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 時は少し遡り、ライアンとエリが運命の出会いを果たしている時に、賢者であるグレイ家に一人のおじさんが訪れていた。


「賢者様、突然の訪問、申し訳ございません」


 低姿勢で部屋に入室してきたの、この街の衛兵長。小脇には書類の束を挟んでおり、ミリアの目の前に書類を広げていく。


「ロデリックの件、本当なのか?」

「中央からの調査機関からもたらされた情報なので確かだと思います」


 ミリアは悲しいのか、疲れたのか、眉間を指先で揉みながらため息を吐く。


「自分もロデリックさんとは長い付き合いなので残念ではあります。処刑が早かったのも隠蔽のためだったのかもしれません」

「主犯があいつだったとはね。今の妻が原因か?」

「恐らくは。帝国に連なる魔法使いが護衛に何人か入っており、彼女はロデリックさんを切り捨てて脱げるつもりではないでしょうか」


 資料の中には違法な薬物のことも記載されており、首長の自宅に運び込まれた写真なども証拠として添付されている。


「薬物漬けにされてるってわけかい。それで娘は大丈夫そうなのか?」

「使用人は関わってる人間も多いですが、娘さんは普通の暮らしをしてるようですね。初等部の学校でも飛び級で二年早く卒業するそうですよ。残念なことになりました」

「あの子の娘だ。優秀なのはそうだろね」


 ヘレナがタイミングを見計らってお茶を持ってくる。


「一時期は私が妊娠した時に短期間、メイドをしてくれてましたからね」

「あのアップルパイは美味かったね」

「娘さんについてはできるだけ便宜を図れるようにはします」

「ああ、親の罪が子に影響しないとはいえ、どんな扱いをされるかわからないからね」


 衛兵長は淹れてくれたお茶を手早く飲み干すと、書類を置いて、賢者の家を後にする。

 気を使ったヘレナも退出をし、客人がいなくなった後も、黙ったままミリアは一人で書類を眺め続ける。



 どのくらい時間が経過したのか、屋敷の中が騒がしいことに気が付くいた頃には、ノックされることがなく、開いた扉の先には娘となったエリが見慣れない不細工なロバに跨っていた。


「何をしてるんだい」

「……ライアン」

「ロバの名前か?」

「……うん」

「とりあえず、家の中ではロバに乗ることは禁止だよ。少し話がある、ロバの紹介はまた明日にでも頼むよ」


 リリーがライアンを連れて出て行き、ヘレナが変わってお茶を持ってくるが、夕食前ということもあり茶菓子が出ないことにエリは不満気な顔で茶をしばき始める。

 暫し、無言の時間が続いた後に、ミリアがエリに質問を投げかける。


「エリ、お前は見えざるものが見えるんだな」

「……うん」

「どんな見え方をするんだ」

「……変なのは街の中ならどこでも動ける。よく喋るし、頭がおかしい」

「変なのって大賢者様のことか?」

「……うん。普通はその場からあんまり動かない」

「あまり動かないのは、その場所で亡くなった者ということか」

「……うん。後は恨んでる相手とかの、そのきっかけ? の場所によくいる。縛られてる? みたいな」


 なんとなく理解できたとミリアが頷く。


「……後はたまにだけど、人にくっついてる? 守ってる? みたいな」

「そうか。リリーについてた黒いのはよくいるのか?」

「……滅多に見ない。面倒だから普段は近寄らない」

「ある程度、理解できた。大まかに分けて、三種類と特例が一つという感じか」

『えっ! 私ってなんかおかしいわけ?』

「……煩い」

「また大賢者様が騒いでいるのか。それはともかく少し、相談がある」


 茶を啜りながら、空虚な瞳でエリは頷く。


「直近で首長の自宅に行くことになっている。問題になっている子供の誘拐事件のことでな。そこでお前には確認を手伝ってほしい」

「……子供がいるか見る?」

「そうだ」

「……非科学は信じない?」

「ああ、オカルトではあるが、提出された資料を信じたくないという気持ちもある。お前が見て、子供達がいなければ少し安心できる」

「……わかった。ライアンは」

「ああ、別にロバは飼ってもかまわないよ。ルールを守ってるうちはね」


 


 


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