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U.6「再戦」

上太郎は、目の前に姿を現した魔具人形を見て、胸の奥がざわつくのを抑えられなかった。

それはただの武具ではない。どこか、自分を待っていたかのような気配すら漂わせていた。


「実は……コックピットを外すだけで精一杯だったんだ。他はほとんど手を入れられなかった」


イーコは恥ずかしそうに頬をかきながら言った。

話を聞くと、構造そのものは理解できたものの、魔術的要素が強すぎて改造はほぼ不可能だったらしい。

しかも、コックピットを外した瞬間、魔具人形は勝手にサイズダウンし、中身は空洞になり、まるで「どうぞお入りください」と言わんばかりの形状に変化したという。


「でもね、直感的に動かせるようにはなったんだ。そこは大きな進歩だよ」


イーコが説明を終えると、上太郎は素朴な疑問を口にした。


「で、誰がこれを着て戦うんだ?」


イーコは、まるで答えを促すように一歩近づき、静かに言った。


「上太郎。少なくとも最初に魔具人形を動かせたのは君だ。

俺は自信をもって言える。この魔具人形を着るべきなのは、君だよ」


上太郎は短く息を吸い、考えた。

だが、召喚された宿命と、ここまでの旅で固めた覚悟が、彼の背中を押した。


「……わかった。着るよ」


魔具人形は、まるで上太郎を待っていたかのように、あっけなく彼の体を包み込んだ。

しかしすぐに違和感に気づく。


「おい、これ……サイズ合ってねぇぞ。仕立て直しだぜ」


だがイーコは首を振った。


「これ以上サイズは変わらなかったんだ。魔法の副作用かもしれない」


仕方がない、と上太郎は再び覚悟を決めた。

イーブン・カオスと再び対峙するため、偽り村へ向かうことにしたのだ。


その時、超越的な声が響く。


「この世界を救う救世主たちよ。再び“勇者の化身”として秩序を取り戻してくれ」


上太郎とイーコは深くうなずき、その場を後にした。


「デ・キールジャンプ」


一瞬で景色が切り替わり、二人は元の洞窟へ戻っていた。

偽り村へ向かう方法を話し合い、チュ・コイノの場所へ戻って何か手がかりを探す。


すると、収納部からまた卵のような物体を発見した。


「なぁにこれぇ……?」


イーコが卵を眺めていると、もう片方の手に持っていた手鏡――テクマクマヤが震えだした。

慌てて安定した場所に置くと、デキールのホログラムが再び現れる。


「これを見ておるということは、ラノベ都合アイテム“瞬間移動の卵”、通称『ハ・ヤーイ』を見つけたようじゃな」


デキールは卵の説明を始めた。


目的地を三回唱えながら地面に投げつけると煙幕が発生し、その範囲にいる物体は切り抜かれたように目的地へ転移する。

その速度、0.01ms。


上太郎とイーコは半信半疑ながらも手順通りに試す。


「偽り村、偽り村、偽り村!」


卵が地面に叩きつけられ、勢いよく煙が広がる。

煙が晴れたとき、二人は確かに偽り村へ到着していた。


そして――敵も目の前にいた。


「はにゃん」


イーブン・カオスが驚いたように声を漏らす。


「イーブン・カオス!!」


上太郎とイーコは同時に叫んだ。


「これはこれは。新しいお友達でも連れてきたのかい、イーコ君」


カオスは嘲笑しながら、イーコと魔具人形を纏った上太郎を見比べる。


「俺は上太郎だぜ」


その瞬間、カオスの笑みが消えた。

上太郎を見つめ、なるほどと頷くと、姿勢を正し戦闘態勢へ移行する。


「ヘンシン」


眩い光がカオスを包み、黒光りする変身ヒーローのような姿へと変貌した。

見た目はぶかぶかだが、上太郎の装備が魔具人形であることを即座に見抜く。


「どんなに強くなっても、私の魔具人形には勝てないのよ」


言い終わると同時に、カオスの姿が消えた。

上太郎が気づいた時には、すでに背後に立っている。


強烈な一撃が背中に叩き込まれ、上太郎の体が宙に浮く。

さらに追撃が腹部にめり込み、地面へ叩きつけられた。


「上太郎、大丈夫か!」


イーコが叫ぶが、上太郎は反応しない。


「もう、人間が呼吸できるところは全部砕いた。イーコ、次はお前だ」


カオスは瀕死の上太郎に背を向け、イーコへ歩み寄る。


――イーコ、やられる。


体が動かない。

このままイーコが一方的に殺される。

その悔しさが、上太郎の胸を焼いた。


「なんて……無力なんだ」


一瞬、心が折れかけた。

だが――このまま終わることだけは、絶対に許せなかった。


その時、上太郎の頭に“存在しない記憶”が流れ込む。

誰かの叫び声が、強烈な印象を残した。


意識が朦朧とする中、上太郎は息を絞り出す。


「――固着っ!」


魔具人形の内部で、誰かのアナウンスが響いた。


「パワーオン」


かつて平和を守ろうとした戦士の心に灯がともるように、起動音が鳴り響く。

魔具人形“勇者の化身”からあふれるエネルギーが、上太郎の傷を補い、生命を繋ぎ止めた。


ゼン・ニン兄弟とデキール・ウデマエの最高傑作は、救世主の声に応じて再び立ち上がる。


ぶかぶかだった魔具人形は、上太郎の体に合わせて引き締まった。


上太郎はゆっくりと立ち上がり、カオスを見据える。


「なんだかわからないけど……力が湧いてくるぜ」

次回 U.7「オーバーライド」

タイトル小回収予定

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