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聞いていた程では無いですわね。

自分の身分に胡座をかいて、その身分を失う人って居ますよね。

 カイザル公爵を始め、全員が立ち上がったから俺達も立ち上がったけど、やっぱりな。


 アラン(獣人モード)だ。


「ようこそ。それでは、早速始めましょう。」

「ライガード国国王レイザー参る!」

「来い!」


 え!?


 獣人族国王が膝を突く様な事なのに、前口上とかは無いのか、と公爵夫人の方を振り向くと、説明してくれた。


「あの御方は、私達獣人族にとって神にも匹敵する存在なのよ。だから、来て頂ける時には、こうして、戦いを挑んでいるのよ。最初は堅苦しい祭典を開いていたけど、あの御方が嫌がるので廃止になったの。」

「ソウデスカ。」


 俺は、コトネ達に引っ張られ周りに声が漏れない所に移動してから聞かれた。


「ユーマ殿。あの方はもしかして……」

「ああ。魔王の森に居る、仲間であり家族で八魔将の『暴風虎王(セル・タイガーロード)のアラン。』だ。」

「凄まじい強さね。」

「そうだな。アランに勝てるのは、俺か同じ八魔将の戦闘型ぐらいだろうな。」


 俺達が話している間も、この場に居る獣人族は次々に嬉々として立ち向かっていく。


「お話はもう良いの?」

「はい。」

「……そうだわ! ユーマさんも挑んではどうかしら?」


 サイショカラ、ソノキデシタヨネ?


「いえ。俺が出ては皆さんに……」

「大丈夫よ。」


 うわぁ、被せて来た!


「あの御方や、私達もそんな事は気にしないわ。」


 そして、見ていると全員終わったみたいで、カイザル公爵やレイザー国王等の偉い人達は俺達を見ている。


 ……やるしかないか。


「俺も一戦、お願いしても良いか?」

「来い!」


 アランの、その一言で、俺は飛び出したが、俺の戦い方で察した様で力加減を俺に合わせてくれた。


 いやな。アランと俺が本気で戦ったら、余波だけでも、この闘技場と隣の王城がぶっ飛ぶから。


 そして、お互いに手加減しているから成立する一進一退を繰り広げていたが、アランの一撃をわざと食らい、強制終了させた。


「……」


 あれ?

 反応無し?


 すると、コトネ達が拍手すると、カイザル公爵も拍手を始め、周りも拍手を始め、最後は万雷の拍手になった。

 俺は感謝の気持ちを込めて、コトネ達の方に目線を向けると皆頷いていた。


 アランからは俺だけに聞こえる声で、「また、やろう。」と言って暴風を発生させ、立ち去った。


 その後は、質問責めと勧誘を何とか躱して、カイザル公爵邸に帰って次の日に、俺達に招待状が届いた。

 内容は、「俺達と交流したいから来て欲しい。」という事で、承知した。


 ……断れる理由無いじゃん。


 3日後の招待の日までカイザル公爵邸でお世話になったが、「鍛練を一緒にしましょう。」や「模擬戦、お願いします。」な、脳筋な申し出ばかりだった。

 コトネ達は、ファラ達と優雅なお茶会をしていた。

 ファラもこちらに加わりたかったらしいのだが、盗賊に捕まっていた事から、良く言えば「心の休養」を取らされ、悪く言えば「謹慎中」だった。


 そんな3日を過ごして、今、王城に向かっている訳だ。


 因みに、今回、王城に行く際に礼装を借りたのだが、「戦える礼装」だった。

 イメージは、範○勇○郎等のアレな衣装だ。


 ……獣人国、どんだけ脳筋やねん!


 王城に到着して通された場所は大広間だったのだが……


 ヤラレタ。


 大広間に居る殆どが、俺と合う未婚女性達だった。


 下は9才ぐらいから、上は18歳ぐらいの令嬢達と、僅かに居た男性の9割が、「麗しの貴公子」みたいなイケメンしか居ない。

 残り1割の男性が、「物腰穏やかなおじ様」だった。


 まあ、見た印象はそんな感じだ。


 ある意味、正直な国だな。


 いや、断るけど。


 そして、「交流」という名の「お見合い」が始まった。


「ユーマ様。素晴らしい戦い振りだったそうで、私も見たかったですわ。」

「ユーマ様。是非、我が家で、その勇姿を見せて頂きたいですわ。」


 そんな感じで周りから「ユーマ様。」が連呼される中、コトネ達は、コトネ達でイケメン達に囲まれている。

 まあ、コトネやセシリアは、魑魅魍魎陰謀渦巻く宮廷を生きて来た猛者だから大丈夫だろう。


 そして、俺は今、モ~レツに我慢している!

 あの「ケモノミミ」を撫で撫でしたい!

 あの「ケモノシッポ」をモフモフしたい!


 しかし!

「ケモノミミ」なら、まだ許されるかもしれないが、「ケモノシッポ」は、触って拒絶されれば殺され、受諾されれば、即結婚という流れになる。


 ……はっきり言って、まだ冒険がしたい!


 何よりも、俺にはコトネが居る。

 だから、この「交流」さえ乗り切れば、なんとかなる!


 様々なタイプの令嬢に囲まれ、鼻の下が伸びない様に頑張っていると、爵位が高い家の令嬢が近付いて来た。


 だって、俺の周りに居た令嬢達が場所を明け渡すもん。


「初めまして。レオハート侯爵家が次女『メルディア=ブレブ=レオハート』です。」

「初めまして。冒険者のユーマです。」

「しかし……」


 扇で顔の下半分隠しているけど、あざ笑っているのを感じている中で、更に言葉を続けた。


「聞いていた程では無いですわね。」

「……それは、どういう意味でしょうか?」

「だって、こんなガキが、あの御方と良い勝負をしたなんて信じられませんわ。それとも、あの御方が弱かったのかしら?」

「メルディア!」


 聞く耳を立てていた獅子型の獣人族が名前を叫んでいたが、まあ、無視すれば良いか。


「獣人族の言葉とは思えませんね。」

「あら。そうかしら?」

「では、軽くですが証明しましょう。」

「何をです?」

「俺の力の片鱗を!」


 俺は、殺気を1%程を外に広げた。


「……あ……」


 俺とアランを馬鹿にした女は次第に顔色が悪くなり、青くなっていき足下に黄色い水溜まりが出来ていた。


「……無様だな。」


 殺気を解除した俺のこの言葉を聞いた後、気を失った女を無視して出口に向かうと、コトネ達も一緒になり王城を出る時にファラも付いて来て、一緒の馬車で帰った。


 馬車の中で、ファラが一言「ごめんなさい。」と言った。


 そして、カイザル公爵夫妻がまだ帰ってないまま、お世話になった人達に挨拶をして獣人国を後にした。


 そして、俺達は当初の目的地である都市の「ファブリーザ」を目指した。



 後日談


 あれから、王都の我が家に帰るとファラからの手紙が届いていて内容は、あの女の家族は貴族籍を剥奪され、長女の婚約も白紙になり、あの女自身はあの獣人国の最高刑に服されたらしい。

 その刑は、奴隷に堕とされ、健康の維持を命令される事に因って衰弱に因る自殺を封じられ、自身の殻に閉じ籠る事を禁じる事で精神的な逃亡を封じられ、尻尾を切断される事で獣人族の誇りと尊厳を奪われた上で、王城や王宮のお茶会から国を挙げての祭典等に全て出席させられるらしい。

 正に、「生き恥を晒す人生」が待っている訳だ。


 本当に、あの国では、アランは「神」だったんだな。




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