御守りよ。
お姉さん、っょぃよ。
注意して見れば、服は汚れてはいるが、破けたりはしていないし、装備品も破損していない。
そして、顔も腫れていないし変色もしていないし、血も流していない。
「大丈夫か?」
「動くな!」
やっぱりな。
馬鹿女が手を差し出した途端に、馬鹿女の手を捻り背中に回さして関節を決め、残った右手に握るナイフは馬鹿女の喉に向ける。
「この女の命を助けたければ、服と靴以外を全て外して、その場に置いてオレが良いと言うまでガキは下がれ!」
「ユーマ様……」
「断る。その馬鹿女を殺したければ殺せ。そういう契約だからな。」
「なっ!?」
そして、俺は無造作に近付く。
男は迷っていたが、俺が本気だと判断したのか、馬鹿女を俺に向かって蹴り飛ばし逃亡しようとしたが、俺は雷撃弾を男の両肩の関節に向かって放った。
そして、三方向にも。
「がっ!」
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
「ぎっ!」
「え!?」
ナーサお嬢様は、俺が誰も居ない方向に魔法を飛ばして、その方向から悲鳴が出た事に驚いていた。
……アレで隠れているつもりか?
そして、俺は男共を連行し易い様に縛った。
「当然、この事は報告する。」
「……」
そして、俺達は街に到着したら冒険者ギルドに行き、ラグシグさんの依頼終了と、ダンジョン内の強盗の件を話した。
強盗犯の4人は奴隷堕ちになり、装備品と奴隷売買の代金で4人で金貨2枚になった。
そして、ラグシグさんの依頼報酬は金貨10枚だった。
予定より若干遅くなったが、無事にナーサお嬢様を送り届ける事が出来た。
勿論、馬鹿女の命令無視に因るナーサお嬢様の命を危険に晒した事も報告した。
……馬鹿女の今後は知らね!
その日はラグシグさんの好意で泊まる事になったのだが、夕食後に呼び出された。
「ユーマ君。今日はお疲れ様だね。」
「否定はしない。」
「それで、エルアールの事だが……」
「言わなくて良い。興味が無いし、関わる気も無い。」
「……そうか。」
「当然、責任を取る形で奴隷に堕として、俺が主人になれという話ならお断りだ。」
「分かったよ。」
「それで本題は?」
「ユーマ君、このまま私の専属として雇われないか?」
「悪いが、お断りする。」
「何故だね? 給金はそれなりに出すよ?」
「俺は、世界を見て廻りたいんだ。」
「そうか、それは残念だよ。ユーマ君、話は以上だ。依頼を受けてくれて感謝しているよ。」
こうして、心底疲れた依頼を終了させ、翌日には領主館を後にした。
因みに、ナーサお嬢様は別れの挨拶に来てくれたが、目に隈を作っていたから、手に入れた宝石で何かしていたんだろうな。
そう思っていたら、赤面のナーサお嬢様からプレゼントを受け取った。
中身は、銀色の飾り板にジュエルラビットの宝石を数種類埋め込んだ物だった。
「御守りよ。」
「ありがとう。大切にするよ。」
「……お礼よ! それ以上の理由は無いわ!」
ナーサお嬢様。
此処に来て、ツンデレは反則だよ。
……ナーサお嬢様の赤面、ご馳走様です。
そして、俺は教会に行きお祈りをした。
「待ってたよ~。明日だったら泣いてた~。」
「はいはい。」
「む~。」
俺は笑顔で頭を撫で撫でした。
「むふふふ。」
どうやら機嫌を直した様だな。
「ユーマ。あの娘は良かったの? 脈有りだよ?」
「無理だって。」
「そう?」
「ただ魔法が使えるだけの貴族のお嬢様なんて旅に付いて行ける訳が無いだろ。」
「それなら、奴隷なんてどうかな?」
「奴隷?」
「うん。ただ、お姉さんタイプの奴隷は駄目よ。私がお姉さんなんだからね。」
「分かったよ。奴隷を選ぶ時は、お姉さんタイプは外す。」
「そうこなくちゃ、私のユーマ。」
「はいはい。」
「ユーマ、『はい』は、1回!」
「はい!」
「ユーマは偉いね。」
そして、今度は俺が頭を撫でられた。
「……それで、トリア姉さんから、何か話す事は有る?」
「そうね。このまま南下すると大きな都市があるから、そこで出会いがあるかもよ。」
「分かったよ。とりあえず、その都市を目指すよ。」
「うん。ユーマ頑張れ。お姉さんは、この神域で何時でも見ているからね。」
結局、狐の尻尾には1泊だけになったけど、他の所にもあるから良いか。
そんな事を考えながら教会を出ると、優しい小雨が降っていて、俺がちょうど街の南門を出た辺りで前方には見事な虹が架かっていた。
……いや、トリア姉さん!?
天候だけなら、まだ分かるけど、地球の物理学系や自然学系等から視ると不可能な角度なんだけど……虹の出現が!
まあ、トリア姉さんの好意を素直に受け取るか。
あ!
虹がダブルになった!
トリア姉さん、心を読むの禁止!
あ!
今度は曇った!
そういうのは無し!
そうすれば、今度会えた時に沢山話せるから。
あ!
雲1つ無い晴天になった!
周りは神様の御業じゃないと不可能な天候に大騒ぎになっていた。
……何人かは、半狂乱だったな。
天候を使ってちょっとした会話をトリア姉さんとした後、俺は乗り合い馬車で次の目的地に向かうのであった。
こうして俺は幾つかの村や町を経由して、幾つかの盗賊団を潰して、懐が温かい……
………………すみません!
実はその内1件が50人以上の盗賊団で、アジトのお宝を含めると合計で白金貨200枚以上稼ぎました!
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
盗賊を殺して、主人公はそれなりに葛藤がありましたが、持ち直しました。
まあ、テンプレの1つとしてスルーを希望します。