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そんな事は無い!

善意から来る押し付け。

 何か、赤系で揃えた装備品に身を包んだ赤い髪の女性が騒いでいるな。


「もう1度聞く。誰がこんな事をしたんだ?」

「あ! あいつです。あのガキがやりました。」


 こら、人を指差してはいけません!

 学校で習いませんでしたか?

 と、現実逃避しても意味が無いな。


「本当に君の様な少年がこんな事をしたのか?」

「何が?」

「あの冒険者6人の事だ。何故、あんな事をしたんだ? 

 必要なら私も手を貸すし一緒に謝ろう。だから、きちんと君も6人に謝るんだ。」


 結果だけを見て短絡的な判断した馬鹿な女性を無視して、俺は周りに聞いた。


「誰か、この女性に経過内容を説明した人が居るか?」


 ……誰も名乗り出なかった。


「君がこんな酷い事をした事実は変わり無いぞ。」

「はぁ。話すから、きちんと聞いてくれよ。」

「ああ、分かったわ。」

「先ずは、あの5人は、外で戦う術を持たない女性2人に『わざと』ぶつかり、言い掛かりを付けて、金貨10枚を出せと脅迫して来た。どう思う?」

「そんな事が有ったのか!」

「向こうの態度と言い分を聞いて話し合いは不可能と判断して少し俺の力を見せる事でお帰り頂いた。そして、このギルドで、あの男が理不尽な理由で、金貨20枚を明日までに用意して払えと言ってきた。」

「何っ!」

「俺ははっきりと断ると、少し口論となり、この6人全員が武器を抜いて襲い掛かって来たから反撃して、ギルドの規則に(のっと)り服と靴以外を没収して、頭と髭を剃った。」

「……」

「さて。何がいけないんだ? 俺が女性だったら、どんな辱しめを受けるか分かったもんじゃない。貴女は、そうなれば良いと言うのか?」

「そんな事は無い!」

「それなら結果だけを見て、こんな馬鹿馬鹿しい短絡的な判断をしないでくれ。」

「……すまなかった。」

「それじゃあ。」

「待ってくれ! 迷惑を掛けた詫びをさせて欲しい。」

「必要は無い。」

「そんな事を言わずに。私の気がすまないんだ!」

「先程の謝罪は上辺だけだったのか?」

「え!?」

「相手の都合を考えず、自分の考えを一方的に押し付ける。先程と同じだな。」

「……くっ。」


 俺は、さっさと冒険者ギルドを後にした。

 そして、宿屋の食事は言うだけ有り、旨かった。

 理由を聞いてみると、専属を雇い食用は宿屋に、それ以外は商会グランブルムに卸していると話してくれた。

 ……なるほど。

 それなら、専属を雇うメリットが有るな。

 ……と、言っても、その専属も表向きは人化したクラマの部下なんだけどな。

 さて、比べる為に普通の宿屋に泊まったが、料理の質、宿の値段、従業員の質、ベッド等の質、全てが昨日泊まった宿屋の3割増しだ。

 感覚的には1ランク上の宿屋って感じだな。

 その後は、美味しい夕食に舌鼓をし、この街の最初の宿屋には無かった風呂を堪能して就寝した。


 翌日、迎えに来る事から朝はゆっくりしていた。

 部屋で、魔力制御と魔力操作の鍛練をやっていると、時間が来たみたいで迎えが来た。

 ……紋章付きの馬車だ!

 つまり、ほぼ確定で貴族で、嫌な予感しかしない。

 俺は、ドナドナされた牛はこんな気持ちだったんだと思いながら目的地に到着するのを待っていた。


 到着した場所は、屋敷にしては規模がデカいな。

 もしかして……


 俺は、豪華な調度品が置かれた応接室に通されて待っていると、昨日助けたナーサお嬢様とメイドのシリアさんに、オッサンと美人の女性と女性騎士が1人が入って来た。

 ん?

 あの女騎士は昨日の短絡的思考女だ!

 もう、な。

 嫌な予感から、嫌な事が起きると内定を貰ったよ。


 俺は立ち上がり軽く会釈をすると、オッサンが「座ってくれ。」と言われて座り、対面にオッサンと美人な女性とナーサお嬢様が座り、メイドのシリアがナーサお嬢様の後ろに立ち、短絡的思考女がオッサンの後ろに立った。


「初めまして。私は、この街の領主『ラグシグ=ミハル=アレンザー』で、伯爵位を賜っている。」

「初めまして。私は、ナーサの母で『アナリア=ミハル=アレンザー』よ。」

「改めて自己紹介させて頂きます。私は、『ナーサリア=ミハル=アレンザー』です。昨日は危ない所を助けて頂いてありがとうございます。改めてお礼を言わせて頂きます。」

「俺は、Dランク冒険者のユーマだ。」

「さて。先程、娘のナーサが言った通り、危ない所を助けて貰って感謝している。少ないが私からのお礼として受け取って欲しい。」


 そう言うと、短絡的思考女が小袋を取り出し、俺の前に置いた。


「金貨20枚入っている。本当なら白金貨で出したかったが妻のアナリアに止められてね。」

「幾らなんでも、娘の恩人だからといって白金貨20枚は出し過ぎです。」

「と、こんな風に止められてね。」

「いえ。お嬢様が無事で良かったです。」

「それで簡単にだが、調べさせて貰ったよ。冒険者登録してから1ヶ月も掛からずにDランク冒険者。素晴らしい結果と実力の持ち主だ。」

「はあ。ありがとうございます。」

「そこでユーマ君にお願いがある。娘のナーサと私の後ろに居る彼女と一緒にダンジョンに行って欲しい。ナーサは魔法を使う後衛向きなんだが、護衛が彼女1人では不安でね。

 それに目的地は3階層に出現するジュエルラビットだ。倒すと宝石をドロップするのだが、大した価値は無いがナーサがお気に入りでね。とうとう自分で取りたいと言い出したんだ。」

「それなら私兵が無理なら、それこそ冒険者ギルドに依頼されては?」

「ナーサのお眼鏡に叶う冒険者が居なかったんだ。その点は君なら大丈夫だ。どうだろうか? 勿論、ギルドに話は通すし、しっかりと報酬を用意しよう。」


 異世界系あるあるの高圧的な貴族じゃないし、きちんと筋を通している。

 悪くない話だ。

 しかし……


「その話、お断りします。」




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