短篇一篇 その14
当初、「史的な夜話」として載せようと思いましたが、まともに調べていないので「短篇一篇」として扱いました。
ヨ:あのぉ。
ト:はいはい。
ヨ:少し前の話やけど、人生で初めて瀬戸大橋を渡ったやないですか。
ト:どないでしたか?
ヨ:普通に凄かったよ。
ト:良かったねぇ。
ヨ:ぃゃぁ、でもさ、調子悪うて、夜も眠れんと、ガタガタの状態でとりあえず電車乗って気ぃ紛らわそう思て、出かけたやないですか。
ト:でしたねぇ。
ヨ:そやから、半分眠いなぁ、半分身体動かしたいなぁ、そやけど腹具合も今一つやし、遠出して大丈夫かいな、そないな色んな、わけわからん状態で電車乗ってさ、岡山まで行って、そこからとりあえず何しようかって考えて、一回改札口出たんですよ。
ト:はいはい。
ヨ:それで、駅前の喫茶店でも見付けて、次の行動考えよっかな、そない思いながら何気に、改札口の真上に電光掲示板有るやないですか。何番線から何時何分にどこ行きの電車が出るって教えてくれる奴。
ト:有りますねぇ。
ヨ:あれを見て、そう言えば、瀬戸大橋渡ったこと無いよな、これを機会に乗って渡ったろって思たんよ。
ト:即実行に移したんですね。
ヨ:座る場所間違てさ、行きも帰りも内っ側やったんよね。
ト:通路側ってことですか。
ヨ:そや無うて、対向車が見える側って言うの、まぁ、海は見えたけどさ。
ト:あぁ、そういうことか。
ヨ:そう言う事ですよ。
ト:楽しかったですか?
ヨ:半分以上ボーッってしてたから、心から楽しめたわけやないけど、それでも電車乗ってる時に思たよ。瀬戸大橋の真下にさ、ゴジラ出てきて、口からなんか知らんけどバーッって噴き出して、瀬戸大橋吹っ飛んで、乗っとる電車も一緒に吹っ飛んだら、さぞ面白かろうとか、そないなこと思たよ。
ト:あんたはええかもしれんけど、一緒にのっとる人はどないすんねん!可哀想やろ。それぞれ家庭もあるやろうに。
ヨ:そない現実に考えなや。
ト:大体、ゴジラって身長五十メートルやで。瀬戸内海の水深って一番深いところで百五メートルやけど、平均三十八メートルやん。首から上出とったら、警報出てな、瀬戸大橋もストップや。
ヨ:ほんま無茶苦茶や……
ト:あぁしんど……
ヨ:電車と一緒に海に落ちるんやで。痛いやろうなぁ。
ト:知らんわ。
ヨ:まぁ、色々あったけど、無事に瀬戸大橋を渡りまして、高松駅まで行くわけですよ。
ト:はいはい。
ヨ:でもさ、勘違いしとってんけど、てっきり宇多津駅でスイッチバックするって思とってんけど、四国に入ったら近鉄の大和八木駅みたいに愛媛に行く線路と、高松に行く線路に分かれとってさ、しかも瀬戸大橋の高さのまま、あの高さに合わせた高架がしばらく続いとるんよ。圧巻だったよ。
ト:そう言えば阪急の淡路駅の高架化って、いつ終わるんよ。
ヨ:それは阪急にでも問い合わせてくれよ。真上に造るか、踏切をアンダーパスにするか、そっちの方が早かった気ぃするけどねぇ。
ト:用地買収に手間取ったとか、ちょろりと聞いたけど、それ思たら高架化に上手いこと行ってる所って凄いよな。
ヨ:阪急なんて何年乗ってへんねやろか。
ト:それこそ乗りに行ったらええやんけ。箕面で猿でも見てきたらええやん。
ヨ:箕面にはあまりいい思い出が無くて……
ト:そうやったっけ?
