《3》脱出大作戦
前回のあらすじ
あまりの痛さに主人公絶叫。
魂のシャウトをあげる
新しい扉を開いてないか少し不安
※感想を頂けると今後の作品の良し悪しが変わってきます。
なのでどしどしご応募して下さい。
蓋を押し上げるのに使った魔力の板を魔素に分解しておく。
こうしておかないと不完全な薄い白色のものでも5、60年は物質化したままらしい。
寿命(?)が過ぎると魔素に自然分解してしまうらしいけど。
棺の蓋を元に戻して、パンッと頬を叩いて気を引き締めて外に向かう。
この広い部屋から出れる場所は一ヶ所だけ。
部屋を破壊して、出るのならいくらでもあるが、論外だ。
何が起こるかわからないし。
だから、棺からかなり離れたところにあり、俺から見て真っ正面にある扉から出なければならないんだが……
出て直ぐに敵とエンカウントとか嫌すぎる。
とりあえず、軽く扉を開けて外を覗いていないことを確認、そして、顔を出して敵が本当にいないか確認してみよう。
まぁ、それが真っ当だろうな。
でも、鏡とかがあればもっと安全に周囲をうかがえるのになぁ……
って魔法があるじゃん。
こっちの世界はファンタジーなんだから、俺の考える真っ当は真っ当じゃないんだった。
フェルテルの魔法は魔力の物質化。
物質化なんだから鏡みたいな物質にできる…………と思いたいなぁ……
フェルテルの記憶に魔素を液体化して擬似的なプールにして娘と遊んだという記憶がある。
フェルテルにとってはそれは遊びと思わせた濃度の高い魔力に馴れさせる訓練だったらしく、教育パパだったんだなぁと少し感慨深くなった。
そんなフェルテルも鏡みたいにするのは思いつかなかったらしい。
柔軟な発想は若さからくるのかもしれない。
と思いつつ魔力を放出。
さっきと比べると少しスムーズに放出することができた。
まぁ、フェルテルの記憶という教本があるので馴れるのは早い。
そして鏡を思い浮かべる。
フェルテルは普通に物質化させるなら堅くなれとか、壁になれとか、丸くなれとか、念じなくてもできる。
これはフェルテルの経験がそのまま継承されてるから膨大の時間の中で何万、何十万と使われているから簡易化されてて、瞬時にできる。
まぁ、継承されてても実際に俺がやったことがないことだから、やっぱりフェルテルと比べると発動まで遅くて念じなければできない。
それで、フェルテルから継承されてない形や物質やフェルテルがそこまで使わなくて馴れてない形何かはその形を思い浮かべなければいけない。
それも、すごく綿密に細密に。
馴れてない力だからフェルテルよりも細かく思い出さなければならない。
それこそ、目を瞑れば直ぐに思い浮かぶほどに……
だから、無理だった。
物質化して出来たのは凸凹して歪に歪んだ薄い白色の板。
反射のはの字もない板。
何処に鏡の要素があるのか、問いただしたい。
即、分解して魔素にした。
まぁ、最初から出来るとは思ってなかったから別にいいさ。
できればいいなくらいだったし……
気を取り直して、鏡無しで部屋の外を窺うことにする。
ドアノブをつかんでゆっくりと押す。
あれ?
動かない。
結構、年季が入った建物みたいだからもっと強めで押してみる。
動かない。
……………引くタイプ?
