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素晴らしい戦いだったよ。

表に出なかった問題点。

 美味しい話だが、あんな危険物と一緒に行けるか!

 拒否の一択だな。


「何故だね?」

「彼女とは昨日、偶然ですが出会いましたが、その時に彼女の思考の一部分や判断基準を知る事になりました。

 しかも、冒険者になって1ヶ月も経っていない俺から見ても危険です。はっきり言って、命が幾ら有っても足りない。」

「なっ!?」

「そんな人物と魔法が使えるだけの護衛対象のお嬢様と、高ランク冒険者でも油断すれば命を失うダンジョンなんかに行きたくないですね。」

「昨日、何が有ったんだね?」


 俺は説明した。

 倒れている者について、周りに確かめもせずに自己判断で無条件で被害者とし、それを倒した者を確かめもせずに無条件で加害者として決め付け、倒れた者へ謝罪を強要した事を。


「本当かね、エルアール?」

「……はい。」

「ユーマ君が言った事が事実なら確かに危険とも言える。

 どうするナーサ?」

「行きたいわ!」

「ナーサはこう言っている。ユーマ君、ナーサの為に何か考えは有るかね?」

「命令権は俺が持ち、ナーサお嬢様や彼女も従う事。そして、命令に従わない場合は、ナーサお嬢様には強制的に気絶させて終了として、彼女の場合は殺されても死んでも文句を言わないなら依頼を引き受ける事を考えても良い。」

「……そんな!」

「どうする、ナーサ?」

「分かったわ。」

「エルアールは?」

「……分かりました。ラグシグ様、よろしいでしょうか?」

「何だ、エルアール。」

「私にも今まで生きた中で(つちか)った誇りがあります。

 直接、彼の実力を確かめさせてください。」

「うむ。良いだろう。良いか、ユーマ君。」

「ああ。別に構わない。」


 俺達は領主館の中庭に移動した。


「これより模擬戦を始める。使用する魔法は身体強化系のみとする。準備は良いな? ……始め!」

「あああああーーー!」


 開始の合図と同時に彼女は攻めて来たが、俺はその場から動かずに右手のみで対処した。


「……そんな馬鹿な!」

「どうした? もう終わりか?」

「まだよ! 身体強化! 行くわよ!」


 向こうは身体強化を使ったが、俺は身体強化を使わずに先程と同じ様に対処した。

 まあ、玄人好みな技術を使って捌いたけどな。

 玄人好みと言う事は素人には分かり難いと言う意味でも有る訳で、右足を3cm後ろにずらすとか、模擬剣で受けると同時に下に10度傾けて襲撃と威力を流すとか、普通は分からないだろ?

 そして、彼女が疲労する前に攻勢に出て、その中で生まれた隙をちょこんと模擬剣で触れる。

 それは8回した所で終了の合図が出た。


「止め!」

「素晴らしい戦いだったよ。」

「フロンバグか。」


 模擬戦を始める時に、隠れて見ていた人物が、俺の前に現れて拍手していた。


「隠れて見ていたのか?」

「まあ、彼には気付かれていたみたいだけどな。」

「それで、どう見た?」

「彼は、隠している力を差し引いて見ても、充分に実力を持っていますね。」

「そうか。エルアールよ、良いな?」

「……はい。」

「これで模擬戦を終了とする。この後、少し早いが昼食を用意してあるので、ユーマ君にも参加して欲しい。」


 ちょっと面子(めんつ)に傷を付けたし、顔を立てるか。


「ご相伴させて頂きます。」

「それは良かった。」


 テーブルマナー?

 負けたら参加者全員の食事代を奢るという番組を見て少しは知っている。

 そして、デザートを食べている時に、冒険者ギルドに話を通してあるから、食後の休憩が終わり次第向かって欲しいと言われた。

 俺はまだ依頼の承諾を明言してないけど、今回はまあ良いか。


 休憩の間に、今回の依頼内容を聞いた。

 このアレンザーから徒歩20分の所に有るダンジョンで、難易度は初心者向けであり、階層は15階層迄。

 5階層と10階層と15階層にボスが居て、上からアッシュウルフ3匹、ゴブリン5匹、ボブゴブリン1匹らしい。

 しかも、最初の5階層まではそれ程難しくない迷宮で、3階層までならEランク冒険者4人のチームでも1時間もあれば到達するらしい。

 そして、このダンジョンは初心者向けとして残しているから、ダンジョン・コアを破壊しない様に言われた。

 後、ダンジョンの地図を預かった。

 そして、目的のジュエルラビットは、魔法攻撃で倒すと宝石をドロップし易いと説明を受けた。


 1時間後、俺達はダンジョン入口に居る。


「確認だが、ナーサお嬢様にエルアール。俺の命令には従って貰う。良いな?」

「ええ。」

「……分かっている。」

「分かっているなら良い。それでは行こうか。」


 はっきり言って、あの女は邪魔!

 戦う音が聞こえたら見に行こうと言い出したり、手元にはダンジョンの地図が有るにも関わらず、勝手にあっちの方が近道だと言い掛かりを付けてくるし……

 ナーサお嬢様は、きちんと理解して大人しく付いて来ているだけに、あの女の愚行が目に付く。

 それでも、1時間をちょっと超えたぐらいで3階層に到着して俺達は目的のジュエルラビットを探した。


 そして、見つけた途端にあの馬鹿女は剣を抜き突っ込んで倒した。

 あまりな独断専行に止める間も無く最初のジュエルラビットはドロップを残さずに消えた。


「言い訳を言うな! 後ろに回ってナーサお嬢様の後方を守っていろ!」

「なっ! 私は……」

「言い訳無用と言った! 下がれ!」

「……はい。」


 その後は順調に進んだ。

 後ろでは馬鹿女が色々と言っていたが無視した。

 ジュエルラビットは見つけ次第、俺が誘導して軽く痛めつけてから、ナーサお嬢様の前に出した。

 それをナーサお嬢様が止めを刺すという形にして40分程でナーサお嬢様の目標数が集まった。


 帰り道は、あの馬鹿女がしつこく言って来るから仕方なく先行を許した。

 そして、もうすぐ1階層への階段の所で、見え難い場所に男性が力無く座っていた。


「大丈夫か?」 

「待て!」

「何故だ?」

「何故、行く必要が有る?」

「もしかしたら助けが必要かもしれないじゃないか!」

「助けを求めて無いし、休憩しているだけかもしれないだろうが!」

「……助けて、くれ……」

「ほれ、見ろ。」

「待て!」


 馬鹿女は、俺の制止を聞かずに男性に向かった。



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