ヨ:詳細はいずれ、また……
ト:そいで、高松まで行ったんですよね。
ヨ:でもさ、電車の中で放送しとったけど、徳島に行く人は、紙の切符を買って下さいって言うとってさ、いわゆるあのICOCA、Suica的なカードは使えへんって言うとって。それに高松の駅もあれだったよ、カード用の改札機って一個か二個しか無うて、瀬戸内海越えただけでこないにちゃうんかいって思たよ。
ト:カードを導入するほど、慌ただしくも無いんちゃうか。なんでもかんでもピ、ピ、ピって走らんでも、慌ただしい感じる一方やで。
ヨ:確かに、時間に追われてるような感じするよね。休日なんかでも、どう見ても遊びに出かけとるように見える人が、もの凄い勢いで改札抜けるん見たら、日曜日なんやし、歩きなはれって思うよ。
ト:それで、あれやんか。昔、高知県と愛媛県行ったし、合わせて徳島県に行っとったら、四国全県制覇で、祝賀会開けたやん。
ヨ:調子よかったら、行っとったかもしれへんけど、そこまで思い付かんやったよ。あの日は。
ト:それで高松駅まで行って、お土産が全部うどんやったという。
ヨ:改札口出てすぐの所に、お土産屋さんがあったんですよ。次の電車で帰ろうとか思っとったし、パッと見ておうどん屋さんも無かったし、あんたにお土産買うて帰ろうって思てさ。
ト:それであれですやん。普通のおうどんに、茶うどんに、桜うどん、おうどんばっかしやん。
ヨ:讃岐うどんって有名やし、まぁ、おうどん買うときゃ外れは無いやろうって、そない思たんよ。
ト:あと、黍団子、な。
ヨ:岡山駅を利用した記念に、そない思て黍団子も買うてきてんよ。
ト:ありがとうございました。でも、あれやねぇ、黍団子ってもうちょい甘いイメージがあったけど、案外あっさりした味やったから、こないなんやったっけて思たよ。
ヨ:口に合わんやったかね。
ト:ぃゃ、美味しかってんけど、イメージしてた味と違たなぁ、それだけの話よ。
ヨ:黍団子も幾つかメーカーさんがあるみたいやし、今度買うことあったら甘々な黍団子捜してみるよ。
ト:ぃゃ、プレーンでええし。
ヨ:まぁ、そない言わんと。高松の駅のさ、改札口の近くにさ、唐揚げ売ってる売店があったんよ。改札口の内側って言うんかな。ホームの端なんやけど、美味しそうやってんけど、腹具合が今一つやったから買わんやったけど、今度行く機会があったら買ってみたいですよ。
ト:折角やったら、そのまま徳島まで行ってさ、駅前で阿波踊りを一踊りしておいでぇな。
ヨ:何が嬉しいて、駅前で阿波踊りを踊らなあかんねん。
ト:友好的な人が来た言うて、受け入れて貰えるで。
ヨ:違う国へ行くんや無いねんから、普通に駅前でお土産買うて帰ってきたらええやんか。
ト:阿波踊りが上手いこと踊れんやったら、捕まって大阪湾に流されるんやで。
ヨ:わし、なんか悪いことでもしたんか?
ト:そやから、阿波踊り……
ヨ:そう言えば、阿波踊りっていつから始まったんやろうな。
ト:知らんがな。気になるんやったら、自分で調べなはれや。
ヨ:面倒臭いし……
ト:それを言い出したら、なんもでけへんやんか。
ヨ:まぁ、そうなんやけどね。阿波踊りの話は横に置いといて、岡山駅の改札口を出て、歩いとったんですよ、駅の地下街を。そしたらさ、鬼ノ城って言うのが総社市にあるって書いてあってさ、そこが桃太郎が鬼退治した鬼の本拠みたいなことが書いてあって、わしらが知っとる鬼退治って、鬼が島が舞台や無かったか。何が正しいねん。
ト:桃太郎って桃に入って、川に流されとったわけやん。
ヨ:そうやねぇ。
ト:川の上流と言えば?
ヨ:川の上流?
ト:桃太郎の桃って、川の上流から下流へと流れてきたわけやん。上流と言えば何がある?
ヨ:なんやろか?
