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……あっ!(察し)

すみません。

前書きが、フライングしました。

 武器を仕舞った後、肩を回したり屈伸したりと軽く身体を(ほぐ)していると、カイザルさんが感心した様な言葉を発した。


「うむ。分かっている様だな。」

「ああ。」

「だからと言って、娘との交際は別だ!」

「さあ。もう言葉は必要ないでしょう。始めましょう。」

「うむ、良かろう。初手は譲ろう。」

「それはどうも。では、行くぞ!」

「来い!」

「おらぁ!」

「か……ぐふぅ……」


 どうせならと、突進してからの右正拳突きの「理想」を、狙ってみた。


 ……う~ん。


「ぐ……かはっ!」


 相手に与えたダメージは兎も角、頭に描く理想と比べるとまだ遠いな。


「きぎっ! げふぅ!」


 やっぱり、毎日の鍛練が必須という事だろうな。


「……がはぁ……」

「ユーマ殿!」

「はっ!」


 ……ドサッ!


 ……やべぇ。

 魔王の森に居た時みたいに、セミオートで乱舞してた。


「とりあえず、回復魔法(ヒール)。」

「ユーマさん! お母様を連れて来たわよ!」

「あっ!」

「……お父様!」

「……(あなた)!」

「いや、これは、その……、ち、違うんだ。」

「……ありがとう、ユーマさん!」

「お礼を言うわ。」

「はい!?」

「お父様は、いつも私が連れて来た男性の友人を、中庭に連れて来ては模擬戦を強要してくるから、私には男性の友人が居ないのよ。だから、スッキリしたわ!」

「この人のお陰で、ファラには男友達すら居なかったのよ。これで、少しは懲りるでしょう。」


 予想通りのオチだったか。


「はっ! ……負けたのか。」

(あなた)……」

「ヴ、ヴィクトリア……」

「お仕置きです。」

「娘が可愛い過ぎるのがいけないんじゃあ~。」


 元気な夫婦を中庭に置いて、俺達とファラはファラの私室で、侍女のエピナが入れた紅茶を頂いていた。


「それにしても、お父様に勝てる人族、しかも子供で勝てる存在(ひと)が居るなんて驚きだわ。」

「まあ、笑えない厳しい環境だったからね。」

「笑えない厳しい環境って?」

「……そうだな。対等を求めるなら、魔王の森に単独で、2年間は生き抜いて貰わないといけないかな。」

「……ごめんなさい。確かに、笑えない厳しい環境ね。」

「まあ、今となっては懐かしい思い出だよ。」

「そんな言葉が出る程、鍛練は厳しかったのね。」


 この後、雑談する事2時間が経過した。


「長いですわね?」

「そうだな。」


 公爵夫妻を待っていたのだが、2時間経っても来ないだよな。

 勝手に帰る訳にもいかないし。


 そんな事を考えていると、公爵夫妻が入って来た。

 そして、公爵はゲッソリしていて、夫人は心なしかお肌が艶々している。


 ……あっ!(察し)


 近々、ファラに弟か妹が出来るかもな。


「待たしてすまないわね。早速で悪いけど、真面目な話をしたいけど良いかしら?」

「どうぞ。」

「それじゃあ。ファラとの婚約発表は何時する?」

「ぶぴぃ……ゲホゲホ……」

「ファラ様、失礼します。」


 夫人の爆弾発言で、優雅に紅茶を飲んでいたファラは吹いて、即座に侍女のエピナが処理をしながら、新しい紅茶を用意している。


「残念ですが、俺とファラ嬢はそういう関係でも無いし、俺にその気はありません。」

「貴様ぁ、オレの可愛いファラが不服だと言うのか!」

(あなた)は、黙ってて。」

「……はい。」

「偶然、助けただけですから。」

「でも、ファラはこう見えて乙女趣味な所もあって可愛いのよ。それに、寝る時には必ずお気に入りの人形を抱かないと眠れないし。」

「お母様!」


 ファラは、自身のシークレットを暴露され、顔がリンゴちゃんになっている。


「それに、公爵家の後ろ楯は充分に魅力的だと思うわよ。

 そして、『新婚用の新居』も勿論、用意するわ。」

「悪いが、俺には心に決めた女性(ひと)が居ますから。」

「あら。ファラが良ければになるけど、私としては大切にしてくれるのなら『2番』でも良いと思っているわ。」


 因みに、ファラは既に撃沈済みで、小さな声で、「結婚式は……」とか「初夜の作法……」とか「子供は……」とか、言っている。

 男友達が居ないファラには、「新婚用の新居」は刺激が強過ぎたみたいだ。


「申し訳ありませんが、お断りします。」

「……そう。仕方ないわね。」


 その時、ノックの音が響く。


「談話中失礼します。準備の時間が迫っております。」

「あら。もう、そんな時間なの。……そうだわ。ユーマさんにファラを助けて貰ったお礼に、とある御方に会わせてあげるわ。」

「ヴィクトリア!」

「大丈夫よ。あの御方はそんな小さな事はお気にされないし、喜ばれるわ。」


 そして、俺達はカイザル公爵家と一緒に王城に行く事になった。

 それなのに、俺達の外見を無視している。

 普通は、こういうのは種族を問わずきちんとすべき事の筈なんだが、聞いてみると。


「あの御方は、そういうのを嫌うのよ。だから、服装は問題にならないの。寧ろ、戦える服装の方が喜ばれるわ。」


 それなら良いか。


 そして、王城敷地内にある闘技場に到着する。


 周りを見ると、全員が戦える服装になっている。

 当然、カイザル公爵も。


 そんな中、カイザル公爵に近付いてくる、偉くて強そうな「おじ様」が来た。


「陛下。」

「良い。あの御方の前では、儂もお前も同等だ。」

「はっ!」

「其方の人族達は?」

「娘ファラの恩人です。」

「そうか。き……」


 陛下と呼ばれた人は、何かを言おうとすると、アナウンスが割って入った。


「暴風の(たけ)き御方が参ります!」


 そうアナウンスが流れた瞬間、陛下と呼ばれた人もカイザル公爵も、他の全員が膝を突いて「臣下の礼」みたいに体勢になった。


 俺達も、一応倣った。


 すると、突然、暴風が吹き荒れ、闘技場の中央に誰かが現れたのが、気配察知で分かった。


 暴風が止むと声が聞こえた。


「歓迎に感謝する。楽にしてくれ。」


 ……この声、聞き覚えが有るんだが……


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