今度は引いてみる。
あっさり開いた。
まぁ…………そういうこともあるさ……
気落ちしながらも外を窺う。
外は廊下になっていた。
しかし廊下も部屋の中と変わらず真っ暗闇。
灯りになってくれる魔素様様だ。
廊下の見える範囲に人影なし。
顔を出して見てみるが人影なし。
人族は勿論、魔族でも真っ暗闇でも見える種族は限りなく少ない。
だから、灯りがあれば人がいると思った方がいいな。
フェルテルさんの記憶が役にたちすぎてヤバい。
欲を言えば、痛みがなければもっと良かった。
部屋からでて扉を閉め――――ちょっと待て。
部屋の内側から見れば変哲もない扉だったが、外側には奇怪な模様が彫られていた。
俺は、これを知ってる。
魔方陣だ。
森人族、ファンタジーでお馴染みのエルフが使う秘術だ。
門外不出の秘術として森人族は絶対にそのやり方を教えてくれなかった。
というか、森人族にしか使えないと森人族であるフェルテルの妻は言っていた。
実際にフェルテルも妻が使っていた魔方陣を転写して使ってみようとしたが使えなかった。
効果は魔方陣の書き方によって変わってくるが、守ること、状態を保つことに特化、というかそれにしか使えないらしい。
森人族は穏和な人が多いので種族柄ってのもあるみたいだ。
一応、魔方陣に魔力が通っているから発動はしてる。
魔方陣に関しては専門外で扉に彫られた魔方陣からは、彫られた所を見てみると木が汚れていないし、劣化もしてないことから、魔方陣自体が新しいか、状態保存のための魔方陣か何じゃないかくらいしか分からなかった。
でも、まぁ、魔族の領地にいる可能性が上がったな。
さて、先に進もう。
今は魔方陣を気にしてる暇はないし、魔方陣を見て希望が出てきた。
フェルテルの身近に純粋な森人族は一人しかいないから、そういうこと何だろう。
ハーフならもう一人いるが。
殺風景な廊下飾り物の一つも――いや、壁には松明をおくためのものが一定の間隔であるから、一応、飾り物はある。
飾り物といっていいのか微妙なところだけれども……
とにかく、どっちに行こうか……
右か左か。
左だな。
俺左利きだし。
適当に行く方向を決めて壁際を歩く。
だけど、決して、壁は触らない。
壁を触ったら壁が凹んで罠発動なんてのは嫌すぎるから。
音をたてないようにのっそりのっそりと歩く。
視線は一ヶ所にとどめず、前後左右上下を忙しなく確認。
だからか、遅々として進まなかったが、見つかって処刑とかされるよりマシだ。
時間感覚なんかとうに無く、どれくらい時間がたったか分からないが、かなりの時間を歩いて一つの部屋へと辿り着いた。
この部屋も俺が出てきた扉に彫られていたのと同じような魔方陣が彫られていた。
これも魔力が通っているから発動はしてるみたいだ。
入るべきか。
入らざるべきか。
入るか。
もしかしたら人、しかも人族がいるかもしれないという危険があるものの、今の状況を好転させるものがこの部屋にあるかもしれない。
例えば、フェルテルが死んでからの情報や服や装備や食料。
装備は要らないかも知れないが一応何があるか分からないから欲しいな。
物質化だってまだ十全ではないし、身を守る手段はいくつでも欲しい。
俺自身は学校で剣道を習ったことがあるくらいの素人。
フェルテルは体格的な問題で小型の武具しか扱ったことがないみたいだが、心得があるみたいだ。
記憶に体がついてこないかも知れないが無いよりはマシ程度だから気にしない。
最悪、脅しになればそれでいい。
扉に触れてみる。
魔方陣が守護用に彫られているのなら、抵抗されるはずだから確かめるために。
反応はない。
ということは、状態保存の魔方陣ってことか?
まぁ、考えても分からないか……
いつでも攻撃できるように手に魔力を溜めて、扉を少し開いて中を覗く。
灯りはなし。
人影も無し。
一度廊下に灯りや人影確認して中に入る。
中は小部屋だった。
精々六畳あればいいかくらいの。
そして、部屋の中には木箱が数個、そして――
「フェルテルのローブ…………」
木でできたマネキンに着させられていた真っ白なローブ。
フェルテルが生前ほとんどいつも着ていたフェルテルが魔力で作ったローブ。
防御力は布に似せて物質化したため、布より少し堅く精々革鎧程度の堅さしかないけれど、フェルテルの魔力で作られてるため修復はいつでもどこでも、そして超高濃度の魔力をこめてあるので数百年程度では魔力が自然分解されて魔素に戻らないという素晴らしさ。
フェルテル愛用の一点物。
他にもえげつない機能がある、素晴らしい服なのだ。
しかし、フェルテルは死ぬ前にそれを着てなかった。
フェルテルの死ぬ少し前の時代は魔族と人族の仲が物凄く悪かった時代。
まぁ、その原因は人族の人族至上主義の教会が勢力を伸ばし、色々な人族の国がそれを国教として反魔族を唱え始めたからだ。
そして魔族を排斥し始めた。
フェルテルは魔族を守り、再び平和にするために、まだ人族至上主義を国教にしてない国でフェルテルが数代前から手助けしている国に援助を求めに武装を持たず行って、話がまとまり、小さな晩餐会で出た食べ物に睡眠薬が入っており、『魔封じの鎖』を嵌められ処刑された。
