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《6》今度こそ脱出…………できるといいなぁ……

《前回のあらすじ》

え……ぇっと……何だっけ?


キララと歩くこと暫くすると、上に続く階段が現れた。


「ここから出るとどうなるんですか?」


「……城………庭…………」


城の庭か……


フェルテルの妻の城、名を確かラトナハト城はどちらかというと不思議な形をしてる。


森とともに生きるが信条の森人族だから、城下町ごと森の中にあり、木でできた家で過ごしている。


それは例え森人族の魔王のフェルテルの妻と言えども変わらず、木造で6階建てくらい城が中央に巨大な木を囲むように建てられている。


木材だけで6階建ての城はかなり無理があるかもしれないが、守護の魔方陣を彫れば、木材自体の耐久性も増すのでなんら問題はなかった。


便利だよな。


そして、庭とは中央にある巨大な木の周囲のことだ。


その庭に続くってことは太さが50メートル木の近くにあるのか?


木造が中心の森人が石造りで?


別に木造が中心なだけで石造りで建物等を建てたり、作ったりしてはいけないという決まりがあるわけではないが、使われてない技術は廃れていくのが道理だから、森人族が地下に墓地を石造りで作れる可能性は限りなく低いはず何だけれども……


どうせ、別の魔族が手伝ったんだろ。


ルクセリアが同じ地下墓地で安置してあるのが証拠だろ。


でないと、森人族(フェルテルは例外)の魔王の城で吸血鬼族のルクセリアがいるのはおかしいのだから。


そう考えると、他にも魔王の遺体があるのではないのだろうか……?


「キララ、他に魔王の遺体がある可能性はありませんか?」


もし、あるのなら、俺達と同じ境遇のやつがいるのではないだろうか?


「………確める………」


「お願いします」


「……キララ…………いっきまーす……」


それは、某ロボットアニメの初代主人公の真似じゃないか。


でも、それを無表情、そして棒読みでやるのはお兄ちゃんどうかと思う。


「キララ……」


俺はジトッとした目でキララを見る。


やるなら、ちゃんと真似ろという意思を込めて。


「…………………蝙蝠…………ごー……………」


堪えきれなくなったのか、やり直したのでジトッとした目をやめる。


真似をするのは諦めたらしい。


途端にキララの体の一部が蝙蝠となり、来た道を飛んで戻っていった。


吸血鬼族でも高位の者は体を多数の蝙蝠に変えることができる。


それを、キララは行った。


初めてなのに、成功して、しかも、体全てを蝙蝠化させるよりも高度な限定蝙蝠化を。


やっぱり、キララは完璧超人だ。


例え初めてのことでもそつなくこなす。


俺は再び妹に対して畏敬の念を懐いた。


「……同調率………100ぱーせんと………状況…………開始…………」


少し、痛い言葉を好む残念なところがあるけれども………



数分後、蝙蝠が帰ってきた。


蝙蝠を体の一部に戻しながらキララは首を横に振った。


どうやらいなかったみたいだ。


となると、他の魔王は死んでないか、遺体は別の所にあるか、捕らわれたか、か。


「まぁ、気にせず、先に進みましょう」


考えても分からないなら考えすぎない方がいい。


今は状況がわからないのだから、他人の事ばかり考えるわけにはいかない。


まずは、自分達のことが優先されるのだ。


キララもコクッと頷いた。


それを見て俺は階段を一歩一歩踏みしめるように登り始め、その後ろにキララも続いた。


30段を登ると天井が見えた。


たぶん天井となっているものを押し上げれば、外である庭に繋がってるのだろう。


「外、確認しないとダメですよねぇ……?」


コクりと頷くキララ。


さて、どうやって外を確認しようか……?


「………お兄……穴あけ………よろ……蝙蝠…………飛ばす………」


俺が答えに辿り着く前にキララが答えた。


やっぱりキララには勝てないかぁ……


「……わかりました」


キララが土魔法を使えば…………とおもったが、チラッと後ろを向くと無表情ながらに「頑張って!お兄ちゃん!応援してるからね!」というオーラをだしてるキララの姿が……


これはやらねば、ここまでコツコツと貯めてきたお兄ちゃん株が少し減少するかもしれない。



流石に紙屑以下の価値しかない父さん株くらいまで大暴落、ということはないだろうが、減少は避けたい。


物質化あまり上手く出来ないんだけどなぁ……



妹に格好いいところを魅せたいお兄ちゃんパワーでなんとかするしかない…………か。


ふぅ、と息を吐いて集中する。


今回物質化したいのは穴を掘るための物。


ドリルを作ってみたかったが、まぁ、できるわけがないので却下。


となると、ツルハシ、スコップあたりか?


