十五歳の見た夢
聞いてください。聞いてください。
これは私が一五歳の時の話です。
深い深い…でもとても明るい空間の中、私はいました。
それが夢だと気づくのに、以外にも三ヶ月かかりました。
不思議な空間の中、いるのは私と、小さな女の子。
腰あたりまで伸ばした黒髪が、とても目立つ女の子です。
いつもいつも、無邪気な微笑みで私を見ています。
私がこれを夢だと気づいてから、この空間で自由に動けるようになりました。
ですから私は聞いたのです。
「あなたはだれ?」
…と。
最初、女の子は答えませんでした。
それでも、どうしても気になり、私は聞いたのです。
すると、女の子はこう答えました。
「知らない人」
何を言っているか分かりませんでした。
ですから私はまた聞きました。
女の子はまた答えます。
「あなたの知らない人」
知らないから聞いているのに、そう言われてしまっては…と首をひねった時です。
いままでその空間にいなかった人が現れました。
三十歳くらいの、背の高い男の人。
男の人は女の子の隣に並び、言いました。
「この子は、君の知らない人だよ」
そう言われたので、私は聞きました。
「では、あなたはだれ?」
男の人は答えます。
「君の知らない人さ。まだね」
そこで、私は夢から覚めました。
夢にしてはあまりにもはっきりしている夢。
それから何度も、その夢を見たのです。
ある日、母との会話の途中、変な夢を見ると言ってみたのです。
すると母は嬉しそうに目を細め、言ったのです。
「そう。あんたも、その夢を見る年になったんだね」
どういうこと?と私は聞きました。
すると、
「いつか…いつかわかるよ」
と優しく微笑んだだけでした。
十年後、私は結婚し、子供も生まれました。
そして、あの夢を見なくなりました。
はたして、いつから見なくなったのか…
あの夢を見なくなったと気づいたのは子供の五歳の誕生日。
誕生日プレゼントに、素敵な思い出をあげようと、遊園地へ連れて行ったのです。
「ママ!次、メリーゴーランド!」
舌足らずな喋り方で、私におねだりをしてくるわが子は、誰かに似ているような気がしました。
娘はメリーゴーランドの方へ走って行き、夫が追いかけました。
一人で走っては危ないと、娘の腕をとって夫が娘を止めました。
そして、娘は振り向いたのです。
無邪気な、笑顔で。
そして隣には、背の高い夫が。
――…ああ、そうか…これだったんだ…
私は気づいたのです。
そう。この光景は、
そして、その十年後。
娘がこんなことを言い出したのです。
「ねえ。おかあさん。最近、変な夢見るの」
そう。あなたも、その夢をみる年になったんだね。