ト:山が有って、そこから川は海を目指して流れるわけやんか。
ヨ:そうですなぁ。
ト:鬼って言うんは、実は桃太郎を川へ流した両親かもしれへんやんか。
ヨ:真面目に聞いとるわしはなんやねん。昔話にそないな話、いらんやろ。
ト:そない言わんと聞きぃな。育ての親であるおじいさん、おばあさんを実の親やと信じてやで、鬼やと思って退治したんが実の親やったら、可哀想やんか。そやから海の向こうへ鬼退治へ行ったってことにしとるんやろ。
ヨ:口から出任せだよ。
ト:子供向けの昔話にやで、実の親を殺すような話が有ったらあかんから、海の向こうへ出かけたことにしたんやんか。
ヨ:無茶苦茶や……
ト:でも、真面目に話すと桃太郎って、意外と各地に話が有ってさ、岡山市、高松市の鬼無、北へ行くと岩手県、新潟県、福島県、東京都の北多摩、山梨県の上野原市と大月市、愛媛県、高知県、広島県、飛んで鹿児島県の沖永良部島、沖縄県の宮古島、台湾の新竹県のタイヤル族、屏東県の客家には虎退治やら山賊退治の話が伝わっとるそうよ。
ヨ:沖縄やら台湾やらって、えらく遠くにまで伝わってるんやなぁ。
ト:これが謎と言えば謎ですよね。
ヨ:その前にさ、鬼が島は一体どこから出てきたんよ。考えてみ、舟乗って鬼が島行っとるんに、帰りは大八車押して帰ってきとるんやで。あの量の金銀財宝を小さな舟に載せとったら、普通に考えて沈むやろ。
ト:金銀財宝が実はプラスチックかなんかでできとったんちゃうんけ。
ヨ:無茶苦茶や……
ト:でも、桃太郎って案外、動物虐待の話やと思わへんか。船漕ぐのって猿に任せっきりやし、桃太郎は舳先で格好つけとるだけやんけ。しかも黍団子で買収しとるんやで。もうちょいましなペットフードかなんかで雇用すればええのに、おかしいと思わへんか。
ヨ:雉とか、黍団子食うたら喉に詰まらせる可能性あるよな。
ト:鬼退治行く前に、動物病院行かなあかんことなるよな。
ヨ:先生、雉に黍団子与えたら、喉詰まらせてもうたがなぁ。
ト:雉って、黍団子ぐらいの大きさのもんって食うんやろうか。
ヨ:知らんよ。
ト:まぁ、どっちにしても動物を雇用するにしても、もうちょいましなもんで雇わなあかんってことやな。
ヨ:それにしても、どっから鬼が島って出てきたんやろうな。
ト:一つには歌の影響もあるんやないか。明治三十三年に田辺友三郎さんって言う人が、作詞しはった「モモタロウ」があって、ここで鬼が島と黍団子が出てくるんよ。
ヨ:有名な桃太郎さんやな。
ト:それは明治四十四年の「桃太郎」やな。こっちは「お腰につけた黍団子」でも有名やな。どっちにしても鬼が島と黍団子が出てくるよね。
ヨ:結局、明治三十三年の時点で鬼が島と黍団子がセットってわけやな。
ト:そうなるよね。
ヨ:でも、鬼が島というか、舟に乗って退治に行くって、どっから出てきたんやろうな。
ト:田辺友三郎さんは金沢の出身らしくて、東京高等師範学校で学ばはって、それから静岡師範学校附属小学校の主事にならはるんよ。この主事って言うのは職員ぐらいの意味らしいねんけど、戦前と戦後では若干使い方が異なるみたいやね。田辺さんは後に他の学校の校長にもならはるし、師範学校って言うのは学校の先生を育てる学校なんですね。
ヨ:なんか、重々しい名前やね。
ト:教育大学より、師範学校の方が格好ええかもしれんよね。
ヨ:それで、桃太郎の話はどこへ行ったんよ。
ト:その、日本で最初に桃太郎の歌を作らはった田辺友三郎さんは、明治三十三年に作詞しなすった時、静岡県の師範学校で勤務してはったやん。だから海を見て桃太郎に舟に乗って、鬼が島へ行くとか言うアイディアが浮かんだんやもしれへんよ。
ヨ:ほんまかいなぁ。
ト:まぁ、でも、青ヶ島ありますやん。東京都の離島で船が桟橋に着きにくいとか、そないな話題で有名やけど。
ヨ:まともに太平洋の真ん中みたいな島ですね。
ト:その青ヶ島も鬼が島と言われているらしいねんけど、これは桃太郎や無うて、源為朝の伝説と絡んでるみたいで、桃太郎は関係無いみたいやけど、色んな話を混ぜて、作詞した可能性はあるよね。
ヨ:ふぅ~ん。
ト:残念ながらこの田辺さんの伝記みたいなんは無いみたいで、「モモタロウ」を作詞した流れとか、細かいことはわからんけど、海岸で釣り船見て思い付いたかもしれへんし、念入りに調べて作詞したかもしれへんし。この辺りは推測でしか言えないよ。
ヨ:残念!