天井にあるってことを考えるとスコップの方がいいかもしれない。


スコップを思い浮かべる。


一瞬子供用スコップで砂山を作るキララ(ろくさい)が思い浮かんだ。


あの頃のキララも可愛かった。


「おにいたん、おにいたん」ってもう可愛かった。


あっちへ行こうとしたらとことことついて来て、こっちに行こうとしたらとことことついてくるんですよ!!


ああ、もう可愛いいなぁー!!


「―――――はっ!?」


気がついたらちょうど左手に肩を掴む感じで等身大キララ砂場で砂山つくってるの(ろくさい)がほぼ真っ白に近い状態の銅像ができていた。


「…………お兄…………?」

何やってるの?という雰囲気を滲ませ始めるキララ。


いや、これちゃうねん。


ちょっとキララの可愛さを思い出しちゃったら物質化をある意味成功しちゃって白色のキララちゃん(ろくさい)ができ――――




ん?


白色の?


もう一度、題『砂山を作るキララちゃん(ろくさい)』宮前慎吾 作を見てみる。


当時着ていたキララの服は勿論のこと髪の毛についていた塵や、美しい左指にできていた忌々しき傷や、睫毛の本数に至るまで、記憶の中にあるキララちゃん(ろくさい)とほとんど同じに見えるほど精巧な出来栄え。モデルがいいということは勿論だけどもそれに3段くらい劣るだけという素晴らしさ。


ヤバイ部屋に飾っておきたい。


じゃなくて、"白"で"精巧な"作りを物質化できたということ。


今までバールすらまともに物質化出来なかったのにキララは――――あ、愛の力か。


悔しいが、キララに攻撃されるなら金属バットで股間を強打されても30分で再び動き出す、あの黒き悪魔と呼ばれる奥様方の敵すらも凌駕する父親の血を受け継いでいるのだ。


このくらいのこと出来て当然か。


妙に納得できた。


つまりは何かを持ってるキララをイメージしながらその持ってる物を想像出来たりはしないだろうか……?


ぴきーん!ってきた!


試しに……キララが14歳で俺が15歳の時に行った芋掘りの時のキララ。


芋を抜こうとして転けそうになったところを俺が助けた。


ついでに無理矢理狙ってラッキースケベをおこし、キララの程よく綺麗なお尻を鷲掴みにした、という出来事があった。


その後笑顔(怒り)の母さんと血涙を流してる父さんに叱られたが、恥ずかしげに赤く顔を染めたキララが見れたのと、キララのお尻の触り心地でプライスレスどころかハイリターンだった。


いい思い出だ。


それでその時穴を掘ってたキララを思い出して――――ピントをキララが使っていたスコップに当てて物質化!


「――――おおっ!

出来ましたね」


「……でけた………」


俺の左手には白に近い白のスコップが握られていた。


『砂山を作るキララちゃん(ろくさい)』より白色は薄いし、精巧さも比べられないけれどちゃんとした既製品レベルだ。


「そういえば、この『砂山を作るキララちゃん(ろくさい)』どうしましょう?」


俺としてはこのまま持って行きたい。


「………放置…………」


俺は雷にうたれたような衝撃をうけた。


「そんな殺生な!

こんな可愛らしいキララを放置などとは神や仏が許しても俺が許しません!」


即座に反論。


「………持ち運び…………難しい………」


キララがさも当たり前のように反対する。


まぁ、わかっていたさ。


キララが反論してくることは。


だが、しかし!


この論戦は俺の勝ちは揺るがない!!


「キララ。考えてもみて下さい。

この異世界には写真が存在しないんですよ?」


ガガーン!と今度はキララが雷にうたれたような雰囲気を醸し出した。


表情も無表情がベースだが、目が数ミリ見開かれている。


「…………………そんな………………………」



でもまぁ必然だな。


って………はぁ……


キララアルバム『愛する妹成長アルバム』全32冊を地球の俺の部屋に置いてきてしまった…………はぁ……


記憶に残ってはいるけどさ……


記憶と写真はやっぱり違うんだよ。


写真を見て記憶から思い出すという至高の一時。


毎日見てても飽きないキララの可愛らしい写真達。


因みに保存用1、保存用2、観賞用、予備、の4枚が1セットだ。


それがうちには家族用、母親用、父親用、俺用の4つある。


家の家族はみんなキララのことが大好きなのだ!!


何故か俺の写真も4枚で1セットの家族用、母親用、


キララ用であるけどな!


だからなのか、写真がないと言われたキララは落ち込んでいた。


ずーんとキララの周囲が黒く見える。


「だから、俺には必要なんですよ。

この『砂山を作るキララちゃん(ろくさい)』が!」


自分の今の心情を表すためにグッと拳を胸の前で作る。


その時


『グオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!』


大音声の咆哮が襲いかかり、天井が爆発した。




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