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その件に関しては、別室で話しましょう。

仕事が大変だと、プライベートが疎かになりますよね。

「私からもお礼を申し上げたいと思います。」

「此方は、私の(おつと)で、副学園長の『トルハー=ワーガ=セハー』です。」

「初めまして。先にお礼を。学園をゴブリンのスタンピードから救って頂きありがとうございます。

 そして、彼女の紹介通り、学園長であるホキーアの(おつと)で、トルハー=ワーガ=セハーです。トルハーとお呼びください。」

「私も、ホキーアとお呼びください。」


 俺はコトネに視線を送るとコトネは小さく頷いた。


「それでは、改めて自己紹介をさせて頂きます。」

「ええ。お願いします。」

「私は、コトネで、冒険者でもあります。」

「私は、セシリアで、冒険者でもあります。」

「私は、リンで、冒険者でもあります。」

「俺はユーマで、冒険者でもあります。」


 まあ、きちんと自己紹介しても良いけど、カモエには誤解されたままの方が動き易そうだからな。

 ……学園長とかには、後で謝って許して貰おう。


「それで、カモエから聞いたのですが貴女達は、上位貴族の奴隷だと伺ったのですが、お名前をお尋ねしてもよろしいかしら?」

「申し訳ありませんが、それは出来ません。」

「何故ですか?」

「私達の責任は、ご主人様の責任になりますから。」

「分かりました。さて、これ以上は止めておきましょう。」

「そうですね。さあ、皆さん。歓迎と感謝を込めて用意いたしました。どうぞ、召し上がってください。」


 その後は、普通に雑談をしながら食事を頂いたが、生まれが出てしまい、カモエが「高貴な生まれ」だの「貴族こそが」とかで煩かった。


「ホキーア学園長。少しよろしいでしょうか?」

「何でしょうか。」

「ユーマから聞いたのですが、狐人族の奴隷をお持ちだとか。」

「はい。確かにいますが、それが?」

「ご主人様が自身の奴隷に加えたいと考えられる可能性があります。如何でしょうか?」


 その瞬間、学園長はカモエに一瞬目線を向けた後、俺達に答えた。


「その件に関しては、別室で話しましょう。」

「分かりました。」


 ある意味で、予想通りの横槍が入った。


「何故ですか? あんな獣人族なんぞ、さっさと売って、コトネ様のご主人様である上位貴族への繋ぎにすれば良いのです!」

「黙って頂けますか、カモエ教師。」

「……分かりました。」


 そして、夕食は終わり、カモエは屋敷から退出(おいだ)して俺達は応接室で、学園長と副学園長2人と向かい合っている。


「彼女、『ブランジェ』は、奴隷の状態ではありますが、奴隷の身分では無いのです。」

「どういう事ですか?」


 俺の立場を話すまでは、コトネに頑張って貰おう。


「ブランジェは、私の恩人から預かっている子です。

 ですから、私の一存では売る事が出来ないのです。」

「では、何故、預かっているのに奴隷になっているのですか?」


 少し強引だが、これくらい踏み込まないと話してくれなさそうだもんな。


「ブランジェが奴隷の状態なのは、あの子の魔力は強大で、奴隷の絶大な強制力でしか抑える事が出来なかったからです。そして、ブランジェは、その自身の強大な魔力を制御出来る様になる為に、この魔法学園マカデミに居るのです。」

「……そうですか。」

「ブランジェは元気にしていましたか? 私達は仕事が忙しくて会えない状態でして、最近は報告でしか知らないのです。」

「……なるほど。そういう事でしたか。」

「どういう事ですか?」

「彼女、ブランジェは、奴隷としての扱いを受けていますし、学業に専念出来ていませんね。」

「本当ですか!」

「はい。ですから、私達のご主人様なら、放っておけないだろうと思い、お話したのです。」

「……なんて事なの。」

「ホキーア……。コトネ様、それは本当なのですか?」

「はい。ユーマが直接見ていて、学生に水球(ウォーターボール)で全身を濡らされる所を見ましたから。」

「……ああ、ブランジェ。私は、総督になんてお詫びすれば……」


 え!?

 総督!

 もしかして……


「学園長、『総督』とは誰ですか?」

「私の命の恩人であり、この魔法学園マカデミの設立の時からお世話になっている商会で、そこの商会の最高責任者の方が代々『総督』と言われているのです。何でも、個人名だと、色々な(しがらみ)に縛られて商会の発展に繋がらないからと言われて、総督と名乗っていると聞いています。」


 何百年、何千年も生きるから、ずっと同じ名前だといけないと思って、そうしたんだろうな。

 多分、魔王の森との行き帰りで、偶然助けたとかで学園長と縁が出来たんだろうな。


 最後の確認だ。

 俺は、コトネに視線を送る。


「学園長。その商会とは、『グランブルム商会』ではないのですか?」

「何故、分かったのですか?」

「やはり。ユーマ殿、名乗られても良いのでは?」

「そうだな。」

「え!? ユーマ『殿』?」

「俺と今の総督とはお互いに名前で呼び合う家族同然の付き合いをしている。そして、その中で出会ったのが、俺の奴隷である『セシリア』、『リン』、そして、『コトネ』だ。」

「それでは、何故、カモエには、従者などと?」

「最初から怪しいと思っていたからだ。」

「カモエが怪しい?」

「ああ。」


 俺は説明した。

 カモエ達の「立場」や、あの場に居た「時間」や、仮にもスタンピードだと言うのに、たった「3人」で来た事から、不自然であり怪しいと。


「カモエからの報告では、昨日、個人的な理由で依頼していた冒険者から報告を聞いて、約100匹ぐらいだから、3人で充分だから向かったと聞いていたのですが。」

「100匹!? 実際は約1000匹だ。」

「1000匹……」


 こりゃあ、やっぱり「裏」が有るな。



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