我らはこの国の責任を背負う王族として『善き隣人』であるべきだな。
日常に慣れたが故に、見落とす事があります。
昨日は、自分の店でちょっぴり恐怖を感じたが、まあ何とか誤魔化せた訳だが、どうやら、サヤに神託が降りたらしい。
昨日が、日本では「あの日」だと。
道理で、普段は来ないサヤが最後に来て、女神イシュトリアの紋章を描いた訳だ。
だから、天のトリア姉さんに向かって「ありがとう」って心の中で言ったら、雨が降って晴れた訳でもないのに、虹が出た。
5日後、俺達は朝食を食べ終わり、少しのんびりした後、お迎えの馬車が来たから乗った。
行き先は、王城だ。
チョコレートホールをコトネ達と分ける事で何とか食べきって、キスタ達にバレない様に屋敷に戻ると、王城から手紙が届いていた。
手紙の内容は、上位貴族に俺が「神の子」という情報が流れてしまい、簡単に言えば、「我が家の駒にする為に娘を会わせたいから見合いをセッティングしろ!」という要望が、王宮に沢山届いたらしい。
だから、日取りを決めたから、その日は王城に来てくれ、という内容だった。
……おいおい。
何、勝手に色々と決めてんだ。
と怒っていたら、コトネとセシリアに諭された。
こういう場合は、俺が思っていた以上に王族の立場は弱いらしい。
俺は、コトネとセシリアに免じて我慢して、招待される事にした訳だ。
そして、その日が今日で、王城に着いたら衣装合わせをして、それが済んだら、交流会と言う名の俺がターゲットのサバイバルゲームが始まるのだが、その準備の時間までは、のんびり出来るらしい。
俺達は、王城に到着して、案内された先の部屋には、「ザ・デザイナーwith針子さん」な人達が待っていた。
俺とリンとユズハの3人は揉みくちゃにされ、慣れているコトネとセシリアはスムーズに進んでいた。
そして、衣装合わせが終わり、割り当てられた部屋でのんびりしていると、ノック音が響き、「誰?」と問うとアイリスだった。
「ごめんなさいね。」
「まあ、お互いの立場が立場だからな。仕方ないよ。」
「ありがとう。それでね、王族としては、基本的に中立の立場になるわ。まあ、流石に、ユーマに対して行き過ぎた発言が有れば介入するけどね。」
「分かった。後、これは俺にとって『純粋な善意』であり、『警告』だけど……」
「な、何?」
「俺にとっての大切な仲間はコトネ達だ。だから、コトネ達は我慢してくれる場面でも、俺の事を家族だと思っている存在は我慢しない可能性がある。」
「まあ、普通はそうよね。」
「アイリス、分からない?」
「何が?」
「我慢しないとは、つまり怒りを行動に移すという事よ。」
「確かにそ……」
「神殿では、俺の事を陰でなんて言っているかは、想像付くよな?」
「……神の子。」
「正解。そして、普通は子供が馬鹿にされて、怒らない親が居ると思うか、特に地位の高い親が?」
「……あ!」
「場合に因っては、文字通り消滅する貴族やその令嬢が居るかもしれないな。」
「……」
「それに……」
「それに?」
「俺にとって故郷と言える場所には家族同然の奴らが居るのだが、分かるか?」
「……!? 魔王の森の八魔将!」
「正解だ。あいつらも、俺を家族だと思っている。」
「……出来得る限りの対応をするわ。」
「俺からも頼む。アイリスも、この国の歴史で、最後の王族の1人にはなりたくないだろ?」
「……ええ。」
この後、青い顔をしてアイリスは出て行った。
「ユーマ殿、言い過ぎでは?」
「そうでも無いよ。実際に、コトネも他人の怒りで公爵令嬢から奴隷にまでなったんだぞ。」
「……そう、だね。」
「俺としても、どうでも良いと思っている貴族の道具になるつもりも無いしな。それに……」
「それに?」
「俺は、社交の場なんて経験が無いから、コトネやセシリアに守って欲しいんだ。いや、本気で!」
「……ぷ。 分かった、ユーマ殿。」
「そうだな。こればかりは、私も頑張ろう。」
「ありがとう、コトネ。セシリア。」
そして、時間が来て、俺達は名目上の「交流会」の会場に到着した。
王族side(アイリス視点)
はあ、ユーマに1番親しい私が行ったけど、私自身もとんだ思い違いをしていたわ。
早く、お父様達に伝えないと。
「お帰り、アイリス。どうだった?」
「はい。ユーマは、此方の事情を認めてくれていました。」
「それは良かったわ。……どうしたの、アイリス。」
「お母様。私もですが、私達は間違ってはいけない間違いを犯していました。」
「どういう事だ、アイリス。」
「ラムスお兄様。例えばですが、お父様とラムスお兄様が王都を公式で視察中に、その場に居た平民が、ラムスお兄様を指差して侮辱した場合は、その平民をどの様にされますか?」
「……まあ、普通は死刑にせざるをえんだろうな。」
「お父様なら、どうされますか?」
「うむ。ラムスと同じで死刑……いや、その家族も死刑にしなければならないだろうな。」
「そうですよね。自身の気持ちに関係なく、王族である以上は、厳しい対応をしなければなりません。」
「それで、何が言いたいの?」
「シンフォリアお姉様、ユーマは『神の子』です。しかも、創造神イシュトリア様の、です。」
「……あ!」
「つまり、『神の子』たるユーマを侮辱する事は、創造神イシュトリア様を侮辱する事。」
「……あ、ああ……」
「実際に、神殿長からの『真実』の報告書には、ユーマを侮辱した神官3人が、神の怒りに触れ灰になりました。」
「……なんて事だ。」
「そして、ユーマに警告されました。私に、『この国の歴史で、最後の王族の1人にはなりたくないだろ?』と。」
「……最後の王族……」
「むしろ、創造神イシュトリア様の怒りを買って、被害が王城だけで済めば幸運かもしれませんね。それに……」
「アイリス、まだ有るのか?」
「はい、カイルお兄様。ユーマの故郷を何処か忘れていませんか?」
「故郷?」
「そうです。ユーマの故郷は『魔王の森』です。そして、ユーマは言っていました。八魔将は『家族』だと。」
「あ!」
「八魔将本人達は、魔王の森に居るかもしれませんが、手足となる者が居ないとは限りません。」
「……そうか。八魔将の手の者が、警護の騎士達に気付かれる事なく侵入して、ユーマ殿が侮辱された事を八魔将に報告されたら……」
「我が国の騎士団や各国の騎士団を、ほぼ犠牲者を出さず蹴散らせる存在が、怒りの感情のままに我が国は襲撃される、という事です。」
「あの王宮占星術師の占いの通りだな。『神の子』を侮辱すれば神罰を受け、『魔王の子』を侮辱すれば強大なモンスターに攻められる。」
「お父様……」
「ユーマ殿の言う通りだな。我らはこの国の責任を背負う王族として『善き隣人』であるべきだな。」
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