身勝手で直ぐに裏切る。
穢いよな。人間は。
だから、フェルテルは最後に着ていなかった。
それがここにあるとは…………
ここはフェルテルの遺品置き場なのかもしれない。
そうなれば、好都合だ。
服を着替えられるかもしれない。
たぶん木箱の中に色々と入っているのだろう。
俺の半分はフェルテルでできてるんだから盗む訳じゃない。
記憶に至っては99%以上がフェルテルの記憶だし、魔力もフェルテルのと同一だし、言ってみるなら、俺を取り込んでフェルテルが甦ったようなものだし。
だから、決して盗む訳じゃない。
人格は俺だけれども……
とりあえず、パールを思い浮かべて物質化。
…………まぁ、パール擬きといってもいいかもしれない。
曲がり具合が90度くらいじゃなくて、60度くらいで、先端がマイナスドライバーにみたいになっていて、持ち手の方がぐねぐねしてて、持ち手の方より先端の方が長くたって………………
使えねぇ…………
パール擬きを魔素に分解してもう一度……
今度は30度くらいで、先端はマイナスドライバー、持ち手はぐねぐね、持ち手より先端の方が少し長い。
一ヶ所を直したら一ヶ所が悪化した。
これはもうパールは諦めた方がいいかもしれない………
今度は先端がマイナスドライバーみたいな長い棒を物質化してみよう。
ぐねぐねしてて長さは60センチくらい。
だけど先端はマイナスドライバーみたいに細い物ができた。
使えなくもないな。
先端がマイナスドライバーの細長い棒を木箱に差し込みテコの原理を利用して開ける。
中身は……服だ。
良かった、これで服を着替えられる。
手にとって広げてみると……
ヒラヒラのゴスロリ衣装。
黒を基調としておりたまに白のレースなどがあしらわれた嗜好を凝らした逸品となっております。
じゃなくて、なんだこれ。
一応フェルテルの記憶を探ってみるが一度も着た覚えはない。
いや、待て。
これと同じような服を着たやつを知ってる。
いや、これをお気に入りといって見せてくれたやつを知ってる。
『常闇魔王』ルクセリア。
吸血鬼族で魔王。
吸血鬼の固有魔法を得意としているだけでなく、他にも氷、水、土、風の4属性も持った魔王。
吸血鬼族は全員が黒髪で大人な体格で美男美女ばかりなのだが、ルクセリアだけは真っ白な髪をして幼く可愛らしい体躯をした変異体。
そして、フェルテルがフッたゴスロリ少女。
っていうかフェルテルの記憶を見ててモテすぎててなんかイラつく。
THEリア充って感じにモテまくってる。
地で惚れた女は数知れずをいってやがる。
チビの癖に……
俺なんか今まで一度も彼女いたことはないのに……
まぁ、フェルテルと混ざったことで性格が変わってる今の俺から見れば変態でシスコンという時点で年齢=彼女いない歴も当たり前のような気がするのだが……
それでも、フェルテルの選り取り見取りさは少し妬ける。
身長120センチない癖に……
この世界はショタコンが多いのか?
とりあえず、フェルテルに非リア充の妬みをぶつけるのをやめて、何でこの服があるのか考えろ。
と言っても、考えられるのは三つしかない。
ルクセリアが故意にここに置いていったか、ここがフェルテルの遺品置き場じゃないか、そして
ルクセリアも死んでいてここに墓場があるか…………
そう思い至った時、身を裂かれてるかのような絶叫が聞こえてきた。
フェルテルさんはチビの癖にモテます。
うっざいくらいにモテます。
リア充も妬むくらいにモテます。
チビの癖に。
その理由は後々話にでてくる……かも。
あと、主人公は変態です。
今はフェルテルさんと混ざったおかげで変態度合いが薄まってますが主人公単体だったら非常に変態です。
何れくらいかは後々話にでてくる……かも。
あと、お遊びでフェルテルのステータス的な何かを書いておきます。
《名前》フェルテル
《職業》魔王
《レベル》963(1000が上限)
《ステータス》
体力73830
魔力143852500000000000(←たぶん世界一)
筋力6758
防御6628
素早さ16275
知力782416021(←世界一)
魅力53104(相手がショタコンの場合二乗されます)
運6079
《スキル》
物質化
魔眼
ショタコン魅力
完全記憶
武術
指導
くらいですね。
フェルテルさんが魔王の中で上の下の理由は筋力と防御の低さですね。
魔王で一番運動オンチさんです。
なお、慎吾も同じステータスですが、知力の部分はちょっと下がります。
元々慎吾がお馬鹿だった設定なので大幅減少を地球の知識で少しに抑えたという具合です。
一般人(人族の村人)は
《名前》村人D
《職業》村人
《レベル》5
体力227
魔力5
筋力52
防御31
素早さ34
知力4
魅力19
運30
くらいです。
遊びで考えたので本編とは何ら関係ありません。
茶目っ気です。
それでは転生魔王を今後ともよろしくお願いします!!
次回はな、なんと!!
ヒロインが……!
出てくるかもしれません!!
というか出します!
出してみせます!