄しながら距離を詰めていっている。


 フォキュアの動きは残像がその場に残るほど素早く、遠目に見てるとまるでフォキュアがふたり交互に飛び回ってるようにすら感じられるほどだ。


 だがしかし、そんな高速で一気に距離を詰めようとする彼女であったが、ある程度近づいたところでまたボンボコが腹を鳴らし、衝撃波でせっかく詰めたフォキュアとの距離を離そうとする。


 そしてそこへ更にあの光線――やばい! と思わず口にし、ヒカルも横っ飛びでその光の帯を躱す。


 危なかった。光線の軌道上に自分もいたのだ。油断していたら己の上半身が消え失せていてもおかしくない。


『危ないな。気をつけないと私が折角同化した意味が無いぞ』


 判ってると心のなかで応えるヒカル。そして軽く振り返り軽く右手を顔の前に持って行き、ごめんねと伝えてくるフォキュア。

 

 可愛いが、戦いの中彼女が一々ヒカルのことまで気にしていられないのは当然だろう。


 そして再度の仕切り直し。彼女と一つ目狸の距離はまたもや離されてしまった。


 どうやらあのボンボコというマガモノは接近戦を望まない質のようで、近づくと衝撃波で距離を離し、離れたところから一つ目から発する光線で止めを刺す、というスタイルらしい。


 非常に厄介な戦いだなとヒカルは考える。何か弓矢や投げナイフなどの遠距離攻撃があればまた話は違ってくるかもしれないが、もしくは魔法。


 だがフォキュアがそういった類の武器を持ってる様子はないし、確か彼女は攻撃に使えるような魔法は覚えていない感じだ。


 その上で彼女は見る分にはバリバリのインファイト型という風には見えず、その敏捷性をいかしたアウトスタイル的な面が大きく感じられる。

 

 先に攻撃を仕掛けさせてカウンター狙いというやつだ。

 まぁカウンターといっても相手の攻撃に攻撃を合わせるというのではなく、攻撃をさせて隙を付くといったところだが。


 だが、だとしたらこの相手はあまり相性がいいとはいえないだろう。

 何せ隙をつきたくてもこのマガモノの技は、肝心のその距離を離してしまうのだ。


 彼女の武器が小剣である以上、いくらカウンタースタイルと言っても、攻撃をあてるには接近することが必須要件である。


 この一見相性の悪い相手をどう倒す気か? そうヒカルが考えていると、また一つ目から横倒しの光の柱が突き抜ける。


 しかしそれはやはりフォキュアが躱し、またもやその距離を詰めようと駆け出す。

 だが、これでは今までと何ら変わらない――そう思ったのだが、彼女はボンボコが両手を上げお腹を打ち鳴らすポーズを取った瞬間大地を蹴り、鋭い角度で滑空した。


 まさしく風を切るほどの動きであったが、それでもボンボコの腹を鳴らすタイミングの方が早かった。


 惜しい! と思ったヒカルであったが、それは寧ろ計算だったようだ。


 ボンボコが再び放した衝撃波、だが滑空した彼女はほぼボンボコの頭の上まで到達していたため、衝撃波によって若干身体は浮き上がったものの、彼女はボンボこのすぐ後ろ側に転がるようにして着地したのである。


 そしてヒカルガ見ていて気づいた事、それはこの狸の放つ衝撃波は前方を覆う程度にしか広がっていないということ。


 それはマガモノの背後の木々が全く反応していないことから明らかであった。

 だがこれも当然か、腹を鳴らして放つ衝撃波が後ろにまで効果が及ぶなら、マガモノ自身にだって何かしら影響が出るはずだ。

 

 それがないという事は、必然的に前方、しかもボンボコ自身には影響が出ない範囲で広がっている形になる。


 それを避ければ衝撃波の影響は殆ど受けないのだ。


 ボンボコの表情が歪む。慌てて後を振り返ろうとするが、腹のせいなのか元々鈍重なのか動きが鈍く――そうやってまごついている間に、フォキュアが背中に近づき己の小剣を突き立てた。


