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そこで用意したのが、この2つだ。

根回しは大切です。

 ユーマside


 あれ、可笑(おか)しいな?

 入場してそれなりの時間が経過しているのに、貴族当主が政治的な話をして来ないし、貴族令嬢もがっついて来ない。

 アイリスに言った脅迫でもある善意の言葉が効いたかな?


「……ではユーマ様、ご機嫌よう。」

「ええ、ご機嫌よう。」


 まあ、それならそれで良いか。


「貴方が、ユーマね。」


 俺に声を掛けた令嬢は、外見その物は上位の貴族令嬢なのだが、(にじ)みでる混と……いや、滲みでる空気が、彼女を「やられ役」の悪役令嬢に仕立て上げている。


「そうですが、貴女は?」

「……まあ、(しつけ)は、飼ってからするとして、地に伏して喜びなさい。私が貴方を飼って有効利用してあげるわ!」

「……はい?」


 周りの聞く耳を立てていた者が固まった。

 王族側が、どの様な内容を伝えたかは知らないが、それなりの王家としての強権を使った可能性が高い。

 それなのに、この馬鹿令嬢は、俺を「飼う。」と言った。

 しかし、創作物とはいえ、貴族の事はラノベで知っているから、手遅れだろうが、一応はフォローしてやろう。


「いや、素晴らしい冗談だ。ただ、お酒の飲み過ぎは良くないですよ。」

「はあ! 何を言っているのよ、平民風情が! この場に居る事で勘違いしているの?」


 ……あかん。

 駄目だわ。

 折角、逃げ道を用意したのに、無駄に終わったか。


 はあ~。

 これはアレか?

 頭の中で、「神の子ですって! 正に私の美しさと偉大さを知ら示めるのに相応しいアクセサリーだわ! 平民だし、私に飼われる事になるのだから、その平民も光栄に思うでしょうよ。おーほほほ!」と、こんな感じか。


 あ!

 外から雷鳴が聞こえる。

 トリア姉さん。

 止める気は無いけど、きちんと罰を与えたいから、雷を落とすにしても、身体の皮膚だけに火傷を負わして。

 そして、その火傷は、魔法でも、神殿関係者の祈りでも、薬草とかの薬でも、治せない様にすれば良い罰になると思うよ。


 そう心で言った瞬間、ゲームや漫画の様に何も無い所から馬鹿令嬢に雷が落ちた。


 パリッ……ドォーン!


「ぎ、ぎゃ……」


 悲鳴を上げる事もなく、倒れた馬鹿令嬢には、見える所の肌は全て落雷に因る火傷を負っていた。


 周りがパニックになる中、会場の警備で待機していた騎士達が動いた。


「緊急時の為、失礼します。」


 そう言って、女性騎士は駆け寄りながらマジックポーチから出した、多分、上級の回復ポーション3本を馬鹿令嬢に振り掛けた後、自身のマントを直ぐに馬鹿令嬢に掛けた。

 そして、同じ回復ポーションをもう1本取り出して、馬鹿令嬢の口に少しずつ注ぐ。

 更に、3分も経たずに神官らしき女性が来て、馬鹿令嬢に回復魔法を掛ける。


 素晴らしい連携と救命処置だと思う。

 だけど……


「……バカ、な!」

「落雷の火傷が治っていない?」


 そして、国王陛下と王妃が来て、俺に聞く。


「どういう事だ?」

「まあ、命の危険は無いと思うよ。ただ……」

「ただ?」

「あの令嬢は、『神の子』である俺を『飼う』と言った。この世界の絶対者たる創造神イシュトリア様の『子』を家畜の様に『飼う』と言ったんだ。

 勇者や聖女でも無い、たかが人族の、何も無い娘がね。

 言い変えれば、他国から来た平民の娘が、カイル皇太子を国王が見てる前で、『カイルと言うのね。気に入ったわ。私が飼ってあげる。』とか言われた様なものだな。」


 国王と王妃は、心底呆れた顔をしていた。


「馬鹿な娘だが、命が助かっただけでも幸運と言えるな。

 むしろ、創造神イシュトリア様の深い慈悲に、あの娘は感謝すべきだな。」

「それじゃあ、俺達は帰ります。」

「うむ。すまなかった。近日中に何らかの謝罪をする。」

「分かりました。」



 ……疲れたー!


「お疲れ様。」

「疲れたよ。コトネやセシリアは、いつもこんな事をしていたんだな。」

「まあね。でも、慣れもあるわね。」

「しかし、どう認識したら、自分達と比べられない『超常』の存在である『神』が認めた『神の子』に、飼うなんて発想が出来るんだろうな。」

「確かにそうだな。」

「そうよね。」

「私も理解に苦しみます。」

「私もー。」


 それから3日後に、招待を受け再び王宮に行く事になったのだけど、扱いが変わった。

 今までは、丁寧だったけどやっぱり平民には変わりないから、そこら辺はまあ、「普通だろ。」って思っていたけど、今回は、コトネやセシリアも言っていたけど、俺達の扱いが「国賓」になっていた。

 つまり、認識が最初は、「神の子」という肩書きがオマケで付いた平民から、今は、平民として暮らしている「神の子」になったからだろうと、コトネやセシリアが言っていた。


 ……なるほどな。

 つまりは、今までは他国から「この者は平民だが、王族と思って接して欲しい。」みたいな感じから、今では「自国では勝てない強国の皇太子が自国の平民の中で暮らしている。」みたいな感じに変わったんだな。


 そして、国王と王妃とカイル皇太子とアイリスと宰相が、俺達が待っていた応接室に入って来た。

 それに、この応接室も違いが有った。

 前回までは、謂わば「3級応接室」だったのが、今回は「1級応接室」になっている。


「ユーマ殿、大変申し訳なかった。」

「いえ。出来得る限りの準備と対応だったと思いますから、気にしないでください。」

「そう言ってくれると、此方として助かる。」

「それで、今日喚ばれたのは?」

「うむ。勿論、前回の謝罪だが、金銭や財宝、それに爵位は無用であろう?」

「はい。」

「そこで用意したのが、この2つだ。」



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