ト:それこそ静岡県に行って、県立図書館の棚を探したら資料があるやもしれへんよ。
ヨ:あんたが行ってきて。
ト:機会があれば、桃太郎も真剣に調べてみたいですよ。
ヨ:調べて下さいよ。
ト:その内に、ね。でもさ、誰が新潟県の佐渡島に桃太郎の話を伝えたのか、山梨県の大月市と上野原市へ伝えたのか。もしかすると佐渡島の小さなお話が各地へ伝わったかもしれないし、始まりがどこやったのかは気になるよ。
ヨ:沖永良部島とか宮古島も謎ですよね。いきなり九州とか飛び越えて行くんやから。
ト:桃自体は弥生時代に大陸から入って来たらしくて、明治時代やと岡山、広島、和歌山に京都の伏見が産地として有名やったみたいよ。岡山はかつて桃の産地として一位やったらしいけど、今は六位とか言うし、一位の時に岡山売り込むのに、桃太郎を活用したんやろうな。
ヨ:岡山よりも前に山梨県とかが桃太郎と絡めて売り込んどったら、どないなってたんやろうな。
ト:岡山県、黍団子売れへんようになるやんか。
ヨ:黍団子買いに山梨県まで行かなあかんわけやな。
ト:自分で黍の粉買うてきて、自分で練って丸めて、食べたら宜しいがな。
ヨ:そないなことしたら、黍団子売ってはるメーカーさん、困るがな。売れへん言うて。
ト:でもさ、最初はさ、思てたんよ。瀬戸内海には瀬戸内水軍言うて、海賊衆とも呼ばれる人達が居て、陸の武将が海の海賊を退治した話に尾ヒレが付いたんやないか、そない思とってんけど、全然違うって気ぃ付いた時はショックだったよ。
ヨ:そう言う事があったんやな。
ト:何年も前の話やけど、瀬戸内海の水軍、有名な村上水軍も調べたら、結構ややこしくて面白かったけど、途中で投げ出したよ。
ヨ:投げ出したらあかんやん。
ト:いつか、暇があったらまた調べたいよ。
ヨ:百年ぐらい無理な話やね。
ト:百年……
ヨ:そう言えば、台湾の桃太郎はどないなっとるねん。
ト:一つには日本が台湾を併合していた時に伝わったというのもあるけど、客家とタイヤル族にどないして伝わったんか、それがわからんのよ。元から類似の話を持っていたのか、日本人と接触して、話を教えて貰ったのか、宮古島辺りから話が伝わったのか、この点もいつか調べてみたいですよ。
ヨ:台湾まで行きそうで怖いよ。
ト:最寄りの図書館で資料を探すよ。
ヨ:桃太郎って岡山県のイメージやったけど、こないして聞いてるとどこが始まりか、さっぱりわからへんよね。
ト:さっきも言うたけど、地方の小さなお話を誰かが各地へ持って歩いたんかもしれへんよね。江戸時代の参覲交替で話も移動したのか、それとも戦国時代に移動したのか、気になるよ。民俗学で有名な柳田國男さんが「桃太郎の誕生」って言う本を書いてはるから、図書館へ行く機会があったら、読んでみるよ。
ヨ:そう言えば、なんで、犬、猿、雉になったんやろうな。
ト:あんたは何やったらええと思とるんよ。
ヨ:五百年くらい前の、身近な動物って言うたらやっぱり犬と、猫と、鶏やないか。
ト:さすがに猫と鶏はあかんやろ。
ヨ:強そうなイメージやと、猪と熊と、鳶かな。
ト:重量で舟が沈むで。
ヨ:帰り、大八車で金銀財宝運ぶとき便利やで。
ト:猪と熊やったら、持ち逃げしそうやん。
ヨ:疑ったらあかんよ。猪や熊が泣くで。
ト:そうやね。
ヨ:そう言えば、日本狼も居ましたよね。犬よりも日本狼をお供に連れて行った方がええんちゃうか。
ト:明治時代に嫌われもんやったから、駆除されたんやろ。身近や無いし、昔話には採用されへんやろ。
ヨ:採用されとったら、今頃、日本狼は細々と生きとったんやろうか。
ト:まぁ、無理やないか。
ヨ:そろそろ寝よっか。
ト:最後に一つ、高松市の鬼無に伝わる桃太郎は女の子って言う説があるんよ。
ヨ:よっぽど力自慢の女の子が居ったんやなぁ。
ト:鬼が島へ鬼退治に行ったらしいで。
ヨ:ほな、あれかいな。高松市鬼無の伝説を岡山市が持って行ったんかいな。
ト:さぁ、そこまでは……
ヨ:ほな、高松市行って調べてきて!
ト:無茶言うし、って言うか、もう寝ようよ。
世の中にレモンパスタがあるならば柚子パスタ、みかんパスタ、スダチパスタ、シークヮーサーパスタとかもあるのでしょうか?
既に有るのかもしれませんが、一回作ってみたいです。
以前、「雪女」も扱いましたし、「桃太郎」よりも先に本当は「浦島太郎」を調べたかったのですが、初めて瀬戸大橋を渡った勢いで「桃太郎」を先に書きました。
忘れた頃に「浦島太郎」を書くかもしれません。
それよりも「史的な夜話」として「桃太郎」を扱ってみたいです。