 マガモノの顔が苦痛に歪む。だがフォキュアの動きは更に続く、彼女はなんと剣を突き刺したままボンボコの身体を素早く横に一回転したのだ。


 スパァーーーーン! という快音が周囲に響き渡る。マガモノの身体を軸にして刃を突き立てたままの横回転――当然ボンボコの身が無事であるはずもなく。


 その巨大な腹を誇っていた身体は見事なまでの断面を露わにし、輪切りになった状態で地面に崩れ落ちていった。


 当然ボンボコはもう起き上がる様子もなく、最早只の巨大な狸の骸でしかない。


「まっ、こんなところね」


 フォキュアは可愛らしい狐耳を揺らしながら、ヒカルを振り返る。

 それにヒカルも親指を立てて返した。

 すると木々のこすれ合う音が鳴り響き、かと思えば蒼毛の狼が胴体と頭が離れ離れになって落ちてきた。


 そこへ立て続けに黒い影。

 軽やかに大地に降り立つは赤髪の猿、もといサルーサであった。


「こっちも終わったぜ。思ったより大したことなかったな」


余裕の表情で口にし、そしてフォキュアの倒したボンボコを一瞥し口笛を鳴らす。


「流石フォキュアだ。この切り口旋風狐剣(F・ハリケーンソード)を使ったな、相変わらず見事だぜ」


「へ? せ、旋風?」


 ヒカルは思わず目を丸くさせる。

 するとフォキュアが、ちょっと! と顔を紅く染めながら叫び。


「その呼び名やめてよ! 恥ずかしいんだか!」


「あん? なんでだよ旋風狐剣かっこいいじゃん?」


「あんたが勝手に命名しただけでしょ!」


 フォキュアがムキになって怒鳴る。

 どうやらよっぽど恥ずかしいらしいが。


「いいじゃないですか旋風狐剣。似合ってると思いますよ」


 くくっ、と含み笑いをし、少し意地悪な事をいうヒカル。

 そんな彼を恨めしそうな顔でフォキュアが睨めつけてきた。

 

 ちょっと調子に乗りすぎたかな、と頬を掻く。


「だったらフォキュアはどんな名前つけてんだよ?」

 

 するとサルーサが彼女に尋ねる。

 どうやら彼にとってはそれが当たり前らしい。


「な、名前なんてつけてないわよ!」


「なんだよそれ。折角の技なんだし名前ぐらいつけてやれよ。それに名前がないとなんていっていいかわかんねぇじゃん」


 どうやらサルーサはそういった技の名前に随分拘りがあるらしい。

 ただ確かに名前があったほうが便利は便利かもしれない。


「別に名前なんて必要ないと思うけど……まぁどうしてもっていうならグルグルソードとかかなぁ」


「旋風狐剣で決まりだな」

「そうですね……」


 遠い空を眺めながらサルーサとヒカルがしんみりという。

 初めてふたりの意見があった瞬間でもあった。


「て! 何でよ! 何がいけないの!」


 本気だったのか! とヒカルは結構驚いた。


『流石にグルグルソードはないな』


 どうやら先生も同意見らしい。


『風神嵐武旋空裂波斬刹剣ぐらいのインパクトが欲しいところだな』


『やめて先生! 俺の黒歴史を穿り返さないで!』


 ヒカルはひとり身悶え、何してるのヒカル? と本気でフォキュアに心配されたのだった。


「まぁとにかく、マガモノも倒したし早く森を出て街に戻ろう」


 話も一段落ついたところで、フォキュアがそういい、ヒカルとサルーサも同意する。


「それにしてもお前結局出番なかったな」


「もう、またサルーサそんなこと言って。仕方ないでしょ。あのタイプのマガモノは流石に無理よ」


 小馬鹿にしたように言ってくるサルーサにフォキュアが叱るように返す。

 そのやりとりをみながらヒカルは苦笑いを浮かべた。


『言われっぱなしで情けないぞ』

『仕方ないですよ先生。実際俺今回役にたてませんでしたし』

『それにしてもな――ヒカル』

『先生勘弁して下さい。俺だって』

『そうじゃない。気をつけろ……来るぞ』


 へ? とヒカルが間の抜けた声を発した瞬間だった。


 ガサガサガサガサガサガサッ! と木々や草花が凄まじい勢いで左右に割れたようになり、かと思えば巨大な影がヒカル目掛けて突っ込んできた。


「おわっ! な、なに~~~~!」


「ちょ! 嫌だヒカル!」

「おいおいありゃイエーレじゃねぇか!」


 フォキュアの叫びとサルーサの声が瞬く間に後ろに流れていくのを感じながら、ヒカルは突然の強襲者と共に森の奥へと消えていった――

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