嘘だ! そんなの出鱈目だ!
ポンコツは時に、自覚なく犯罪をバラす。
今回、好奇心と確認の為に、冒険者ギルドの朝のラッシュの時間に行ってみた。
どうやら、コトネやセシリアも同じ気持ちだった様で、朝の依頼掲示板前の、命が関わっているからこその真剣な依頼の奪い合いを見ていた。
「……結構、凄いな。」
「……そうだな、ユーマ殿。」
「……私もそう思うわ、ユーマ様。」
リンとユズハは、「だから、何?」状態で、アルは、いまいち良く分かっていない。
「ガキは帰りな!」
いきなり、見知らぬ若い冒険者に言われた。
「は?」
「ガキは帰りなって、言ったんだよ!」
「何故、お前に命令されなければならないんだ?」
「死にたくねぇだろ?」
「そんなの誰にでも当て嵌まる事だ。」
「どうやら、先輩として多少は痛い目に会わせないと分からない様だな。」
「はあ。馬鹿馬鹿しい。」
「こんのガキがぁ!」
そう言って、右拳を後ろに反らして攻撃態勢に移した瞬間、俺は、ガラ空きの腹に右拳をメリ込ませる。
しかも、捻り付きだ。
「ぐはぁ……」
そして、俺は、服と靴と冒険者カードだけ残して、全てを換金した。
一連の流れを見ていたアルは狼狽えていた。
後で教えてやろう。
そして、奥に居て、一部始終を見ていた「仕事間違えていないか?」と、聞きたくなる様なイケメンな青年4人が近付いて来た。
「初めまして。ボクの名前は「ホスト」です。」
「ぶふぅ……」
「大丈夫かい?」
「いや、すまない。」
「ユーマ殿、大丈夫か?」
「大丈夫だ。それで、俺に何か用か?」
「君、というよりは、君達だね。」
「俺達?」
「ああ。君達、ボクのパーティーに入らないか?」
「断わる。」
「……即答だね。何か理由でも?」
「入った所で、俺達に得は無いからな。」
「はっきり言うね。」
「事実だ。それなら、何故、俺達を誘った?」
「それは、彼女達だよ。」
「彼女達?」
「ああ。彼女達は、君には不釣り合いだ。」
そんな風に俺とイケメンホストが言い合いをしている中、外野はこんな事を言っていた。
「あいつら、最近、王都で見かける連中だな。なあ、身ぐるみ剥がされるのと、鉱山送りのどちらだと思う?」
「乗った! オレは、鉱山送りに銀貨1枚だ。」
「それなら、オレは、身ぐるみ剥がされる、に2枚だ。」
「オレは、身ぐるみ剥がされた上で鉱山送りに3枚だ。」
「で、どっちが負けるか分かっているのか?」
「ああ。綺麗な若い方だ。」
「ああ。ガキが負ける事は無いな。」
「オレ達は、何度も見ていたからな。」
「そうだ。あのガキが、絡んだ馬鹿を軽々と倒して、情け容赦なく身ぐるみ剥がされる所をな!」
な~んて事を言っていた。
「それで?」
「だから、彼女達を解放してあげるべきだ。」
「それで?」
「だ、だから、か、彼女達を、か、解放して自由を返すべきだと、い、言ったんだ。」
勘違いホストの言葉を聞いて不愉快な気分になっていたが、どうやら、気分が漏れているみたいで、イケメンホストが次第に顔色が悪くなっている。
「解放か。それなら、幾ら出す?」
「は?」
「俺に奴隷を解放しろと言うのなら、幾ら出すと聞いたんだが、聞こえているのか?」
「彼女達の解放を言っているのに、何故、お金の話になるんだ?」
「馬鹿か? 奴隷は財産だ。つまり、奴隷の解放とは、財産の放棄だ。当然、それを要求するのなら、俺も失う財産の補償を請求するのは、当たり前の事だろう。」
「……く。彼女達1人につき金貨2枚だ。」
「く。あは。あははははは!」
「何が可笑しい!」
「単位も桁も全く足りないぞ。」
「交渉の席に着いて欲しいのなら、最低でも白金貨200枚以上を用意するんだな。」
「ふざけるな!」
「至極まともだが?」
「もう良い! 彼女達を掛けて勝負だ!」
「馬鹿! ホスト!」
「もう遅い! 受付嬢、聞いていたよな?」
「……はい。」
「それなら、対応は分かるよな?」
「……はい。」
「どういう事だ?」
「お前の一言は、奴隷法の強盗罪に該当する。」
「奴隷法? 強盗罪?」
「そんな事を知らないのか? とんだ世間知らずだ。」
「受付嬢、説明しろ!」
「奴隷法の強盗罪とは、両者の立場や身分に関係なく奴隷主から、奴隷を金銭以外の手段での主の変更や解放を強要するのは、犯罪となります。」
「……な!」
「そういう訳だ。」
「嘘だ! そんなの出鱈目だ!」
「事実だ。」
「……そんな……」
「ホスト、何時まで居るつもりだ?」
「……お爺様!」
「どうした?」
「お爺様、酷いんだ。あいつがボクを騙して犯罪者呼びをするんだ。」
「何ぃ!」
「あははは。覚悟するんだな。ボクのお爺様は、王都の神殿の司教なんだからな。お爺様を通して神殿長様の耳に入る。もう、この王都では、生きていけなくなるんだからな!」
最初の爽やかイケメンは何処かに吹き飛び、メッキが剥がれ酷いもんだ。
「儂の可愛い孫を犯罪者呼びとは、神を恐れぬ所業だ。誰だ、その愚か者は?」
「俺だ。」
「そうか。貴様が、そう……か……!?」
「どうしたの、お爺様?」
「ホストを犯罪者呼びしたのは、このガキ、いや、この御方なのか?」
「そうだよ、お爺様。それより、なんで、こんなガキに『この御方』なんて呼ぶの? こんなのガキで充分だよ。」
「な、な、な……」
「ガキは奴隷にして、ボク達が飽きたら彼女達は、パパのハーレムに入れてあげるね。」
……このポンコツホスト、今が冒険者ギルドの朝のラッシュ中だと言う事を忘れていないか?
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




