4つの種族がくらす世界
この世界では、エルフ族、人族、魔族、獣人族の4つの種族が平和に共存している。
1時期は魔族が遠い昔に文明を滅ぼしたという伝説のせいで多少の差別はおきたが、今となってはその伝説を語っていた賢者が死亡したためすっかり忘れられてしまった。
しかし、その名残としていまだに魔族の王は危険な魔王様と呼ばれている。
実際、魔族の力は飛び抜けているのもあるが。
4つの国には族をまとめる王がいて、魔王はブライノ王、エルフはノワール王、ヒューマンはジェシール王、獣人はミシーミガ王がそれぞれ管理している。
僕は人族のライ。
死んでしまった賢者の孫だ。
そして今は世間に知られることなく魔族の奴隷として働かされている。
なぜかというと、賢者が魔族に殺されているところを見てしまったからだ。
それを見るまでは魔族の表面しか知らなかったがために、賢者は嘘つきだとばかり思っていたが、奴隷生活が始まってからはそんな考えなど消え去ってしまった。
毎日30部屋もある屋敷の掃除を1人で任され、ご飯は腐ったものや残飯を約3ヶ月分の食事にして大事に食べている。
おまけに主の護衛まで。
しかし護衛のための訓練はなかなかに楽しかった。
休もうと思えば叩き起こされたが、同じ奴隷人族の元騎士団には勝てる程度に成長した。
そのおかげで魔族にも勝てると思い脱出もしてみたが、奴隷契約のせいで許可無しで勝手に動くことができなかった。
しかも僕が脱出しようとしたことが主の耳に届いてしまい、1年後処刑されることになった。
「処刑を開始する」
処刑されるまでの1年間は、不思議とすぐに終わってしまった。解放されるような気もするし、死ぬのは怖いような気もする。
それに魔族の表情や行動がせっかく分かってきたのにこのまま死ぬのは惜しいという気もする。
もう少し知識をいかした生活がしたかったものだな…。
「グサッ」と鈍い音をたてながら、血がしたたり落ちていった。
実にあっけない死だ。
誰からも悲しまれることがなく、言葉1つでどうにでもなる命。
それでも、この環境が今の自分にとっては涙を流さずにすむ丁度いいところのかもしれない。
…皮肉なものだ。
「さようなら、奴隷生活…。」




