その一言で充分だよ、と言いたいが……
主人公は貴族令嬢からは逃げられない。
女の主人公も含む。(笑)
俺達は来た道を戻って獣人国の国境を越えて目的地の都市「ファブリーザ」を目指していた。
すると、ファブリーザまで残り30分の所で、オークに襲われている馬車を発見した。
しかも、悲鳴付きな上に、悲痛な「お嬢様ー!」って、叫び声も加わっている。
俺は、速度だけは割と本気出して雷撃弾を放つ。
馬車に到着すると、全滅したオークを無視して言い放つ。
「怪我人は何処だ!」
「此方です!」
俺の言葉で我に返った侍女らしき人が馬車の中を案内すると、小さな石斧を脇腹に刺さったままの少女が居た。
「治療する。」
俺は周りの確認を無視して治療を開始した。
「回復魔法。」
すると、石斧は勝手に抜け、負傷した所は綺麗になり、顔色も赤みが差していた。
「ふう。これで大丈夫だろう。」
「ありがとうございます!」
「いや、助かって良かったな。」
「貴方様は、お嬢様、いえ、この場に居る全員の命の恩人です!」
「ユーマ殿ー!」
どうやら、コトネ達も追い付いた様だな。
その後、大事をとって、「お嬢様」が気が付くまで此処に居る事になり、その間に倒したオークを頂き、雑談をしながら待っていた。
勿論、テンプレよろしく、「お礼がしたいので……」になり、ファブリーザの領主館に一緒に行く事になっている。
まあ、助けたお嬢様が、領主の娘「セニア」だった。
……世間は狭いな。
お!
どうやら、気が付いたみたいだな。
そして、気が付いたセニアは、侍女から説明を聞いた後、俺達の前に来て、きちんと頭を下げてお礼を言った。
「私も含めた全員が危ない所を助けて頂いてありがとうございます。」
「その一言で充分だよ、と言いたいが……」
「はい。このまま帰りますと、私がお父様に怒られますので、お手数ですが、一緒に来て頂けますか?」
「分かったよ。」
「ありがとうございます。それでは出発です。」
そして、街の門での検問も身分証の確認だけで終わり、俺達とセニア達は、領主館に向かった。
10分後に、領主館に到着した俺達は、応接室に通された、美味しい紅茶とお菓子を頂いていると、ノックが響き、セニアと多分領主と執事らしきインテリと、セニアのお姉さん?が入って来た。
アレ?
普通、こういう場合はセニアのお母さんじゃね?
もしかして、やむを得ない理由か?
「初めまして。この街の領主『セオドラ=スクシ=ファブリーザ』辺境伯だ。」
「初めまして。セニアの母『マイリーナ=スクシ=ファブリーザ』です。」
……母!?
「お姉さんではなく?」
「まあ、お上手ね。」
「はは。妻は若く見えるが既に3じ……ぎ!」
「夫。」
俺は視線を変えず見た!
セオドラさんとマイリーナさんは隣同士引っ付いて座っているが、セオドラさんの左側に座っている「笑顔」のマイリーナさんの右足が僅かに浮きセオドラさんの左足に引っ付いているし、マイリーナさんの右手がセオドラさんの身体に隠れていた。
……うん。
この見えない迫力は、経産婦じゃないと無理だわ。
「し、失礼した。女性の年齢は何歳であっても秘密のままの方が魅力なので伏せさて貰うよ。」
「分かりました。」
「そして、執事のノクタだ。」
「執事のノクタです。」
次は俺達の番で、順番に自己紹介した。
「それでは、改めてお礼を言いたい。娘を助けてくれて感謝する。」
そう言うと、執事のノクタが小袋を俺の前に置いた。
「少額であるが受け取って欲しい。」
中身を確認すると、白金貨3枚入っていた。
「少々、多いと思いますが?」
「なに、娘の命に比べれば大した事のない端金だ。
受け取って欲しい。」
「分かりました。」
俺は白金貨3枚入った小袋を仕舞う。
「さて。次は食事にしよう。料理長に言って奮発した。
是非、食べていって欲しい。」
「ご馳走になります。」
まあ、断れんよな。
そして、少し遅めの昼食も終わって、少々雑談をしていると、コトネ達の奴隷紋に一瞬目線を送り言った。
「ユーマ君。奴隷に興味が有るのでしたら、行ってみては如何ですかな?」
「奴隷ですか?」
「うむ。彼の交易都市フィンダリアに負けていないと自負している。此処は国境に近い故に、それなりに人が集まる。」
「分かりました。行ってみようと思います。」
「それは良かった。私から紹介状を用意してあるから、行った先の奴隷商に見せると良い。きっと優遇してくれる筈だ。」
「ありがとうございます。」
この紹介状もアレだよな。
要するに領主からの「客を紹介したのだから、この客と、次回は優遇しろよ。」って事で、奴隷商側は思うだろうし、向こうもそれは理解しているだろうと領主も思っている。
まあ、共存共栄だな。
そして、早速、紹介状を貰い、行ってみる事にした。
到着したこの奴隷館は、第1位らしく品揃えは優秀らしい、と聞いているがどうかな?
正面玄関口で、見張り番をしている男性に案内して貰って応接室で待っていると、インテリな事務員みたいな男性と、奴隷紋を付けたメイド服の女奴隷が入って来た。
因みに、こういう場に連れてくるだけあって、メイド服の女奴隷は、奴隷紋が無く、着ている服も貴族が着る様なドレスなら、充分に貴族令嬢で通る美貌だぞ。
「さて。今日はどの様なご用件でしょうか?」
俺は紹介状を渡した。
「なるほど。これは、此方としてもきちんと対応した方が良いみたいですね。改めて自己紹介をさせて頂きます。
私は、当奴隷館の店主『グリンリバ』と言います。」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




